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採用難が本格化、仕事量を補えず/ 東京五輪、出荷減に自然災害も懸念

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ILRS-NEWS Vol.490

 

写真:東亜物流(株)森本勝也 社長


― 
いま最も頭を悩ましている経営課題は何か。

(森本社長)労働力が思うように確保できなくなってきたことだ。新卒では大卒は合同説明会など通じて今年入社で4人ほど採れたが、高卒は内定者がいない状況だ。これまで何年も地元の高校に足しげく通って、安定的に採用してきたが、昨今の売り手市場ではなかなか難しい。また即戦力の中途採用もいろいろな採用活動をやっているが、なかなか来てもらえない。仕事はあるのに戦力が補えないので、お断りするケースも出ている。また、若い人に入ってもらわないと社員の平均年齢がどんどん上がっていくので、社内の年齢構成もいびつになってしまう。

― 一方で働き方改革による労働時間の短縮が求められている。

(森本社長)国土交通省の指導に沿って月の拘束時間293時間以内にするよう手は打ってきた。有給休暇も計画的に年間5日を取ってもらうようにしている。ただ、同じ仕事量で時短を進めるのだから、人が採れないと消化できない。また、2024年までに年間960時間の残業規制をクリアしなければならないので、さらに時短を推進していかねばならない。

運賃については需給のひっ迫もあって水準が是正されつつあると聞くが。

(森本社長)荷主もかつてのように安い所に流れるという状況ではなくなっているが、水準としては十分に回復したという実感はない。最低賃金が上がっているのに加え、働き方改革をやらねば人が来ないので、これを補うには運賃修復が急務だ。国土交通省が今年度中に標準的な運賃を告示すると言われているが、水準が実態と比較してどの程度になるか強い関心がある。

― 東京都トラック協会では、副会長として運輸安全委員会を担当しているが、昨今の活動状況を報告してほしい。

(森本社長)東ト協の活動方針である事故防止について、昨年就任して思ったのは東ト協が歴代、実にしっかり取り組んでいるということだ。東ト協の安全運輸委員長は必然的に全日本トラック協会の交通安全対策会議の副委員長になり、全国の活動状況の資料を見る機会が増えるが、東京は事故が大幅に減少し、公表されている直近2年間は警視庁管内で会員が関与した第1当死亡事故が各1件だけだった。これは各支部単位で事故防止活動をかなり活発にやってきたからだ。それぞれの支部長が所轄警察の交通安全協会の役員を兼務するケースが多く、地域活動に力を入れた成果が出ている。

もう一つは昨年9月に代々木公園で開催したトラックフェスタの実行委員長を務めたが、来場者が前年より約1万人多い、3万2千人ほどとなって大盛況だった。東ト協の本支部が一体となって取り組む最大のイベントで、一つの目標に向かい「ワン・チーム」で臨んだ結果だ。今年は東京オリンピック/パラリンピックがあるので代々木は使えず、駒沢オリンピック公園で開催する。駒沢オリンピック公園は56年前の東京オリンピックで第2会場となり、サッカーほかいくつかの競技が行われた。オリンピックの年に前回のオリンピックで使われた公園でやるのは意義深いことだ。来場者の目標は4万人である。

― その東京オリンピック/パラリンピックだが、東京都は交通渋滞への懸念で各方面に期間中の自粛協力を求めている。

(森本社長)運送業界としてもちろん協力はするが、両大会で延べ1か月以上出荷量が落ちると売上も当然下がることになる。さらに懸念しているのは、8~9月のこの時期に昨年のような大型自然災害が起こらないかということだ。大会の混乱はもとより、経済全体が大きな影響を受け、我々運送業も大打撃を受けかねない。昨年の台風被害を目の当たりにし、既に対岸の火事ではなくなったと身を引き締めている。

―5月にジャパントラックショー2020が開催される。このショーへの要望、あるいは期待することがあれば。

(森本社長)一般市民に運送業界が社会的なインフラとして重要な役割を担っている点や環境問題、交通安全に積極的に取り組んでいることをPRするよい機会となってほしい。若者や将来を担う子供たちに運送業がすばらしいことをやっているということをアピールできればと思っている。東ト協は毎年トラックフェスタをやっているが、ジャパントラックショーと向かうベクトルは同じなので、将来はコラボできればよいと思う。

(聞き手:葉山明彦)


東亜物流株式会社
東京都江戸川区一之江1-9-13

代表取締役  森本 勝也
(東京都トラック協会 副会長)

ホームページ https://www.toaline.co.jp/

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