物流よろず相談所

“物流寸断”でBCPの見直しを

2018年10月24日

物流よろず相談所 

 

西日本を襲った台風21号による豪雨は、中国・四国地方を中心に高速道路や鉄道などの交通網を大きく寸断し、浸水や物流の停滞で操業を見合わせる工場や、休業する小売店が相次いでいます。大阪や神戸では湾岸地区を中心に台風と高潮による浸水で多くの被害がでました。9日に入って正常化の動きが始まったものの、多くの地域で混乱が続いています。西日本高速道路によると、中国自動車道は9日朝に全線で通行可能になりましたが、山陽道は同日午後8時現在、本郷IC(インターチェンジ)-広島IC間で通行止め。西日本高速によると、全通には1週間程度を要するといいます。JRは中四国の幹線にも依然、不通区間があります。

この様な関西を中心とする台風被害も冷めぬ中、6日早朝に北海道の中心都を始めとする大規模停電を引き起こし、かつ物流網を寸断した北海道の地震は、人口約200万人を擁する道内経済の中心・札幌市に大打撃を与えました。大都市札幌は寝込みを大地震と全戸停電のダブルパンチに襲われました。液状化で住宅が傾き、余震が続き。地震から3日目もコンビニエンスストアやガソリンスタンドで物資が不足。市民生活を直撃しており、人口約200万の都市機能は混乱が続きました。物流ストップは都市部の生活を直撃しました。生活物資、特にお弁当や牛乳、ヨーグルトなどを買いたかったのだが、売っていない、という状況続いています。東日本震災での教訓がいかされていないのでは、という結果になっています。

北海道内に約1100店を構える最大手のコンビニ「セイコーマート」を運営する「セコマ」によると、卸業者やメーカーの工場が完全に復旧していないため、全店で品ぞろえが元に戻るか、「見通せていない」状態とのことです。北海道内でスーパー「東光ストア」や「ラルズ」などを展開する「アークス」、イオン系のスーパー「マックスバリュ北海道」は大半で営業を再開しましたが、乳製品や豆腐などは工場が稼働し始めたばかり。「納品量はよくても週末で通常の2割、週明けでも5割くらい」(マックスバリュ広報)といいます(9月10日現在)。

こうした混乱は、いくつもの要因が積み重なる「負の連鎖」によってもたらされています。北海道内大手の運送会社「松岡満(まつおかまん)運輸」は6、7両日、ほとんどトラックを出せず、荷物を預かることができませんでした。多くの地域が停電したままで、信号機が止まり、道路の安全が確保できなかったためとのこと。ガソリン流通も滞りました。貯蔵施設を持つ会社の一つ「苫小牧埠頭(ふとう)」によると、ガソリンは十分な量がありましたが、6日未明の地震発生直後に停電が起き、タンカーで運ばれたガソリンなどを荷下ろしする港の貯蔵施設が一時停止。ポンプでくみ上げてタンクローリーに移す作業ができず、出荷できなくなったと言います。電力の寸断から物流寸断へとつながってしまったわけです。7日から非常用電源を使ってタンクローリーへの出荷を再開しましたが、いまも丸一日止まった分を補いきれていない状況。運送会社は燃料不足から、長距離のトラックを出せなくなっています。ガソリン不足は市民の足も直撃、札幌市内のガソリンスタンドでは8日朝から車の長い列ができました。中央区のコスモ石油系の北一条サービスステーションでは、1回の給油を3千円までに制限。ハイオクが入荷できていないため、断る場面もあったとのこと。

JR貨物によると、北海道内を発着する貨物列車は地震直後から、すべてストップ、本州と道路でつながっていない北海道は、貨物列車が通る青函トンネルが大きな役割を果たしています。この時期、本州に運ばれる荷物は、収穫期を迎えたジャガイモやタマネギといった農作物が多く、農畜産物の生産が盛んな十勝やオホーツク地方の産地には、農産物が山積みのままだといいます。JR貨物は9日未明に運転再開を目指していますが、まだ完全復旧までには時間を要するとのこと。空の便への影響も出ました。震源地に近い新千歳空港は地震による被害でストップ、一部復旧まで3日を要しました。  

物流業としては、自社の事業継続はいうまでもなく、社会インフラを担う社会的責任、また 有事の際には支援物資等の供給体制の一翼を担う民間事業者としての社会的貢献も求められています。企業規模を問わず、事業継続のための備えである事業継続計画の策定は当然お義務となりつつあります。企業トップのリーダーシップのもと、BCPが策定されなければならない理由はそこに企業経営方針に基づく意思決定が必要であるからに他なりません。物流業の場合、①自社の営業をいかに早期に開始し、できるだけ短期間で通常通りに戻すか。事業をいか に存続させるか。 ②緊急物資輸送など社会から求められる物流機能をいかに担うことができるか。③顧客のサプライチェーン(物流システム)をいかに確保し、早期に復旧するか。この3つの視点から早期に事業を行うことができる体制を、予め準備しておくことが重要と考えられます。BCPとはまさに、こういった緊急事態への備えを指すものでしょう。

BCPは一度策定したからよいのではなく、時代の流れや環境に合わせて見直すことが必要です。必要のなかったインターネットウィルスに対するセキュリティなど大きな問題となりつつあります。経営環境にふさわしいBCPの策定を進めていただきたいと思います。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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