ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用について
2025年11月12日
労務管理ヴィッセンシャフト vol.40
野崎 律博
①日本の雇用慣行はメンバーシップ型雇用が多い
突然ですが、皆様はジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用という言葉を聞いたことがありますでしょうか?これまで日本企業の大半は、メンバーシップ型雇用を主体とした人材採用を行ってきました。メンバーシップ型雇用とはその名の通り、「会社にマッチする人材」を主体とする雇用の在り方をいいます。一方、ジョブ型雇用とは「仕事内容にマッチする人材」を採用する手法です。
「違いがよくわからないよ?」そう思われるかもしれません。一言でいえば、人を採用する際、「その人」を見込んで採用するのか?あるいはその人の持つ「能力・スキル(職歴や資格等)」に焦点を当てるかの違いです。例えば会社が正社員として人を採用する場合、労働契約締結後の業務以外に人事異動や配置転換等が想定されます。実際に日本の雇用契約書の多くが、職務を限定した契約ではなく、会社のあらゆる業務を行うことを想定し締結されるケースが多いです。
では日本においてジョブ型雇用は存在しないのでしょうか?実は皆様に一番身近で行われているケースがあります。皆様お馴染みのドライバー雇用は、ジョブ型雇用に近いあり方といわれております。
ドライバー採用がジョブ型雇用に近い理由としては、3つのポイントが挙げられます。一つは職務内容が明確に定義されていることです。二つ目には職務内容が可視化されやすいことです。具体的には、配達件数や時間厳守、無事故無違反など成果指標(KPI)が明確であることからもいえます。また基準が明確であることは、成果主義に基づいた賃金体系とも相性が良く、歩合給を主体とした賃金体系であることも挙げられます。三つ目の理由としては、ドライバーとして雇用された人は、部署異動が少ない、または職務変更がなされず業務が固定化される傾向があります。これは人の採用を「その人自身」か「その人のスキル」に焦点を当てるかの違いです。
②ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のメリットとデメリットについて
それではジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のメリットとデメリットについて、述べてゆきたいと思います。
先にもふれました通り、我が国の企業の、とりわけ正社員雇用についてはメンバーシップ型雇用を主体に行われております。一方欧米はジョブ型雇用が基本です。ジョブ型雇用においては、企業の中で必要な職務内容に対し、その職務に即したスキルや経験を持った人を採用します。雇用の要となるのは、その人の持つ「スキル」ですので、年齢や性別、国籍や門地といった属性による差別が生じにくいです。まさに欧米のような個が確立した民主主義国家においては、合理的な雇用慣行といえるのではないでしょうか。また、スキルさえ身に着けていれば、労働契約を解除されることになっても心配ありません。その点はメリットといえます。
デメリットとしては、事業部解体などによりそのポジションが無くなったとき、解雇されることがあります。(但し、労働法規の解雇権濫用法理が適用されるため、要件を満たさない解雇は無効とされる可能性は高いです。)解雇と聞くと、日本では重大事として扱われますが、社会全体がジョブ型雇用をベースとした国家においては、他にスキルを活かせる仕事があれば再就職も容易です。なぜならば採用にあたって、年齢や性別による差別的取り扱いが行われにくいためです。雇う側がその人の属性など、問題にしていないからです。逆に問題となるのは、その人のスキルが自社の仕事に見合う(生かせる)かどうかのみです。
一方、メンバーシップ型雇用は、終身雇用を前提とした日本独自の雇用形態です。職務や勤務地などを限定せずに、会社のあらゆる業務を担ってもらう可能性があることを前提とした雇用契約となります。よって勤続年数や会社への貢献度などにより人事考課や昇進が行われることとなります。メリットとして企業が従業員のキャリア形成を支援することが多く、雇用の安定性の高さや中長期的な人材育成が前提となります。また人事異動や配置転換など、柔軟な業務対応も可能です。終身雇用はメンバーシップ型雇用の根幹をなす制度であり、正社員として採用した人材を定年まで雇用する前提で設計された制度といえます。終身雇用を前提としているため、企業への帰属意識やチームワークも強くなりやすくなります。
デメリットとしては、成果主義が弱くなることや、評価が曖昧になる等の点が挙げられます。従業員の目線からいえば、異動や転勤が企業主導で行われるため、従業員が望まない部署に配属されることも起こり得ます。また職業能力を理由とした解雇が困難となるため、採用は慎重になりがちです。
③今後の雇用の在り方について
近年、政府はジョブ型雇用を多用な働き方の一環として位置付け、人的資本投資や働き方改革の柱として普及を推進しています。従来の終身雇用から、欧米型雇用に切り替えたいと考える代議士の方も多いようです。雇用の流動化を促す効果を考えると、ジョブ型雇用普及はよいことだと思いますが、終身雇用という労働慣行は日本に未だ根強く生きており、日本社会全体が意識を変えるというのもそう簡単なことではないと考える次第です。
また昨今ではハイブリット型雇用(メンバーシップ型とジョブ型の中間)というのもあるとのこと、それについてはまた今後、折を見て述べてみたいと思います。