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ONE、上期赤字3億1100万㌦ 復航苦戦が響く、収支回復へ構造改革着手

日刊CARGO 2018年11月1日掲載

 

オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)の2019年3月期上期(4~9月)決算は3億1100万㌦の赤字となった。前回発表では3800万㌦の赤字予想だったが、積み高の減少や燃料油価格高騰に対応した追加のコスト削減が未達となったことで、大幅な下方修正となった。この結果、通期業績予想も6億㌦の赤字となり、前回発表から大幅な下方修正となった。ただ、統合に伴うシナジー効果自体は着実に現出しており、19年度の収支回復に向け今後構造改革に取り組む。来年度以降の事業数値目標については、今後検証を踏まえて見直しを行う予定だ。

ONEは前回の業績発表で第1四半期(4~6月)に1億2000万㌦の赤字を計上したものの、通期ではなお1億1000万㌦の黒字目標を掲げていた。しかし、乗り出し時のサービス混乱のため、積み高や消席率が想定通りに回復していない。混乱自体はすでに収束しているものの、積み高の誤算からわずか3カ月間で大幅な下方修正を強いられることとなった。

通期業績見通しにおける7億㌦超の下方修正の内訳は、積み高減で4億㌦、コンテナ回送費用の増加で1億7000万㌦。また、コスト削減の一部未達により8000万㌦、その他要因で6000万㌦のマイナスとなった。

積み高と消席率に関しては、アジア出し往航では第2四半期以降は一定水準に回復している。第1四半期では70%台だったが、第2四半期では90%台まで回復。繁忙期における消席率としては、他船社と比較してなお低い水準にとどまるが、第1四半期からは大幅に改善した。これに対し復航トレードの消席率は極めて低水準にとどまり、北米復航では33%、欧州復航では47%となっており、第1四半期と比較しても改善が見られない。一般的に北米復航では50~60%、欧州復航では60~70%が平均的な消席率で、それに比べて20ポイント前後も低い水準となっている。サービス混乱で流出した貨物をなお取り戻せていないことに加え、中国側の古紙・廃プラなどの輸入規制などで復航トレード自体が縮小していることも背景にあると見られる。

復航消席率の低迷は売り上げの減少だけでなく、北米や欧州でのコンテナ滞留費用やアジアへの回送コストの拡大につながっている状況だ。貨物収支はラウンドで測るため、復航でかさんだ回送コストは往航運賃に反映させる必要があり、その分往航でも運賃マーケットで競争力が失われて思うように貨物を増やしきれないという悪循環に陥っている。

統合に伴うシナジー効果自体は着実に現出していることから、ONEは今後、来年度を見据え構造改革に取り組む。当面は荷主からの信頼回復と積み高の回復に集中し、さらにディテンション・デマレージの回収強化などで収支改善を図る。さらに第2段階の構造改革として、貨物ポートフォリオやプロダクト、組織の最適化を進める。親会社3社もONEに対するガバナンスを強化し、目標値の達成度合いなどをきめ細かく管理するとともに目標達成を支援していく。シナジー効果は、今年度中の達成度合いは75%を見込んでおり、前回発表の80%からやや下方修正されたものの、3年目には計画通り10億5000万㌦の削減効果を達成できる見込みだ。

一方、当初は3カ年の事業計画で20年度に6億4800万㌦の黒字を目指すとしてたが、初年度に大きくつまづいたことで見直しが行われる予定。今後、検証や検討を入念に行ったうえでしかるべきタイミングで見直しを行うとしている。


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