物流よろず相談所

もう一度BCPへの対応を見直そう

2019年5月29日

物流よろず相談所 

 

新緑が薫る5月、日本中が新しい年号に浮かれる中でも、日本経済には決して明るい兆しが見えていません。10月に控える消費税増税や米中の貿易摩擦の中で冷えて行くニホンメーカ、これからも厳しい動きが物流にも及ぶことが懸念されるところです。新しい時代の始まりと共に取り組まねばならない事など多く控える中で、もう一度物流業の原点に立ち返り、品質向上と無駄を省きコスト競争力を高める動きを始めていただきたいと思います。

平成は日本中が震災や水害など災害に見舞われた元号でもあったようです。東日本大震災以降、物流業でもBCPが策定できているどうかを問題視する荷主が目立つようになったと言われています。 事実「会社が被災した際のBCPはあるか」「被災後の復旧所要時間を教えて欲しい」「過去に発生した事業停止状況と対策を報告して欲しい」「傭車・下請にBCPを策定させているか」などを確認する動きが増えています。今回の震災では、この傾向が一層強まり、「燃料や傭車について、供給元を複数確保しているか」「主な事業所の災害に対する安全性はどうか」という問合せが多くなっています。

「地震・津波の自然災害時や感染症のパンデミック時にも、『必ず物流サービスを供給する』という条項を契約に入れて欲しい」と要望する荷主もあるそうです。「そんな無体な」「災害・パンデミックは不可抗力だから仕方ない」と言っても、不可抗力による免責を認めない契約も有効とされる可能性があるといいます。物流業は産業や流通の中で血液の役割をなしていると言われるように、物流がマヒするとメーカや流通業は成り立たなくなるのですから、物流業におけるBCP策定が重要と言われるのは当然でしょう。

食品物流ではその役割は大きく、人々の生命維持を担っているとまで言われるほどです。BCPを策定するにはまず自社のリスク分析から入ることが必要です。自社を取り巻く全てのリスクを洗い出し、それぞれのリスクの大きさを「受容不可能な(自社では対応できない)リスク」「許容可能な(対応可能な)リスク」「無視できる(特段の対応策は不要な)リスク」等に評価・分類し、対応が可能な各リスクの対応策を事前に講じておくことが必要です。自社だけでなく、物流業者もチェーンの重要な構成要素である「サプライチェーン・リスクマネジメント」の観点も必要であることはもちろんのことです。

BCPは①人(経営、専門知識、サービスに欠かせない人材が不在となった場合、パンデミックなどによって社員が出社できない)②金(収入がストップしたにも関わらず、仕入の支払い、従業員への支払いが迫っている)③物(事業継続に必要な軽油やタイヤなどの供給がストップした、納期までに輸送できない)④情報(顧客データが消去された、通信ができなくなった)などそれぞれのケースに対する対応策が講じられているか、ビジネスを継続するための方策がすでに社内でできているかどうかがカギとなります。BCPへの脅威とリスクとしては、自然災害、疫病・伝染病、事故、経営環境の変化、情報セキュリティ、その他テロや風評被害など様々なものが考えられますが、これらに対する防止策を講じることから始めるべきです。事業の優先順位、欠かすことのできない人材への対応、復旧までの時間、榮ぎぃ追う拠点などリスク分散、事業継続へ向けての組織化と権限委譲など考えるべきことが多くあります。今のうちから準備を始めておきたいものです。

例えば食品以外の在庫は積み増ししておく、などの方法、部品などの種類が限られる上に「適正在庫」をムシせねばならずSCMやIT路線からも逸脱してしまいそうでもあります。何よりもそれだけにかかるコストはムシできないものです。今一度会社の中で、BCPからさらに始めるSDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、SDGs(エス・ディー・ジーズ)まで含めて体制を整えて行く必要がありそうですね。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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