MSC・トフCEO「マーケット変動も成長を維持」独立サービスは好調
Daily Cargo 2025年7月2日掲載
MSCのソレン・トフCEOは今年4~6月期における事業展開の振り返りについて、「マーケットの変動にもかかわらず成長を維持した」とコメントした。今年はマースクとの船腹共有協定(VSA)「2M」を解消し、2月からは圧倒的なコンテナ船腹量を背景として単独運航を中心としたサービス体制に移行した。「当社の独立した東西基幹航路は好調に推移している。機敏な対応が鍵となる中で、微調整を重ねている」と説明した。
トフCEOが6月30日、自身のリンクトイン(LinkedIn)で同社の事業運営の状況について投稿した。MSCは業績を公表していないが、今年4~6月期も成長を維持したようだ。
MSCは今年に入ってからも、長期を見据えた投資を継続して実施している。具体的には、曳船会社ボルーダ(BOLUDA TOWAGE)の株式49%の取得をこのほど完了。MSCグループの曳船会社メドタグとの相乗効果により、タグボートの運航船隊を世界トップクラスにまで拡大し、競争力を強化した。また、ブラジルの港湾海運会社であるウィルソン・サンズの株式56%の買収についても完了した。同社はブラジルのリオグランデコンテナターミナルやサルバドールコンテナターミナルを運営するほか、約80隻のタグボート、約23隻のオフショア支援船、保税物流センター、グアルジャにおける2つの造船所などを運営・保有する。MSCグループは同社を買収したことで、ブラジルをはじめとした南米での事業展開をさらに強化していく方針だ。
ドイツ・ハンブルクでは、6月中旬に「MSCイエローフェスティバル」を開催。ドイツの名を冠した新造LNG二元燃料コンテナ船「MSC GERMANY」の命名式をはじめ、音楽やアートのパフォーマンスのほか、賞金付きチャレンジや体験型展示などのエンターテインメントが各所で展開され、10万人を超える人々が来場した。MSCグループは昨年、ハンブルクに本拠を置くターミナルオペレーターであるHHLAの株式取得を完了。ハンブルク市との戦略的合弁事業として運営しており、2031年以降にはMSCグループとしてHHLAのターミナルにおけるコンテナ貨物量を最低でも年間100万TEUまで増加させる計画を掲げている。26年からは、ハンブルクのハーフェンシティに新たなドイツ本社を整備し、700人を雇用する方針だ。トフCEOは、「ハンブルクとのパートナーシップにおける節目となった」と振り返った。
アフリカ事業にも力を入れた。4月からは世界最大船型となる2万4000TEU型の超大型コンテナ船を西アフリカ航路に投入した。同社によると、2万4000TEUクラスの世界最大船型をアフリカ航路に投入したのは業界初という。トフCEOは、「(2万4000TEU型コンテナ船の寄港は)数年前には考えられないことだったが、継続的な投資と現地におけるコンテナ取り扱い能力の向上により、現実となった」とコメントした。
同氏は今年5月にコートジボワールのアビジャンで開催されたアフリカCEOフォーラムにも登壇。アフリカの成長性に注目し、事業を強化していく方針を示した。MSCグループとしては1971年からアフリカ事業を展開しているが、近年は投資を加速している。2022年にはボロレグループのアフリカ事業を担うボロレ・アフリカ・ロジスティクスを買収し、現在はアフリカ・グローバル・ロジスティクス(AGL)としてアフリカで港湾・物流事業を展開する。今後、アフリカ域内事業において、年間2ケタの成長を目指している。
海事調査会社アルファライナーによると、6月末時点におけるMSCグループのコンテナ運航船隊は922隻・667万TEUとなり、世界トップとなる。2位のマースクと比較しても隻数ベースで189隻、船腹量ベースで200万TEU以上の開きがあり、圧倒的だ。発注残も124隻・202万TEUとなり、世界トップとなる。今年2月からはアジア―欧州航路ではプレミア・アライアンスと、北米東岸航路などではZIMと協調しながらも、圧倒的な船腹量を背景に単独運航をベースとしたサービス体制を構築している。機動性を生かして、激変するマーケット環境や顧客のニーズに対して柔軟に対応している。
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