物流よろず相談所

改善は2Sから始めよう

2019年6月26日

物流よろず相談所 



仕事柄、物流現場やセンターの改善に立ち会わせていただく機会が度々あります。作業が進む中、改善の進捗状況を図る上でチェックし続けたいのが5S(2S)の現われ方とKPIの達成度でしょう。

5Sはそもそもこれがなければ仕事ができない、という類のものではありませんが、機械のみでなく人の手が加わって動かす物流現場において実践することにより機械以上の効果を上げてくれる人間組織の潤滑剤とも言えるもの。まず、全営業所に5Sを徹底させましょう。

5Sとは御存知の通り、①整理=必要な物と不要な物を分け、不要な物を捨てる、②整頓=必要な物がすぐに取り出せるように置き場所、置き方を決め、表示を確実に行う 、③清掃=掃除をしてゴミ、汚れのないきれいな状態にすると同時に細部まで点検すること ④清潔=整理・整頓・清掃を徹底して実行し、汚れのないきれいな状態を維持すること、⑤しつけ=決められたことを、決められたとおりに実行できるよう習慣づける(あいさつはしつけの基礎)、です。

この中で特に大事なのが整理、整頓です。これを怠ると、業務にすぐに支障をきたします。整理とは、不要なものを廃棄する事です。整理の目的は現場には仕事とは無関係な物や、即必要のない物などがあふれており、(現場のムダ、ムラにつながるもの!)これらを整理し、効率化することです。「整理」とは現場の業務には「不必要な物」を排除する活動とも言えます。「必要な物を」、「必要な時に」、「必要なだけ持つ」ことで、ムダも減らすことができます。当然貴重な時間や労働力の短縮につながります。

次に整頓です。整頓の目的 (計画的に並び替える)は、顧客の立場、社員の立場から「探すムダ」、「取りにくいムダ」、「戻しにくいムダ」を排除する活動です。実際、現場には、探すムダが大変多く、これを解消するのが作業の標準化です。整頓はムダを取るために大事な改善でもあるのです。いつでも誰でも、すぐ同じ事ができる事が、現場においてはとても重要なことです。整頓における標準化とは、『物の置 き方』の標準化とも言えるでしょう。この整理整頓を徹底させることで、ムダがなくなり、高いレベルでの標準作業時間や手順が制定できます。これがIEです。この標準化を進めることが改善のためには重要なのです。

定期的に続けておかねば、やがて業務のあちらこちらにサビが発生し、機能しづらくなって行くに違いありません。徹底できている現場とそうでないところの違いは皆様もすでによく御存知の通りです。また物流改善のカギをにぎるのが物流コストの把握でありますが、手っ取り早く運賃値下げや外部費用を削ることから始めてしまうところも少なくありません。しかしこれら支払い物流費の削減には当然限界もありすぐに万策尽きてしますはず。重要なのは受注から納品・返品の処理まで一連の業務改善を行なうことでトータルの物流費を減らして行く事でしょう。

人手不足を抱える業界であるからこそ時間と費用を節約できる内部改善で社内の整備強化を行ないたいですね。社内物流の見直しは、ひいては働き易く効率的な現場の実現にもつながる重要な改善です。これらの改善を社員たちのために行なうという意識で実践していくことで、取り組みの成果も表れ易くなってくるでしょう。ドライバーの意識が高いことでも定評のある“DHL”では、成果を社員が実感できる仕事のやり方を工夫し続け、高い“社員満足度”を“高い顧客満足度”に直結させる好循環を目指し、効果を上げていると言います。全ての改革はそこに働く人のためであることを経営者幹部がまず認識し、社員が辞めたくない会社作りを続けて行きたいもの。

ここに至るまで、国内景気の回復を牽引してきた大手企業トップの中でも、現段階で経済の勢いを“緩やかに後退”と判断する傾向が8割近くにも及んでいます。再び企業収益が海外へ流出する懸念も残る中、生き残りをかけた社内体力強化の必要性はさらに高まるはず。確実にできることから、即始めていく―、決して難しいことではないと信じましょう。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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