続・徒然日記

大相撲が活況、安青錦に横綱の期待

2025年12月17日

『続・徒然日記』
葉山 明彦

 

大相撲がおもしろくなってきた。11月福岡場所で関脇・安青錦(あおにしき)が優勝決定戦で横綱・豊昇龍を負かして優勝、2023年の入門以来14場所という超スピードで大関昇進を決めた。その強さは群を抜き、今年の大関陣の負け越し・陥落など満足できなかった結果を向こうに来年中に横綱昇進も期待できる。私は相撲観戦も大好きなので、今回は大相撲のことを書いてみる。

今年彗星のごとく現れた安青錦はまだ21歳。ウクライナの戦火を逃れ、2022年2月に関西大学の練習生として17歳で来日した。子供のころから相撲が大好きで、2019年の世界ジュニア相撲選手権で3位となりこれが下地にあった。同年末には安治川部屋(親方は元関脇・安美錦)に研修生として入門が決まり、翌年の9月場所で初土俵を踏んだ。以後は破竹の勢いで出世街道を登り、今年3月場所(9場所目)で初入幕、そして14場所目の来年初場所で大関に昇進する。年6場所制下での大関スピード出世(幕下付け出しを除く)は2006年の琴欧州(後に琴欧洲、鳴門親方)19場所を抜く史上最速。また昇進の年齢(21歳8カ月)も平成の大横綱・朝青龍の21歳9カ月を抜くスーパースターなのだから期待を持てないわけはない。

低い姿勢からの突進力、また組んでも低さを崩さない体幹、内無双などの多彩な技をもち、礼儀正しく人柄もよいと評判だ。まだ粗削りな面もあるが期待を込めて来年中にも横綱昇進があるとなれば、豊昇龍、大の里と一緒にかつてあった複数の強い横綱時代が再来するかもしれない。強い横綱とは定義は難しいが、単独で記録的な優勝記録を塗り替えた千代の富士(横綱昇進1981年、以下同)、朝青龍(2003年)、白鵬(2007年)はもとより、複数で一時代を築いた栃若(栃錦1955年と初代若乃花1958年)、柏鵬(柏戸と大鵬、ともに1961年)、北玉(北の富士と玉の海、ともに1970年)、輪湖(輪島1973年、北の湖1974年)、曙貴(曙1993年、貴乃花1995年)などと頭字で呼ばれた横綱たちだ。単独横綱の時代は優勝記録更新に沸いたが、強すぎると後半は人気に翳りも出てきた。今は豊昇龍と大の里の2人横綱がいるがやや物足りなさがあり、これに安青錦が絡めば複数で切磋琢磨しおもしろい相撲が見られるとの期待感がある。

もちろん横綱が強いだけでは相撲はおもしろくない。横綱大関を突き上げるような下からの圧力がないと相撲は盛り上がらない。今年は手薄の大関陣の中で安青錦がその存在だったが、安青錦以外にも今後の候補はいる。祖父が大鵬という王鵬がもう一皮むければ化ける可能性はあるし、怪我が多く大関の壁にもう少しで届かない若隆景、先場所は前頭筆頭で負け越したが21歳で玄人ファンをうならせる伯桜鵬など大器のほかに、目を離せないのは11月場所前頭5枚目で勝ち越した草野改め義ノ富士だ。まだチョンマゲだが、低い姿勢を基本に相撲勘のよさで相手によって取り口を変えられ、時に大投げを打って場内を沸かす。1月場所では幕内筆頭格になるので期待の持てる力士だ。怪我で十両まで落ちた尊富士も身体が治ればあのスピード相撲ですぐ幕内上位に来るだろう。昨年の1月場所で新入幕優勝という110年ぶりの快挙を達成した“もっている”力士で、筋骨隆々の身体で復活を期待したい。

相撲人気には強さだけでなく、業師の存在も重要だ。“小よく大を制す”といわれるが、小兵力士が得意技で大きな力士を覆すのも相撲の醍醐味だ。その辺でも役者はそろっている。筆頭格が翔猿と宇良で、初めから終わりまでどんな技が飛び出すかわからず、対戦力士はたいへんだが観ている方は楽しい。変わりあり、肩透かしあり、足取りあり、土俵際を回り込み、途中で力士同士がお見合いすることも。宇良が脇の下にもぐり込んで相手を背に上げひっくり返す「伝え反り」をみせた時は驚いた。翠富士、錦富士、藤の川、朝紅龍なども小兵ながら早い動きで相手を攪乱し、上位から勝ち星をあげる。

ただ、相撲人気が上がるとそれに比例してチケット入手が困難になるのも悩みだ。大相撲では昔からお茶屋制度があり、たくさんのお土産を持たせて付加価値をつけたチケットを販売してきたが、国民的行事なのに一部の人しか入手できないのに批判が集まり、日本相撲協会では半分を協会が一般販売することに切り替えた。近年はネットで受付し抽選するが、この1年ほど競争が激しく応募者がこの方法でなかなか入手できなくなった。入手難は今後強まりこそすれ弱まることはないとみられ、両国がますます遠い地になるのが困る。

大相撲は毎場所活況だ(両国国技館)

著者プロフィール

葉山明彦

国際物流紙・誌の編集長、上海支局長など歴任

40年近く国際関係を主とする記者・編集者として活動、海外約50カ国・地域を訪問、国内は全47都道府県に宿泊した。

国際物流総合研究所に5年間在籍。趣味は旅行、登山、街歩き、温泉・銭湯、歴史地理、B級グルメ、和洋古典芸能、スポーツ観戦と幅広い。

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