改正2法への対応(詳細2)
2025年9月3日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
※改正物流2法への対応
※改正物流2法への対応(続き)
※前号⇒ 改正2法への対応(詳細1)
前号では①運送契約締結時の書面交付義務付、②健全化措置の努力義務/運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務、等の項目について説明させていただきました。今号では③実運送体制管理簿の作成義務、④荷待時間・荷役作業等の記録の義務付け対象の拡大について説明させていただきます。
◆実運送体制管理簿の作成義務
多重下請構造の可視化を図るため、元請事業者に対し、実運送事業者の名称や請負階 層等を記載した実運送体制管理簿の作成が義務付けとなりました。多重下請構造が生じている場合においては、荷主や元請事業者は、自らの荷物についてどのトラック事業者が実運送していて、またそれが何次請けとなっているかを把握できていないことも多く、こうした場合、実運送事業者が適正な料金・運賃を 収受できているか把握できないという問題や、細かい作業指示が通らずトラブルが 発生しかねないという問題があります。このため、元請事業者に対し、利用運送を行った場合に、実運送事業者の名称や請負階層等に関する情報を記載した実運送体制管理簿の作成が義務付けとなりました。真荷主についてはその実運送体制管理簿の閲覧の請求ができるようにすることで、真荷主・元請事業者双方において多重下請構造の可視化を図ります。引き受けた貨物を自社で実運送する場合以外は、元請トラック事業者にも実運送体制管理簿の作成が義務付けられたのです。「真荷主から貨物の運送を引き受ける際に、元請事業者から実運送事業者に至るまでの一連の委託関係が明らかとなっている場合」は、実運送体制管理簿を貨物の運送ごとに作成する必要はありません。実運送体制管理簿の作成の対象は、1.5トン以上の貨物です(実運送する際の重量ではなく、真荷主から運送を引き受ける際の貨物の重量で判断)。
実運送体制管理簿の作成に必要な「実運送事業者の情報」を元請事業者が把握できるようにするため、所要の情報を通知する義務も各事業者に課されます。各事業者は、その運送が実運送体制管理簿の作成対象である場合は、運送委託を行う際に、情報の通知とあわせて当該運送が実運送体制管理簿の作成対象である旨を確実に委託先へ伝達する必要があります。
◆荷待時間・荷役作業等の記録の義務付け対象の拡大
これまで車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上に限定されていた「荷待時間・荷役作業等の記録義務」の対象が、全ての車両に拡大されました。トラックドライバーの長時間労働の要因の一つとなっている荷待ち・荷役時間を削減するためには、トラックドライバーの業務実態を把握し、トラック運送事業者と 荷主の協力による改善への取り組みを促進する必要があります。また、契約や受発注の適正化、待機時間料や積込料・取卸料などの適正な料金収受 においても、その根拠が必要です。荷待時間・荷役作業等の記録によるトラック事業者のメリットはトラックドライバーの労働時間の正確な把握による、荷主等への荷待ち・荷役時間の短縮を提案する根拠ができること。さらに荷待時間や荷役作業等を明確にすることで、待機時間料や積込料・取卸料など適正な料金を収受することができます。 また事故などが起こった時や現場でのトラブルでも契約内容を確認できれば対応もスムーズに進められます。一見難しく思える対応ですが荷主・事業者それぞれにとって物流の停滞を回避できるような環境作りに必ずつながるもの。改正法施行に遅れを取らないよう、出来る限り早い段階で理解を深め、荷主はもちろん従業員を含めた話し合いを進めていきたいものです。
同改正法には今年可決された一部改正により2027年度以降、運送業に5年ごとの更新制導入や、適正原価制度など大きな制度変更も盛り込まれています。法令順守や労務・財務状況の健全性などが更新ごとに厳しくチェックされるなどすれば、今後事業者の淘汰が更に進んでいく可能性も否めません。安全性を重視し法令順守に深刻に取組む物流企業は、同様に成長を望む荷主にとってもパートナーとして選ばれる確率が高まることでしょう。
これまで4回に分けて、説明してきました物流改正2法ですが、罰職や影響がでてくるのは今後のことになってきます。今のうちから体制えお整え、改正2法による変化を味方にして進んでいただきたいと願います。