物流なんでも相談所

パーパス経営とは

2022年2月24日

物流なんでも相談所 Vol.41


企業を取り込む環境が困難なときには、それを支える社員のモチベーションは勝ち抜くために重要な要素だと言えます。ここで紹介させていただきたいのが「パーパス経営」です。パーパス経営とは、一橋大学ビジネススクールの名和高司先生が発案したコンセプトで、企業の内部から生まれてくる強い思いや意思をベースにした経営手法のことです。 これまでの企業経営に多く用いられてきたビジョンやミッションを外発的なものと位置づけ、より内発的なパーパスをドライバーとしたマネジメントスキームです。 Purposeは「存在意義」と訳されることが多いですが、それでは少し理屈っぽいですし、よそよそしいものに感じます。名和氏はパーパスを「志」と読み替え、パーパス経営を「志本経営」とも呼んでいます。あくまでも企業の内部から湧き出てくる強い思いこそがパーパスであってほしいという願いからでもある先生は言明されています。

パーパスの設定は、自社の従業員のエンゲージメント向上にも役立ちます。パーパスが定まっていないと従業員は「私は何のために働いているのだろう」と思ってしまい、モチベーションが低下します。しかしパーパスがあれば仕事における自分の存在意義が明確になるため、従業員のモチベーションが向上してエンゲージメントが高まります。エンゲージメントが高まれば従業員のパフォーマンスも向上し、企業の成長にもつながるでしょう。企業のパーパスがあれば、従業員も同じ方向性に足並みをそろえられます。自分たちが何のために仕事をして何を実現するのかが明確になっているので、それを実現するために何を生み出すべきか定まります。また従業員全員が同じ方向に向かえば組織の一体感が生まれ、アイデアを出し合ったり他の人の意見を受け入れたりできるようになるでしょう。こうして今の自社に必要なものが明確になるので、革新や変化を生み出し企業のさらなる成長が実現するはずなのです。

革新や変化とは、新商品の開発、既存サービスの改良、業務フロー改善、ビジネスモデルの変更など多岐にわたります。これらの革新や変化を実現することにより、時代の変化に負けない柔軟で骨のある企業へと成長するでしょう。

以前からパーパス経営に取り組む企業は存在していましたが、本格的に多くの企業にパーパス経営が広まったのは2010年代以降です。その背景には、2015年の国連サミットでのSDGs(持続可能な開発目標)採択が大きなきっかけになっています。SDGsとは持続可能性=サステナビリティな社会を実現するための世界目標です。SDGsには2030年までに達成するべき17の世界目標が設定されており、環境・社会・経済の観点での目標が定義されています。そのなかには個人レベルの取り組みだけでなく、企業が主導して取り組むべき課題も含まれています。また世界的に取り組むSDGs達成に向け、日本政府は「SDGsアクションプラン2021」を設定し、具体的な方向性を示しました。

ここで改めて、企業経営における「パーパス」とは何かについて考えてみましょう。

先ほどから述べているとおり、ビジネスにおけるパーパスは「企業の存在意義」と解釈されます。それでは「存在意義」とは何かというと、その存在による価値や重要性です。つまりパーパスとは、企業が存在していることで生み出される価値だと言えるでしょう。そのためパーパスがあれば、企業は社会のために何をすればいいのかが具体化します。人間も同じですが、自分が存在する意味がわからなければ、どのような行動をしたら良いのかもわかりませんよね。ゆえにパーパスは企業活動の軸となるものであり、企業が社会にもたらす価値を表明するためにパーパスの提言が有効なのです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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