物流よろず相談所

改正物流2法、荷主取組み内容明らかに

2025年11月5日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志


物流は、国民生活や経済活動、地方創生を支える不可欠な社会インフラですが、物流分野における人手不足、長時間労働等の厳しい労働環境、価格競争に伴う厳しい取引環境・雇用 環境等、物流にまつわる課題は深刻化しています。

2024年4月から労働環境改善のため 時間外労働の上限規制が適用され、何も対策を講じなければ輸送力不足による物流の停滞が 懸念される状況となっており、2030年には3割以上の貨物輸送に支障が出ると試算されています。こうした中で、物流の効率化、商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容について、抜本的かつ総合的な対策が必要とされ、荷主企業、物流事業者(運送・倉庫等)、一般消費者が協力して 我が国の物流を支えるための環境を整備するため、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和6年法律第23号)が制定され、今年4月に施行されました。荷主取組みが明示されることになっていましたが、このたび規定が明らかになってきました。2025年4月に施行された荷主が取り組むべき措置は、「積載効率の向上等」、「貨物を運送する運転者の荷待ち時間の短縮」、「荷役等時間の短縮」に努めなければならないとされています。その努力義務の達成に向けた具体的な取組内容が、判断基準(省令)として定められています。物流効率化法では、貨物の運送契約の有無によって、荷主は、第一種荷主(貨物の運送を委託する場合)や、第二種荷主(貨物の受渡しをする場合)という分類が設定されています。それぞれの立場で努力義務の措置が定められており、物流の効率化に向けて取り組むことが求められています。

また荷主の取り組みに対し、国の対応としては、適確な実施を確保するために必要があるときは、荷主事業所管大臣による指導及び助言が行われる場合があるとされています。さらに、荷主のうち特定荷主は、取組が著しく不十分なときは、荷主事業所管大臣による勧告・公表・命令・罰則の対象となる場合があるとされています。

改正後の「物資の流通の効率化に関する法律」(平成17年法律第85号)では、荷主や物流事業者に物流効率化の努力義務を課し、国がその取組状況を指導・助言、調査・公表します。さらに一定規模以上の荷主、物流事業者(特定事業 者)に対しては、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画の実施状況が不十分な場合、国が勧告・命令を実施することになっていましたが、この度国が報告書書式や方向の仕方など詳細を明らかにしました。

政府は法改正により、施行後3年で(2019年度比)荷待ち・荷役時間を年間125時間/人削減させ、積載率向上による輸送能力を16%向上させることを目指すとしています。法改正内容は、1.荷主・物流事業者に対する規制的措置(流通業務総合効率化法) 2.トラック事業者の取引に対する規制的措置 (貨物自動車運送事業法) 3.軽トラック事業者に対する規制的措置(貨物自動車運送事業法)の3点が主なものです。2028年迄に、①5割の運行で、1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を計2時間以内に削減 ②5割の車両で、積載効率50%を実現(全体の車両で積載効率44%に増加)を目指す、としています。荷主(発荷主・着荷主)・物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、国がその判断基準を示すことになっていたものが明らかになりました。

荷主の取り組みに対し、国の対応としては、適確な実施を確保するために必要があるときは、荷主事業所管大臣による指導及び助言が行われる場合があるとされています。具体的には、①リードタイムの確保、②貨物の出荷量や入荷量の調整、③配車計画や運行経路の最適化、④社内の関係部門間の連携促進、⑤第一種荷主への協力が求められます。取組が不十分な特定荷主は、担当大臣から勧告や命令、公表、罰則を受けることがあります。特に働き方改革を進める上で、運転者の荷待ち時間の短縮は重要な取組みとされており、貨物の入出荷の日時の分散、②トラックが到着する日時の調整、③寄託者が管理する施設における貨物の受渡し日時の分散などに取り組むことがガイドラインに示されました。この他にも運転者の荷役などの時間短縮に向け、①パレットやロールボックスパレットの導入による荷役などの効率化、②検品の効率化、③バースや荷さばき場など荷役等の環境整備などの取り組むことが必要とされています。取組みの実効性を確保する上で、①責任者の選任などの体制の整備や従業員に対する研修の実施、②荷待ち時間等や積載効率の状況、効率化のための取組の実施状況・効果の把握 、③寄託先の倉庫における荷待ち時間等を短縮するための提案と協力、④物流データ標準化等を通じた物資の流通に関する多様な主体との連携の円滑化、⑤物流サービスに応じた価格の把握、⑥関係者との連携などが求められることになりました。これら特定荷主の義務化は2026年4月から開始されることになっています。今後の動きが大きなポイントであり、注目されています。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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