物流なんでも相談所

勝ち残る事業者となるには

2021年11月24日

物流なんでも相談所 Vol.38

 

物流業における人手不足に歯止めがかからない中、頭を抱える全国の経営者より、様々な人材確保術やニュースが届いています。女性雇用から人手不足を補う会社や共同配送など事業展開で課題を克服しようとする事業者など様々です。運送業の要とも言えるドライバーの雇用は企業にとってはまさに死活問題ですから、有効と思える情報には常に敏感になっていなくてはいけないと思います。

苦しい経営環境の中にあっても利益確保できている会社に共通することは、社員力が高く、高品質なサービスを提供することで、他社との差別化が図れることです。社員力が高い会社は社員定着率が高く、その経験によって他者よりも優れたサービスを提供できる社員がいるため、利益を確保できています。利益は社員の待遇やプライドを維持するため欠かすことができません。一生懸命仕事をしても、利益のない仕事はやる気を半減させてしまいます。一方で利益が出すことができる会社は、前向きに社員が課題に取り組むことで更に付加価値や利益などプラスを生み出すことにつながっていくという好展開が期待できます。社員にとって居心地が良い会社とはどのような会社でしょうか?利益が出て成長する会社、そのような社風とやりがいに加えて、利益に裏付けられた環境が居心地の良い会社を作りだしていると言っても過言ではないでしょう。

利益体質となるには差別化戦略がまず必要となります。差別化は言葉で表すと簡単ですが、実際物流業務を遂行する中で、差別化を図ることは容易ではありません。同じような配送やセンター運営ができる会社は多数あり、差別化をはかるためにはまず企業内でマネジメントが徹底されているかどうかが出発点と考えるべきです。物流業としてこれを見るならば、事故が少なく、他社よりも安く運べること、これがまず基本となります。安全のないところに顧客の信頼もあり得ないからです。経営戦略と言えばドラッカーの経営理論が浮かび上がってきますが、ドラッカー理論によれば、「マネジメントによって組織が成果をあげことができ、必要なことは機能、機関、道具の有効的な活用である」と定義しています。分かりやく物流業に置き換えるならば、その中心である「人」のモチベーションによる活性化がポイントであると言っているのです。企業の資産台帳には記載できない人こそ企業の中で最も重要な財産と言えるでしょう。そしての“機能”である「働き」を活性化させるには効果的な教育と訓練が必要であり、成果をあげさせるため目的を明確にする“目標管理制度”が定着していなければなりません。会社の目標、それに基づく部門の目標、それを受けた個人の目標がかみ合って達成できてこそ会社としての成果を生み出すことができるからです。会社の事業戦略や経営資源を効果的に配分なども含め、効果的な組織はその組織を構成する人材育成なしでは達成できないからです。ここで表す“機関”とは「主体」となって動かす組織のことを指すと考えるべきで、会社の経営戦略と言ってもよいでしょう。“道具”とは「利用するもの」で、物流業においては、車両や荷役機器、そして物流センターなどが考えられます。

以前にも述べているように、最も重要なのは最も重要な人材の活性化です。また組織の機能化を進めるため必要なのが、組織内において実施される常なる改善活動、イノベーションへのチャレンジです。大手物流企業の改善発表会に幾度となく参加させていただいた時のことですが、発表された内容はどれも高い精度でうなずかせるものばかりでした。この改善活動と5Sの徹底によって、差別化をはかるという企業戦略も見てとれます。改善活動はこれまでのやり方を踏まえつつ、次世代に合わせたやり方に変えていくため、現場の中で日頃から検証を重ねる活動です。常に時代にマッチした改善を図ることで、顧客満足やサービスレベルを高めることが可能で、企業成長には欠かすことのできない必須事項だと考えられます。だからマネジメントは①組織(企業)の使命の明確化、②事業の生産性と働く人の達成感を満たすこと、③社会的責任の追及に向けて働くことが必要です。

自社の経営戦略がいつも徹底されることで、顧客への貢献、所属企業への貢献、社会への貢献ができることになります。貢献に全社員がポイントを置くことで、自分のことでなく、お客様、会社、組織、社会のために自分がなすべきことを考え、達成しようと努力を重ねてくれるはずです。社会に認められる会社、目標を共有できる会社、社員育成に傾注し、一人ひとりを大事にしてくれる会社、理想的な会社の姿が垣間見ることができます。人を大事に、マネジメントにより、社員の隠れた良さ(才能)を引き出すことが必要となります。仕事と職場に、成果と責任を組み込み、共に働く人たちを生かし、その“強み”が成果に結びつくよう人を配置する、目標と目的を自分で立て自律した人材へと育成することで、人の生産性とレベルが向上する、やがて業績は向上し、仕事も人も活気づくことになります。差別か戦略に成功した企業が勝ち残る企業となるからです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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