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ハパックロイドCEO 通年でプラス成長見込む 高齢船解撤加速も

Daily Cargo  2025年8月18日掲載

 

ハパックロイドのロルフ・ハベン・ヤンセンCEOは現地時間14日、記者会見と投資家・アナリスト向け決算説明会を開催し、コンテナ船マーケットの見通しと今後の事業方針について説明した。今年は米国の関税政策の影響で、コンテナ荷動きが大きく変動している。ヤンセンCEOは、「年初の時点では多くのアナリストやエコノミストが今年はゼロ成長かマイナス成長になると予想していたが、実際には上期(1~6月)の世界のコンテナ荷動きが前年同期比4.5%増となり、想定よりも堅調だった。年後半は多少鈍化する可能性があるが、通年では確実にプラス成長を達成すると予想している」と述べた。

米国の関税政策に伴うコンテナ荷動きの変化についてヤンセンCEOは、「最大の課題は不確実性だ」と指摘する。一方で、今月から多くの国・地域に対する新たな相互関税率が適用されたほか、物量の多い米中間においても関税停止措置の90日間の再延長が決まった。米中間の延長措置については、「前向きなニュースと捉えている」とした上で、「貿易協定が締結されつつあるという事実によって、不確実性が和らぎ始めている。少しでも正常化が進むことを期待する」と述べた。

供給面においては今後、高齢船のスクラップが進むと予想する。コロナ禍による混乱や紅海情勢悪化に伴う航路迂回などで船腹需要が高まったため、近年はスクラップが低水準に留まった。このため、高齢船がマーケットで増えており、28年までに船齢25年以上のコンテナ船は船腹量ベースで約270万TEUとなる見通しだ。ヤンセンCEOは、「コロナ禍以前はスクラップされるコンテナ船の平均船齢は25年未満だった。27~28年までは多くの船腹量がスクラップされると考えるのが現実的だ」と述べた。足元ではスクラップヤードの能力も限られているが、ヤンセンCEOは、「(スクラップヤードの)能力増強に向けた投資を検討する動きがある。今後10年間でのスクラップ需要は多く、投資する価値があるため、一定期間は需給が逼迫する可能性があるが、構造的な問題にはならないだろう」と説明した。また、スエズ運河の通航が再開されれば、高齢船のスクラップの動きが加速するとともに、減速航海も進む可能性があると指摘した。

今年2月にマースクと立ち上げた「ジェミニ・コーポレーション」に関しては、自営ターミナルを核としたハブ&スポークのサービス体制によって、目標とするスケジュール順守率90%以上を達成している。ヤンセンCEOは、「(新体制移行に伴い)一時的なコストが発生したが、既にサービス移行は完了した。これまでの成果には満足している」と語った。現在はネットワークを微調整する段階にあり、顧客満足度の向上を図る方針だ。「コンテナ単位の定時到着率も大幅に改善しており、今後さらに向上するだろう。ジェミニの成功に支えられ、ジェミニ以外のサービスでも改善が見られていることは心強い」と話した。

コスト面でも効果が出てくる見通しだ。4~6月期はジェミニ移行の一時的なコストが発生し、収益を圧迫したが、今後はジェミニによって3億5000万ドルから4億ドルのコスト削減効果を見込んでおり、ジェミニ以外のサービスにもさらなるコスト削減効果が波及すると予想している。ハパックロイドは今年5月に今後18カ月間で10億ドル以上のコスト削減を目指すプログラムを開始。グローバルインフレの影響や、欧州排出権取引制度(EU-ETS)など規制の影響でコスト上昇圧力がかかる中、着実にユニットコストの低減を進めていく。

コンテナ船隊整備と環境対応に関しては、23年から就航が始まった2万3700TEU型のLNG二元燃料コンテナ船12隻シリーズが、今年6月末までに全船引き渡しを受けた。加えて、燃費性能向上とCO2排出削減に向けた既存船150隻の改修も38%が完了した。さらに、LNG二元燃料対応・アンモニア燃料レディの1万6800TEU型12隻と9200TEU型12隻も発注。27~29年に就航する予定だ。既存船5隻に対するメタノール燃料対応への改造も来年実施する予定で、グリーンメタノール燃料確保のためのオフテイク契約も金風科技と締結している。グリーン燃料を活用したサービス「シップ・グリーン」は23年の開始以降、43万TEU以上を販売しており、今年からはゼロエミッション海運バイヤーアライアンス「ZEMBA」へのサービス提供も始まる。


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