徒然日記

「“の”の字」を書いて

2021年5月26日

『徒然日記』 

 

緊急事態宣言」の出ているにもかかわらず、深夜まではしご酒をして、辞職した議員先生方。23人の飲み会で「軽いお咎め?」になった某官庁の方々。深夜の路上で「外飲み」している若者達などが話題になっていますが、そこからこの表題が頭に浮かびました。

そこでまず、この「タイトル」を「知っているぞ!」と手を上げてくださった方がいらっしゃいましたら、早速「一献傾けたい」という思いがします。勿論「制限時間内。三密対策済み」の上です。

私が倉庫会社に就職した、前回の「東京オリンピック」の頃の話しです。倉庫連中の「酒盛り」の場に、時折顔を出していました。「二級酒一升瓶」からコップへの注ぎ飲みでした。ビンが空になると、幹事役がその「一升瓶」を、最後の飲み手のコップに、片手(これが、私も覚えたテクニック)で逆さにかざして「“の”の字を書いて」と唱えつつ、瓶の底に、指で“の”を書きます。要するにその僅かな時間で、瓶に残った「最後の数滴」を零れ出させようという「意地汚い飲兵衛の淺知恵?」でした。

そしてさらに「酒にまつわる諺」を思い浮かべました。思いつくままに書き出してみます。

有名なところで「酒は飲むべし百薬の長、飲まれるべからず百悪の長」があります。

そして「一杯目は健康のため、二杯目は喜び、三杯目は心地よさ、四杯目は愚かさのため」は、前述の「禁を犯してしまった皆様」にお送りしたいと思います。

さらに「酒はほろ酔い、桜はつぼみか半開き」もあります。自制心が試されるところです。

私は父親譲りで肝臓は丈夫だと思っていますので、飲む側の味方(見方)をしてしまいますが、その視点で続けますと「下戸の建てた蔵は無い」があります。「酒を飲まない分で貯めたお金で蔵が建つかというとそうはいかない。酒を飲みながらの世渡りとか人脈作りが出来ないので、お金を稼げない」と言うことになるのですが、それじゃあ「上戸なら蔵は建つの?」と言われると、返事に困ります。私に関しては、「狭いながらも楽しい我が家♪・・・!?」はありますが、巷間囁かれている「老後のための二千万円」(すでに「老後中」)については、「投了」状態です。

酒で思い出したことがあります。殺人罪の公訴時効は無くなりましたが(平成22年4月27日施行)、この話も、今や時効(46年半経過)と思いますので、書かせていただきます。

1974(昭和49)年10月14日を覚えておいででしょうか。あの「長嶋茂雄選手の引退セレモニー」があった日です。

酒飲み仲間の同僚に「密かに」宿直室に誘われました。夕刻近くでしたが、まだ勤務時間中でした。茶卓の上には一升瓶とグラス。目の前のテレビからはアナウンサーの声。

【輝かしき背番号3、長嶋茂雄。17年間、燃える男の舞台となった、この後楽園球場のマウンドに向かっております。輝けるスター、長嶋。華麗なる大スター、長嶋。プロ野球の象徴として、栄光を一身に集めてきた長嶋選手。その長嶋選手が人生のひとつの地図を力一杯生き抜いて、今、新たな実りの季節へと向かって、出発しようとしております。長嶋選手、お別れの挨拶でございます。】(実況放送そのままです)

そして、カクテル光線に照らされた長嶋選手の、忘れもしないおなじみフレーズ。「私は、今日、引退を致しますが、我が巨人軍は永久に不滅です!(中略)長い間皆さん、本当にありがとうございました。」

この光景をテレビで眺めつつ、その同僚は、涙を流しながら、一升瓶から手酌で、コップの冷や酒を何杯もあおっていました。当然私も「ご相伴に預かりました」。

実は私2月3日のこの欄で「JR上野駅公園口」を書きましたが、その中で「集団就職」で上京した若者のことに触れました。私と同年代の彼は、岩手県の高卒(国体出場のスキージャンプ選手)で上京した集団就職者でした。嬉しいと言っては飲み、悲しいと言っては飲み、理由が無くても飲みで、自動車通勤にもかかわらず、帰宅前に良く、作業員詰め所に立ち寄っては、「“の”の字」を書いていました。

その彼から「酒酔い運転検問時の無事回避策」を伝授されましたが、差し支えがありますので、<マル秘>とさせていただきます。(経験して効果実感)

そういうことで、彼とは気が合って、求人難の時代に、“人探し”で彼の故郷岩手県に出掛けて、「不来方のお城の草」に寝転んだり、「マタギ(注:猟銃を使う猟を専業とする猟師)のおじさん」の家に泊まって「自家製どぶろく」をがぶ飲みしたり、事前に飲み過ぎて「わんこそば」を7杯しか食べられなかった思い出がありますが、彼は飲み過ぎがたたって(なんと「ガンマーGTP500」でした)、残念ながら早死にしてしまいました。「3杯までで、止めさせておけば良かった!」。今も後悔の思いがあります。

酒に絡む思い出話は、それやこれやとありますが、「緊急事態宣言」下で飲み会がままならないのがつらいです。それではと「オンライン飲み会」で、憂さを晴らしています。

ということで「白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしづかに 飲むべかりけり」(若山牧水)。まだ春ですが、この精神でいこうと思ったのですが、彼の句には「足音を 忍ばせて行けば 台所に わが酒の壜は 立ちて待ちをる」などいう句もある「たいそうな酒豪」で、一日一升の酒を飲んでいて、肝硬変を患って44歳という若さで亡くなったそうです。

良く送られてくるDM「旨い酒が飲みたい」というカタログを見ながら、<“No”の字>を書いてみましたが、「今夜の酒」が頭をよぎりました。

著者プロフィール

小泉武衡

職歴
 元 寺田倉庫株式会社 取締役


1964年より「物流業」に携わり、変化する“各時代の物流”を体得するとともに、新たな取り組みとして「トランクルーム」や「トータル・リファー・システム(品質優先ワイン取扱い)」事業に力を入れてきました。さらに、営業・企画・渉外・広報棟ほか、倉庫スペースを利用した「イベント事業責任者」などを歴任し、旧施設の新たな活用、地域開発、水辺周辺の活性化に尽力してまいりました。

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