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台風21号、なお残る爪痕 損害賠償・保険巡りトラブル

日刊CARGO 2019年3月4日掲載

 

昨年9月に発生した台風21号による貨物事故の損害賠償を巡り、荷主や物流事業者の間でなおトラブルが続いている。天災による貨物損害では、標準約款により運送・倉庫会社は免責となるが、過去の商慣習や約款への認識不足から損害賠償を巡り主張が対立するケースが出ている。また貨物保険でも、輸出FOB案件で危険負担が買い手に移る船積み・搭載前に被災したため、保険適用が受けられない事例も多く見られた。いずれも被災前から存在していたリスクだが、過去に例の無い高潮被害で海上・航空問わず大きな被害が生じたことで大きく顕在化した格好だ。貿易条件の見直しや、関係者間での支払い・責任負担範囲の明確化などが課題となっている。

台風21号は昨年9月4日に日本に上陸した。物流への影響という点では、記録的な高潮による被害が目立ったのが特徴で、阪神港や関西国際空港ではコンテナヤードや物流事業者の倉庫内などで保管されていた輸出入貨物に大規模な被害が発生。これまでも台風など天災で港湾・空港が被災するケースはあったが、被害規模が非常に大きかったために貨物事故を巡る損害賠償や危険負担の認識について、改めてさまざまな課題が顕在化した。

貨物事故では、コンテナヤードや物流倉庫などで被災した貨物の損害賠償を巡り、荷主と物流事業者間での対立が目立つ。基本的に保管中の貨物であれば、標準倉庫寄託約款(第40条)、輸送中では標準貨物自動車運送約款(第44条)に基づき、いずれも高潮を含む天災では免責となることが明記されている。ただ実際の契約時に約款の中身まで確認することは少なく、約款の存在や内容について荷主側が認識していないことが少なくない。被害額が少なかった過去の事例では、取引関係を重視して物流事業者側が賠償に応じるケースがあったことも問題を複雑化している。荷主側は過去の経緯から賠償を請求するが、物流事業者側は被害額が大きいため応じることができない。事前に約款の説明が無かったことも含め、双方の主張が大きく隔たり、歩み寄りがより困難になる恐れがある。

貨物保険を巡っては、海上・航空とも輸出FOB案件で無保険状態で貨物に被害が生じた事例が出ているという。海上コンテナ貨物の場合、FOBでの売り手から買い手への責任移転は貨物が本船のホールド内に置かれたタイミングで発生する。本来、売り手側は船積みまでの保険手配を別途行う必要があるが、実際にはその意識が希薄で無保険状態となっており、保険適用を受けられないケースが報告されている。

また、航空貨物の場合、輸出FOBで責任移転がいつ発生するか、インコタームズには必ずしも明確な基準が明記されていない。空港港内に貨物が搬入されたタイミングで責任移転が発生すると解釈されるのが一般的だが、実運送人に渡された段階で発生するとの解釈もあり、保険適用を巡って売り手と買い手の保険会社間で見解が分かれることがしばしばあるという。台風21号のケースでは、関西国際空港内でフォワーダーが運営する倉庫内の貨物が被災したが、その責任範囲を巡って荷主や事業者間でトラブルが起きるケースが起きている。海上空港という関空の特徴に加え、過去に例がない高潮被害の発生という条件が加わったことで、貿易条件で曖昧だった部分のリスクが顕在化した格好だ。

保険会社は「海上貨物にせよ航空貨物にせよ、貿易条件がFCA(Free Carrier:運送人渡し)ならばこうしたリスクはカバーできるので、見直しを勧めている」と指摘する。さらに輸出貨物の場合、相手国に到着した後の保険適用範囲についても、必ずしも十分に認識されておらず、意見の食い違いが発生することが少なくない。「今回を機に、荷主や倉庫、運送事業者など関係者間で、改めて支払いや責任範囲について明確化し、認識を統一することが望ましい」としている。


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