欧州コンテナ3船社 USTR措置の課徴金計画なし 運航調整で対応
Daily Cargo 2025年9月12日掲載
米国通商代表部(USTR)が導入する中国関連船に対する米国入港料課徴措置の開始まであと約1カ月と迫る中、コンテナ船社が対応方針を明らかにし始めている。CMA-CGMは10日、「船隊と運航の調整により、予定されている全ての米国港湾に対するサービスカバレッジは維持できる。USTRの入港料の影響を最小限に抑えられると予想している」と発表。入港料措置に関連したサーチャージについても、「現時点で導入する計画はない」とした。マースクとハパックロイドの広報担当者も本紙に対して、現時点で関連サーチャージなどは計画していないことを明かした。
USTRは10月14日から、中国船主の保有船と中国船社の運航船、中国建造船に対して、米国寄港時に入港料を導入するとしている。今後3年間にわたって入港料が段階的に引き上げられる予定だ。入港料が課されることでコストが上昇するため、各コンテナ船社は寄港地や配船の調整を行うことに加え、サーチャージの導入や運賃引き上げなどを通じて荷主への転嫁を進めると予想されていた。
中国建造船については、運航船に占める比率が各コンテナ船社によって異なるため、影響も船社ごとに濃淡があると予想される。導入まであと1カ月と迫る中、一部のコンテナ船社が対応状況について明らかにし始めている。
CMA-CGMは10日、入港料措置への現在の対応状況について公表。「4月17日にUSTRが同措置を発表した後の180日間の猶予期間中、CMA-CGMは強く適応力のある緊急時対応計画を実行するために必要な措置を講じた」と説明した。この結果、現時点では荷主に対する価格転嫁のためのサーチャージを導入しないほか、サービスカバレッジも維持する方針とした。
ハパックロイドのロルフ・ハベン・ヤンセンCEOは先月14日に開催した投資家・アナリスト向け決算説明会でUSTRの入港料による影響について問われ、「この措置の影響は非常に管理しやすいものとなる。最終的には貿易に大きな影響を与えないだろう」とコメントした。その上で、「当社にとっての影響はゼロだ。1~2社のコンテナ船社にとっては多少の負担が増えると思うが、何らかの方法で対処する方法を見つけると確信している」と述べた。同社の本社広報担当者も今月10日、価格転嫁のためのサーチャージは検討していないことを明かした。
マースクは11日までに、「(USTRの)新しい規則を踏まえて、当社の船隊にいくつかの調整を行うことができる。このため、当社や顧客に直接的なコストが発生することはない」とコメントした。
一方で、あるアジア系コンテナ船社の本社広報担当者は、「状況を注視し、社内で積極的に協議していく」とコメント。別のアジア系コンテナ船社の広報担当者はコメントを差し控えた。「現時点で本社からはサーチャージを課すとは聞いていない」(他のアジア系コンテナ船社日本拠点関係者)とする声も出ている。
USTRの措置は、中国船社であるコスコと、同社グループのOOCLへの影響が大きいと予想されている。両社は10日時点で公式にサーチャージなどの対応策について明らかにしておらず、今後の動向が注目されている。
また今回のUSTRの措置では、今後3年間にわたって入港料が増額されていく。加えて、現在の世界のコンテナ船業界における発注残は中国建造が多くなっている。このため、将来に向けては影響が年を追うごとに大きくなる見通しだ。入港料措置の開始時点でサーチャージを導入しない場合においても、コスト負担が高まれば方針が変わる可能性もありそうだ。
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