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欧発日本向け医薬品の保冷航空輸送実証 日新/スズケン/パナソニック

Daily Cargo  2022年1月7日掲載

 

日新はこのほど、医薬品卸のスズケングループと共同で、パナソニックの真空断熱保冷ボックス「VIXELL(ビクセル)」を活用し、医薬品の航空輸送の実証試験を行ったと発表した。容器内温度をドライアイスでマイナス60度以下に設定、スイス・バーゼルの倉庫から陸送してベルギー・ブリュッセル空港で航空機に搭載、独フランクフルト空港経由で関西国際空港に輸送、神戸市内のスズケンの物流センターに運んだ。日新が導入を検討する温・湿度、照度、傾き、衝撃度などの計測デバイスでデータを収集した。

昨年9月14~22日に、バーゼルからスズケンの阪神物流センター(神戸市北区)まで輸送した。ビクセルは、パナソニックが開発した真空断熱筐体(VIC)技術を用いた超低温保冷容器で、最長18日間マイナス70度の超低温保管・輸送が可能。同ボックスのLサイズ、Sサイズ各1台と、IoT(モノのインターネット)通信によるゲートウェイ・センサータグを使用。温度計測用の温度ロガーは航空会社の航空機搭載可能な機器を選定して利用した。なお、発地であるベルギーに置く日新の現地法人、ニッシン・ベルギーは昨年2月にGDP(医薬品の適正流通基準)認証を取得している。

実証では、マイナス60度以下に保って温度維持能力を試すとともに、デバイス親機に国際ローミング可能なSIMを挿入、センサータグをボックス外面のポケットに設置して、スイス、ベルギー、日本の3カ国の測定ポイントを通過する際に温度、湿度、照度、傾き、衝撃のほか、充電残量を計測した。さらに国際一貫輸送での許認可や通関上の課題・問題点も検証した。神戸到着後は同9月23日~10月4日まで、ボックスの保温機能の実験として日新の京都営業所(京都府下京区)で引き続き保管して、計測を継続した。関空やスズケンの阪神物流センターで保管した際の室内温度は5度だった。

結果、ボックスLサイズが19日プラス3時間、Sサイズは9日プラス12時間、マイナス60度を保持した。3カ国の計測ポイントで収集した計測データをクラウドに格納し、スズケンの阪神物流センター到着前に温度、湿度、照度、傾き、衝撃度、充電残量ともにインターネット上の管理画面で確認できた。事前に税関に相談してボックスを「通い容器」として申告することで、免税での輸入許可を得た。

「コロナ禍によるワクチン輸送に代表されるように、医薬品の国際輸送ニーズが増大し、医薬品輸送ではGDPの導入が進んで厳格な温度管理が求められている。高品質な超低温輸送を実現し、加えて輸送状態の可視化サービスが望まれている」(日新)とする中で、日新の国際輸送とスズケンの日本国内輸送の知見を持ち寄り、パナソニックの協力のもとで、保冷ボックスと日新が導入を検討するIoTデバイスを組み合わせた輸送実験とした。

実証輸送の結果はパナソニックのビクセルのウェブサイトで1月前半にも公開する予定。今後は「3社の実証実験で得た知見やノウハウを生かし、医薬品業界のニーズに沿った国際物流の実現に向けて取り組んでいく」(同)考え。


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