物流よろず相談所

”物流カイゼン”をどう進めるか

2020年2月12日

物流よろず相談所 

 

近年高度化し、複雑・多様化にさらに拍車がかかってきた物流のオペレーション。細分化を続ける業務は、現場における改善の遂行を難しくする要因のひとつになった、とも言われています。企業により改善のターゲットや条件は微妙に異なるものですが、ここに時代や社会背景を照らし合わせるという条件が加わると、成果を得る前に心が折れそうにもなるというもの。しかし物流業務は今後も進歩発展を続けて行くことは確実で、それにより折に触れた細かい修正や改善が必要になってきます。つまり物流業にとって改善は会社全体における不可欠な取組みであると言えるのです。

物流改善が脚光をあびて相当の年月が経過しています。しかし、その課題はいまだに山積したままです。これは物流カイゼンが難しいとか面倒だとか、日々業務に追われカイゼンまで手がつかられない、などの別の要因も考えられます。最近になって多くのメーカは物流部門だけでの改善ではいけない、全社的に取り組もうという風潮、SCM全体で見直すべきとの考えが浸透してきましたが、まだ本質的な物流カイゼンとは程遠いのが実情ではないでしょうか。

一方で多くの物流企業はそのカイゼンを売り物に3PL受託を進めていますが、現場をまわってみると何とか現場で働く人々の努力と犠牲によって回しているという企業も少なくはありません。物流改善は、一般的に難しい思われがちです。何故なら各企業により、条件(商品、物量変動、納品リードタイム、商品単価、物流拠点数、倉庫レイアウト、社員スキル、物流戦略等)がすべて違うからです。全企業がすべて同じ条件であれば、成功事例を調べてすべて真似をすれば良いのでしょうが、条件が全く同じということは絶対に有り得ません。これらの理由で、当社の物流は特別だからという言い訳が出来やすくなり、今まで自社なりに努力をしてきたやり方の延長線上で物流改善を進めてしまい、抜本的な改善が出来ない場合も考えられます。

しかし、本当に物流改善は難しいのでしょうか。非常に簡単な言い方になりますが、次の手順を踏めば必ず物流改善を進めることはできるはずです。まず現状の問題を定量的に把握し、改善策を立案し、実施前の仮説検証(この改善をすればどのくらい効果が実現できるかを予測)し、実行までの役割分担を決め、実行した後の効果を測定し、実施後の課題を解決すればカイゼン案ができるはずです。次に具体的なプロセス(手順)を考えましょう。出来るだけ多くの問題を、時間をかけずに発見する方法がまず必要となります。ここで多くの課題解決方法がありますが、もっとも進めやすい手法は、次の切り口からアプローチです。①物流戦略の視点、②物流業務手順の視点、③物流コストの視点、④顧客サービスの視点、⑤タイムスケジュールの視点、⑥物流作業の視点(必要な作業か、誰がやるべき仕事なのか、作業の生産性はどうか)、⑦在庫の視点、⑧輸送の視点(配送、横持ち、入荷、直送)、⑨包装の視点、⑩物流収支の視点等から課題を整理する方法です。このやり方にこだわる必要はありませんが、いかに自分達では気がつかない潜在的問題を抽出できるかを考えればいいのです。

プロジェクトを立ち上げ、改善を進める場合もありますが、この方法だと現場への周知は容易となりますが、推進力不足となる場合も多く、また時間が多くかかってしまいます。必要なのは今までのこれまでのやり方や発想に無い考え方で問題点を捉え、問題整理をすることです。案が出ない時は出来るだけ検討範囲を絞って、議論を行えば良いのです。例として「物流コストを下げるアイディアを検討しましょう」と言うよりも、「端数ピッキング時間を短縮するためのアイディアを検討しましょう」と言う方が参加メンバーは意見を一杯出せるのでしょうか、実際に自分のやっていることならば誰でも意見が出せるはずです。範囲を大きく広げれば広げるほど自分が知らないことが多くなり、自分の発言に確証をもてなくなってしまものです。

物流でも分業体制がひかれ、専門のスペシャリストを育てる傾向にありますが、全体を見渡せる人がいるかいないかによって物流効果は大きく変わってしまいます。つまり、会社の業績も大きく変わると言うことです。物流にはわからないことも多く尋ねれば良いのでしょうが、時間が優先されるため、自分のやり方でなんとかこなし、その方法で熟練するとそれがいかにも正しいやり方で、それ以外は間違ったやり方と思うスタッフも出てきます。改善を進める時の障害となる場合も出てきます。先ほどの項目別に課題を見出す方法であれば短期間で事前調査し、物流現場の状況をプロジェクト全体で共有化することができます。特定の人しか知らない情報が多い会社では物流改善は進まないということです。

物流はすべての業務、在庫も配送も作業効率もすべて密接な関係があります。在庫の持ち方や在庫配置により作業効率も大きく変わってきますし、作業効率が上がれば配送方法も変わる可能性も出てきます。改善を進めるには課題の共有化ができているこが条件となります。まずこの前提条件が確立されることができれば、改善は成功したのも同然です。課題ひとつひとつに社内でも最も効率的な手法を行なっているスタッフのやり方を仮標準作業書として、各現場で実施してもらい改善点を盛り込んで社内の標準作業書を作りあげます。その標準化と標準作業時間を確立できれば、改善は必ず進めることができます。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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