物流よろず相談所

物流施策の動き

2025年4月30日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志

 

昨年4月、物流関連2法が施行され荷主、物流事業者への強力な規制的措置が講じられることになりました。 さらに2025年4月以降は「改正貨物自動車運送事業法」と「改正物流総合効率化法」が施行され、業界課題の解決に向けた新たな一歩を踏み出します。そもそも2024年の物流関連2法改正の背景には「2024年問題」解決に向けた取組みがありますが、 その問題の源は1990年の旧物流2法施行にまで遡ることになります。 戦後日本の物流行政は、産業の保護育成を目的とした需給調整でした。しかし1990年代後半になり行政改革の一環として物流業界における規制緩和が論議されるようになり「経済的規制緩和」と「社会的規制の強化」を柱とした旧物流2法が施行されたのです。以降は御存知の通り、2003年更なる規制緩和措置に伴い、参入規制や運賃制度の緩和・撤廃も図られることになり、運送会社の経営環境は悪化が目立つようになっていきました(「社会的規制の強化」は、輸送の安全確保や違反時行政処分強化などで一定の成果をあげたものもある)。低い運賃によるドライバーの賃金水準は低下、にも関わらず付帯業務や荷待ちといった肉体的、精神的ストレスは増えて行くー、応募人員の減少に拍車がかかる状況はこの先長い間続くことになります。これらの種をまいた政府としては、悪循環に歯止めをかけるためにも、どうしても規制の再強化を図る必要がありました。2010年代に入り「荷主勧告制度」など対荷主規制の強化も始まり、業界改革に向けた新たな動きを開始、社会的な課題でもあった「働き方改革」の流れもあり、ドライバーの労働環境改善に向けた規制が「物流業界の2024年問題」として日の目を浴びることになったものです。

2024年5月、流通業務の総合化及び効率化促進に関する法律が公布されました。これは現在「物資の流通効率化に関する法律」に名称変更され、2025年4月から施行されます。今後この改正2法によって物流業界に起きてくる変化を考えてみましょう。政府は法改正のKPIとして施行後3年で(2019年度比)荷待ち・荷役時間を年間125時間/人削減させ、積載率向上による輸送能力を16%増加させることを目指すとしています。改正法の内容を大きくまとめると、1.荷主・物流事業者に対する規制的措置(流通業務総合効率化法) 2.トラック事業者の取引に対する規制的措置 (貨物自動車運送事業法) 3.軽トラック事業者に対する規制的措置(貨物自動車運送事業法)の3つになります。これらの結果として、2028年までに、①5割の運行で、1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を計2時間以内に削減 ②5割の車両で、積載効率50%を実現(全体の車両で積載効率44%に増加)を目指すことも明らかにしています。荷主(発荷主・着荷主)・物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、国がその判断基準を作ります。荷主には物流の経営責任者の選任、元請け事業者には実運送管理簿の提出とこれまで多重構造となっていた運送業界のあり方にメスを入れたものと言えるでしょう。物流業界において現在ベテランとして活躍しているドライバーの間でも高齢化が進み2025年には大量の退職者が出るとの予測もあります。新年度以降、法改正後の自社の対応も含め、周辺状況の変化にも注意を払っておきましょう。

政府や業界が現在に至るまでに施した解決策の効果は、各企業によって感じ方もまちまちでしょう。しかし少なくとも旧物流2法施行当時の物流環境からは大幅な改善を勝ち取っていかなければ、ここから始まる未来の物流に加わることはできません。 法改正は話し合いの良い機会です。荷主共々、また従業員共々、あくまでもお互いの収益改善に向けた解決策を議論、提案し合って参りましょう。

このような中で政府が打ち出した物流政策が明らかになってきました。貨物自動車運送法の改正案によって1.トラック運送業の5年ごとの更新制度を設ける、2.適正料金を下回る運賃および料金の制限、3.委託次数の制限、4違法な白トラに係る荷主の取り締まりなどの改正法案を打ち出しました。政府はこれらの法案を3年以内に制定し実施する考えです。更新制度は全日本トラック協会が強く打ち出していたことから制定されることになりました。適正料金を継続して下回ることがないよう義務化するものですが、荷主からの反発も考えられ実施にはいくつかの課題を乗り越えることが必要でしょう。2次程度におさえる委託次数についても現行との乖離も大きく利用運送業者の制限がないと有名無実となってしまう可能性も否めません。政府の打ち出しによって物流業界の環境改善につながることを願います。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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