労務管理ヴィッセンシャフト

同一労働同一賃金に関する改正について

2026年9月9日

労務管理ヴィッセンシャフト vol.50
野崎 律博



◆非正規労働者を雇用する際の留意点

暑い夏も終わりが近づくにもかかわらず相変わらず猛暑が続く今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?

10月より同一労働同一賃金に関する省令、指針の改正が施行されます。同一労働同一賃金というのは、契約社員やアルバイト、パートタイマー等の雇用形態の違いを理由に不利益な労働条件や待遇差を設けることを禁止するしくみです。昨今の労務裁判で挙げられるのは、例えば定年退職後の再雇用者である嘱託社員が、定年前とほぼ同一の業務内容及び業務量をこなしているにもかかわらず、賃金低下したことが不当であるとして訴えた裁判などです。

また若い方であっても、契約社員やパートタイマー等で働く方については、これと同様の取扱いです。ことに高齢の従業員が多いドライバー職においては、定年後も定年前とほぼ同様の働き方をしているケースが多く、労務紛争の火種になりやすい案件です。ドライバーだけではなく、事務的業務をされている方についても、契約社員であるにもかかわらず職務内容や変更の範囲、仕事における責任等が正社員と変わらないにもかかわらず、賃金その他の労働条件が大きく異なる場合が想定されます。

改正内容ですが、ひとつは非正規従業員が会社に対し、正社員との待遇差等の説明を求める権利について、明示することが義務化されます。説明義務というのは、もともとパートタイム・有期契約雇用労働法において事業主は、雇入れ時の説明義務に加え、雇用する非正規従業員から求めがあったときは、当該非正規従業員と通常の労働者との間の「待遇の総意の内容」及び「相違の理由等」について説明を行う義務が定められています。この改正により、非正規労働者に関し、雇入れ時に提示する労働条件通知書等に「通常の労働者との待遇差の内容や理由について、会社に説明を求めることができる」旨の記述を追加しなくてはなりません。

この「待遇差の理由について説明を求める権利」は元々法令上存在しており、改正前から行使できる権利なのですが、会社側から積極的にその旨を明示されていないケースが多いです。よって、非正規労働者として雇用される従業員は、労働法に詳しい人や、予め知識を持っている人しか行使がなされなかったものと推測されます。実際私も顧問先のお客様より、そういった請求があった旨のご相談や話を伺ったことがありません。改正によりこれらが明示されることとなり、多くの契約社員やパートタイマー従業員さんの目に触れることで、法律の実行性が高まるという算段でしょうか?今回の省令・指針改正の趣旨はそういうことだと思います。

二つめには同一労働同一賃金のガイドラインについて、改正が行われます。「同一労働同一賃金ガイドライン」とは、どのような待遇差が不合理なのかについて、考え方や具体例等を示したものです。具体的には新たに追加された内容として、賞与や家族手当、退職手当などの待遇差について、新規追加または記載の充実が行われております。

◆待遇差とは何か?
正社員と非正規社員との間で、単に差があるからということで全て法令違反になる訳ではありません。裁判の際に判断基準となる材料として、均衡待遇と均等待遇という二つの待遇差の概念が示されております。

均衡待遇とは、待遇ごとにその性質、目的に照らして①職務内容②職務内容・配置の変更範囲(人材活用のしくみ)③その他の事情のうち、適切と認められる事情を考慮して、不合理な待遇差を禁止するものです。

また均等待遇とは上記①②が正社員と同じ場合は、非正規労働者であることを理由とした差別的取り扱いを禁止するものです。職務内容とは、業務の内容とその責任の程度を指します。その他の事情として考慮されるのは、職務の成果や能力、経験、労使交渉の経緯等が考慮されるものです。

例えば契約社員のドライバーがいて、正社員とほぼ同一内容の業務を行っているとします。労働時間も正社員と同様、職務内容も同じ、職務に対する責任も同じであるとした場合、同一労働同一賃金の制度からいえば、賃金の支払いや労働条件で均衡・均等待遇がなされるべき事案となります。

改正ガイドラインの中身につきましては割愛させていただきますが、下記に厚生労働所「同一労働同一賃金ガイドライン等の改正内容について(パートタイム・有期雇用労働法関連)」資料のリンク先をご案内いたしますので、ご覧になっていただければと存じます。

下記資料をご覧いただきますと、賃金の各種手当や福利厚生等に関する原則となる考え方や具体例等が示されておりますので、ご参照下さい。⇒ https://www.mhlw.go.jp/content/001716835.pdf
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著者プロフィール

野崎律博

主任研究員

公的資格など
特定社会保険労務士
運行管理者試験(貨物)


物流事業に強い社会保険労務士です。労務管理、就業規則、賃金規定等各種規定の制定、助成金活用、職場のハラスメント対策、その他労務コンサルタントが専門です。労務のお悩み相談窓口としてご活用下さい。健保組合20年経験を生かした社会保険の活用アドバイスや健保組合加入手続きも行っております。社会保険料等にお悩みの場合もご相談下さい。

得意分野

  • 労務管理
  • 就業規則
  • 賃金規定
  • 助成金
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