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若年層の教育、産学官連携重視 国土交通政策研究所・物流人材調査

Daily Cargo  2021年1月29日掲載

 

国土交通政策研究所は26日、「物流分野における高度人材の育成・確保に関する調査研究」の中間報告を公表した。米国や中国での物流分野の教育の状況や、経営全体の視点から物流の効率化などを図る提案ができる「高度物流人材」育成のための教育の課題・対策などを調査した。若年層にとって物流が進学、就職の選択肢となるようなキャリア教育や産学官一体となった取り組みなどが必要であるとの研究結果を発表した。

同調査は、「高度物流人材の育成・確保のあり方」「物流分野を支える人材の裾野を広げる取り組みのあり方」についての検討を目指し、2019年度から2カ年計画で取り組んでいる。米国、中国での物流専門教育の状況や物流・サプライチェーン(SC)分野担当の企業経営幹部の状況をヒアリングした。国内の高等教育機関、企業や業界団体の物流専門教育の状況も調査した。

各国の高等教育機関の物流・SC関連専門学部・学科・コースについては、日本は東京海洋大や流通経済大など少数に限られる。一方、米国は物流・SC分野の専門プログラムが有力校ランキングに入るだけでも約50校存在する。中国は、「物流工程(工学系)」「物流管理(経営学系)」いずれかの学位を取得できる大学は数百校あり、このうち軍事学校を除く有力校は44校あるという。

各国の物流関連カリキュラムの特徴としては、日本は高等教育機関は「物流」「流通」「海事」「海洋」などの分野を含めて、単発的にカリキュラムを設置することが多い。理系は経営工学や社会工学、文系は経済学、商学、経営学など多岐にわたる。一方、米国は文理横断型で、サプライチェーンマネジメントの各要素を網羅している。横断的かつ包括的内容を提供し、修士課程では理論、実践の両方を重視する。中国は物流工程、物流管理の2つのコースに大別し、双方とも文理横断的な教育を実施しているという。

調査研究の結果、高度物流人材の育成・確保に向けて米国や中国は修士課程で物流教育が充実しており、特に米国は双方に利点のある関係で産学が連携しているとわかった。日本の物流教育の拡充は、現時点の教育環境、教育ニーズを踏まえて進める必要があるとした。また、物流を支える人材(高度物流人材と現場人材)の育成・確保には、国内の業界団体で、生涯にわたって教育と就労を繰り返す教育制度「リカレント教育」やキャリア教育を実施。若年層にとって将来的に物流業界が進学、就職の選択肢になるようなキャリア教育も必要とする。多忙な教員の負担を軽減するなど、教育現場での実効性を担保する形で方法を検討する必要があるとした。産学官一体の取り組みも重要とする。物流に関係する各業界だけでなく、発荷主や着荷主を含めた物流に関係する各主体が一丸となり、連携・協働して取り組む。他分野を含む国内外の事例を踏まえ、さらに検討を進める必要があるとした。同研究所は今年度に「欧州における物流教育の状況に関する調査」「わが国の物流教育への意識調査 」に関するアンケート、ヒアリング調査も実施予定だ。


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