物流なんでも相談所

ハラスメント対策は?

2021年5月19日

物流なんでも相談所 Vol.29

 

昨年6月に改正労働施策統合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」が施行され、物流業事業主はハラスメント防止対策の強化が義務付けられました。中小企業は準備状況を勘案して2022年4月から施行となりますが、対策まったなしの状況です。企業でハラスメントが発覚すると、被害社員からの訴訟リスクや、優秀な人材の流出や生産性の低下などその影響ははかりしれないものがあります。その被害は企業経営に甚大な損害を生むやもしれないハラスメントの加害者にも被害者にもなりうる時代であると言えるでしょう。ハラスメントに対する意識と対策は、時代と共にアップデートしなければならないものです。

ハラスメントとは、会社や学校等様々な場面での『嫌がらせ、いじめ』を 言い、その種類は様々ですが、他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にさせ、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えることを指します。現代社会ではセクシャル・ハラスメント(セクハラ)やパワー・ハラスメント(パワハラ)、モラル・ハラスメント(モラハラ)、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)、スモーク・ハラスメント(スモハラ)など、さまざまなハラスメントが問題となっています。ハラスメントによる企業損失は決してあなどれません。何故ならば組織の秩序が乱れて社員のモチベーションを著しく低下させたり、会社自身が法令違反や安全配慮義務違反等を問われることもあり得るからです。会社が被害者に対して損害賠償が必要になる等、社会的評価の失墜につながりかねなません。企業損失にもつながる事態を引き起こさないための防止策は極めて重要な企業防衛戦略であると言えるでしょう。企業内でのハラスメントは、個人の要因と組織風土が複雑に絡み合って起きると考えられています。

ハラスメントがなくならない要因として、該当する行為を理解していないこと、または無自覚に行っていることが挙げられます。ハラスメントに関する理解を深め、起きた場合の適切な対処方法を知るにも研修は効果的です。ハラスメント加害者は、周りに指摘されて初めて、自身の言動に問題があったと気づくことが少なくありません。

ハラスメントを起こす、もしくは起こしているリスクを自分自身で確認できる適性検査もあるので活用すると良いでしょう。ハラスメント対策として以下3つの対策を検討しておきましょう。①ハラスメントを生まない職場を作ることが、まず一番のハラスメント対策です。経営トップが「わが社では、ハラスメントを許さない・起こさない」と宣言した上で、ハラスメント防止に関する社内体制の構築とルールの作成、それらの周知徹底と啓発活動を続けていかなければなりません。②就業規則や服務規律を定めた文書、社内報、社内HPなどのツールを通じて、職場内のハラスメントをなくす意識を広げ、その対策もまず経営幹部間で規定しておくことも重要です。③ハラスメントは対策の周知・啓発だけ防止につながるとは限りません。短時間でもよいので、全従業員に対しハラスメント防止の研修を行うことで取り組みの重要性を認識してもらうことになります。

ハラスメント対策は、企業の姿勢が問われる重要な問題。中小事業者にとっては対処が大変といった声もありますが、ハラスメント対策を応用すれば人材確保にもプラスにつながります。残念ながら、運送業におけるハラスメント問題はたびたび取り上げられています。実際の現場で起こることは「グレーゾーン」のような事例も多く、日々悩みながら指導にあたる経営者や管理職も多いのが実情でしょう。ハラスメントが起きない職場をつくっていくためには、ハラスメントの定義を理解するよりも、多くの具体的な事例について考え、その線引きを理解していくことが必要だと思います。健全な企業組織は社員の意欲がより高く、生産性もより高まるはずです。経営者は積極的にハラスメントに対処すべきと言えるのではないだでしょうか。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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