改正物流2法への対応 ~続き~
2025年8月6日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
前号はこちら⇒ 改正物流2法への対応
トラック事業者に対する規制的措置としてとくに今回重視されたのは物流業界の多重下請構造を是正し、実運送事業者の適正運賃収受を図るため、「書面交付」、「実運送体制管理簿」、「運送利用管理規程」等が義務付けとなったことです。運送契約の締結に際して、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、有料道路利用料、 燃料サーチャージ等を含む)等について記載した書面の交付が義務付けとなったのは業界の中では画期的なこと。契約書の存在すらあやふやであった事業者もこれまで決して少なくありませんでした(下請関係に入る第一種利用運送事業者にも同義務)。 また健全化措置の努力義務化とあわせて、運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任が義務付けとなりました。利用運送を行うときに委託先への発注適正化(健全化措置)について努力義務が課されるとともに、一定規模以上の事業者に対し、この健全化措置に関する管理規程の作成、管理者の選任が義務付けられました(下請関係に入る第一種利用運送事業者にも努力義務)。さらに実運送体制管理簿の作成と下請情報の通知が義務付けとなりました。これにより元請事業者は実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿を義務として作成することになります。また、各事業者に対し、実運送体制管理簿の作成に必要な情報の通知も義務付けられました。
今年4月の法施行で以下の事への対応が必要となります。
- 運送契約締結時の書面交付義務付
- 健全化措置の努力義務
- 運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務
- 実運送体制管理簿の作成義務
- 荷待時間・荷役作業等の記録の義務付け対象の拡大
今回、軽トラック運送事業者に対しても規制的措置として「管理者選任と講習受講」、「国交大臣への事故報告」等が義務付けとなりました。また軽トラック事業者は、営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、運輸支局等に届出しなければいけなくなりました。併せて軽トラック事業者は、貨物軽自動車安全管理者(選任予定者)に貨物軽自動車安全管理者講習を、また選任した貨物軽自動車安全管理者には貨物軽自動車安全管理者定期講習を選任後2年ごとに、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で受講させなければいけません。
加えてこのたび初任運転者等への特別な指導及び適性診断の受診が義務付けとなりました。 軽トラック事業者は、以下の運転者に対する特別な指導の実施と、国土交通大臣に認定された適性診断を受診させ、その指導及び適性診断の受診状況等を記載した貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、営業所に備え置かなければいけません。①初任運転者(過去に一度も特別な指導・適性診断を受けていない者)、②高齢者(65歳以上の者)、③死者又は負傷者が生じた事故を引き起こした者、業務の記録が義務付けとなり、軽トラック事業者は、行った業務についての記録を作成、1年間保存することになっています。また、事故の記録も義務付けとなりました。軽トラック事業者は、事故が発生した場合、記録を作成し、3年間保存。国土交通大臣への事故報告が義務付けとなりました。死傷者が発生した場合、30日以内に所定の様式により 運輸支局等を通じて国土交通大臣に報告しなければいけません。また2人以上の死者を生じた事故等、一部の重大な事故については、24時間以内において できるだけ速やかに運輸支局等に速報しなければいけません。軽貨物事業者への規制措置が強化されたものです。
また今年成立した貨物自動車運送事業法の一部改正では①トラック運送事業許可について5年ごとの更新制度の導入、②適正原価を下回る運賃及び料金の制限、③委託次数の制限として、トラック運送事業者および貨物運送利用事業者は再委託の回数を2回以内に制限するような努力の義務化、④違法な「白トラ」に係る荷主の取り締まりが可決し、2027年度までに施行されます。
法改正への対応を学び、適切な事業経営を進めていただきたいと思います。