物流よろず相談所

改正2法への対応(詳細1)

2025年8月27日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志

※前々号はこちら⇒ 改正物流2法への対応
※前号はこちら⇒ 改正物流2法への対応(続き)

前号まで改正2法への対応の概要を説明させていただきました。4点の必要なことを今号から2回分けて詳細を説明させていただきます。

今年5月の法施行で以下の事への対応が必要となります。

  • 運送契約締結時の書面交付義務付
  • 健全化措置の努力義務/運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務
  • 実運送体制管理簿の作成義務
  • 荷待時間・荷役作業等の記録の義務付け対象の拡大

運送契約締結時の書面交付義務付
運送契約の範囲や運賃・料金の明確化を図るため、運送サービス(附帯業務等も含む) の内容やその対価等について記載した書面の交付が義務付けとなりました。運送の対価である運賃が明確化されていたとしても、荷役・附帯業務等の対価である料金や、燃料サーチャージ等の運送に係る追加費用について契約内容が明確化されていない場合は、実運送事業者が業務量に見合った適正な運賃・料金を収受できているのか否かを確認・判断できず、その改善が図られにくいという問題があります。また、着荷主先で、運送契約に含まれない附帯業務を強いられた場合であって も、トラックドライバーはその附帯業務が運送契約に含まれているのか否かを判別できず、断ることができないという問題があります。このため、荷主・トラック事業者等に対し、運送契約を締結する際に附帯業務の内 容やその運賃・料金等について記載した書面の交付を義務付け、個々の運送ごとにおける契約の範囲や運賃・料金の明確化を図ります。書面交付には「法第12条」に基づくものと「法第24条」に基づくものがあります。

・真荷主とトラック事業者が運送契約を締結するときは、相互の書面交付…(第12条)
・トラック事業者等が利用運送を行うときは、委託先への書面交付…(第24条)

交付する書面には、以下の事項を記載します。 貨物利用 運送事業者 (委託先) 24 条に基づく書面交付 貨物自動車 運送事業者 (再委託先) 下請構造の中にいる貨物利用 運送事業者については24条に基づく書面交付が必要 ・運送役務の内容・対価 ・運送契約に荷役作業・附帯業務等が含まれる場合には、その内容・対価 ・その他特別に生ずる費用に係る料金(例:高速道路利用料、燃料サーチャージ等) ・契約の当事者の氏名・名称及び住所 ・運賃・料金の支払方法 ・書面を交付した年月日

書面の交付は、メール等でも可能です。 ・書面の交付は、メール等の電磁的方法により行うことも可能です。ただし、電磁的方法により行うことを契約の相手方が承諾している場合に限ります。

健全化措置の努力義務
 委託先への発注適正化(健全化措置)が努力義務となりました。また、一定規模以上の事業者に対し、健全化措置に関する管理規程の作成、管理者の選任が義務付けとなりました。多重下請構造が生じている場合において、末端の実運送事業者が収受する対価を適正化させるには、真荷主⇒元請け、元請け⇒1次請けといった、真荷主と末端の実運送事業者との間にある全ての発注行為の適正化が図られる必要があります。このため、トラック事業者等に対し、委託先への発注行為の適正化を図ることを努 力義務として課し、その主体的な取組を促します。健全化措置の努力義務は、具体的には以下の3通りの場合に適用されます。 ①一般貨物自動車運送事業者が他の一般貨物自動車運送事業者の行う貨物の運送を利用する場合 ②特定貨物自動車運送事業者が一般貨物自動車運送事業者の行う貨物の運送を利用する場合 ③…第一種貨物利用運送事業者(下請構造の中にいる場合に限る。)が一般貨物自動車運送事業者の行う貨物の運送を利用する場合。

運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務
一定規模以上(前年度の利用運送量が100万トン以上)の事業者には、運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任の義務及び国土交通大臣への届出の義務が課されます。 一定規模の「100万トン以上」に該当するかどうかは、毎年提出している事業実績報告書の「輸 送トン数(利用運送)・全国計」欄で判断します。 届出期限は、利用運送量が100万トン以上となった年度の翌年度の7月10日までです。 運送利用管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者(役員等)から 1人選任。

運送利用管理規程には、以下の内容の記載する必要があります。 1)健全化措置を実施するための事業の運営の方針に関する事項  2)健全化措置の内容に関する事項  3)健全化措置の管理体制に関する事項  4)運送利用管理者の選任に関する事項。 運送利用管理者は、以下のような職務を行います。①健全化措置を実施するための事業の運営の方針を決定すること。②健全化措置の実施及びその管理の体制を整備すること。③実運送体制管理簿を作成する場合にあっては、当該実運送体制管理簿の作成事務を監督すること。

いずれにせよ、改正法の狙いは持続可能な物流体制を維持すること、そのために物流の価値の見直し、特にドライバーの地位向上と待遇改善等によって物流最前線での働き手確保の観点から法制度が確立されています。残り2点の続きは次号で説明させていただきます。(続きは9月3日配信)

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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