物流よろず相談所

テールゲートリフター特別教育義務化

2024年2月28日

物流よろず相談所 


テールゲートリフターとはトラックの荷台後部に装着された荷物積み降ろし用の昇降装置で、重い荷物の積み降ろしには欠かすことができないテールゲートリフターですが、労働安全衛生規則等の一部改正により、2024年(令和6年)2月1日からテールゲートリフターによる荷役作業についての特別教育が義務化されました。

日頃トラックに荷物を積んだり降ろしたりする荷役作業では、作業員が地上と荷台の上を上下するので、その度に位置エネルギーが発生しますが、誤って墜落、転落した時にはとても大きな危険エネルギーに変換され、大怪我もしくは死亡する可能性もあります。陸上貨物運送事業における労働災害は増加傾向にあり、最も多いのが荷役作業時の墜落、転落事故です。大怪我をした人、亡くなられた方の半分以上がヘルメット未着用であったという事実からもヘルメットの着用は必須です。死亡災害は、ヘルメット未着用の事故では最大積載量5トン以上のトラックで約5割、最大積載量2トン以上5トン未満のトラックでは約4割発生しており、ヘルメットを適切に着用していれば死亡に至らなかったケースも多いのです。墜落、転落事故が多いのは、平ボディやウイング車など側面が開放できる構造のものや、荷役作業時に使用するテールゲートリフターに関連するもので、テールゲートリフターの労働災害の半数以上は、その不適切な取り扱いによるものとなっています。テールゲートリフターに荷物と作業員が一緒に乗って走行していて、荷物が移動した時や転倒した時に発生することが多いようです。このような背景から特別教育が義務化されたと思われます。

特別教育は、自社もしくは外部機関にて受講しなければなりません。特別教育とは、労働安全衛生法第59条第3項に基づき、「厚生労働省令で定める危険又は有害な業務」に労働者をつかせるときに行わなければならない教育のことを指します。特別教育は、厚生労働省の告示で定められるカリキュラム(科目及び時間数)の内容にて、社内で行うことが原則とされていますが、社内に教育を行える人材がいない場合には外部機関が実施する特別教育を受講することも可能となっています。テールゲートリフターの特別教育を実施する講師は、学科及び実技の科目について十分な知識と経験を有する者でなければなりません。

特別教育は学科教育と実技教育から構成されています。学科教育では、①テールゲートリフターに関する知識(1.5時間)・テールゲートリフターの種類、構造及び取扱い方法、・テールゲートリフターの点検及び整備の方法、②テールゲートリフターによる作業に関する知識(2時間)、・荷の種類及び取扱い方法、・台車の種類、構造及び取扱い方法
・保護具の着用、・災害防止、③関係法令の科目に係る学科教育(0.5時間)・労働安全衛生法令中の関係条項、という内容です。次に実技教育は、①テールゲートリフターの操作の科目に係る実技教育(2時間)となっています。

特別教育を実施せず、労働者に作業を行わせた事業主は、労働安全衛生法第59条第3項に違反することとなり、「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」、また、特別教育の記録を保存しなかった場合は、労働安全衛生法第103条第1項に違反し、「50万円以下の罰金」となります。

テールゲートリフターは、適切に使用することで荷役時間の短縮につながり、作業者の負担を軽減できることから業務の効率化に大きく貢献することができる装置です。ただし、正しい知識を身につけ、適切に使用しないと重大な事故に繋がる危険性があります。特別教育を実施することも重要ですが、日々の業務の中で、従業員自ら事故の防止のために意識的に行動するようにならなければ、労働災害の減少にはつながりません。そのためには、日常の安全教育徹底は特に重要です。

荷役作業時の労働災害を防止するため、労働安全衛生規則改正を重く受けとめ、従業員の安全確保と生産性向上に努めて参りたいものです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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