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ユニオン・パシフィック鉄道 ノーフォーク・サザンと合併合意

Daily Cargo  2025年7月31日掲載


米国の貨物鉄道会社ユニオン・パシフィック鉄道(UP)とノーフォーク・サザン鉄道(NS)は現地時間7月29日、両社を合併し、米国初となる大陸横断鉄道会社を創設することに合意したと発表した。米国東海岸から西海岸まで43州にまたがる5万マイル以上の路線をシームレスに輸送し、約100の港と北米のほぼ全ての地域を結ぶ。両社は、「米国のサプライチェーンが変革され、米国の製造業が強化されるとともに、経済成長と雇用の創出が期待される」とした。合併は、米国陸上運輸委員会(STB)など規制当局の承認を前提とし、2027年の完了を目指す。

UPとNSは現地時間24日、合併協議を進めていることを明らかにしていた。成立すれば米鉄道業界では過去最大規模の買収案件となる。今回の合併は、UPがNSを約850億ドルで買収する形で行われる。統合後は、時価総額で2500億ドルを超える貨物鉄道企業が誕生することになる。合併によるシナジーは年間約27億5000万ドルを見込む。24年の両社の決算に基づくと、試算ベースにおける統合会社の売上高は約360億ドル、EBITDAは約180億ドルとなる。UPのジム・ヴェナCEOが統合後の新会社をCEOとして率い、少なくとも今後5年間は留任する意向を表明した。UPとNSの経営陣は買収完了まで、引き続き各社を独立して運営する。NSのマーク・ジョージCEOやリチャード・アンダーソン氏を含む取締役3人が統合後のUPの取締役に加わる予定。合併後の本社はネブラスカ州オマハに置く。

UPのヴェナCEOは、「鉄道は産業革命以来、米国にとって不可欠な役割を果たしてきた。今回の合併は貨物鉄道産業の発展に向けた新たな一歩だ」とコメント。NSのジョージCEOは、「NSはUPと同様に米国経済に不可欠な鉄道会社であり、米国東部22州の顧客に200年にわたってサービス提供してきた歴史を持つ。今回の合併は、変革をもたらし、世界最高の貨物輸送システムを強化するものだ。約165年前にリンカーン大統領が構想した大陸横断鉄道を基盤とし、当社の安全性、サービス、オペレーションの卓越性をさらに強化するものだ。米国経済や米国の顧客、従業員にとっての勝利となる」と話した。

規制当局の承認を前提とし、6カ月以内にSTBに統合を申請する予定だ。審査プロセスは16カ月間を見込み、27年前半の買収完了を目指していく。他方で、独占禁止法上の問題が懸念されており、審査が長引く可能性を指摘する見方もある。また人員整理が伴う場合は労働組合が抵抗する可能性もある。ただ両社は、今回の合併により、既存の雇用の維持に加え、鉄道貨物量の増加により、新たな雇用機会を創出する可能性があるとしている。

北米の貨物鉄道を巡っては、2023年にカナダ太平洋鉄道(CP)とカンザスシティ・サザン鉄道(KCS)が合併し、カナダ太平洋カンザスシティ(CPKC)となり、カナダ・米国・メキシコの北中米3カ国をまたぐ貨物鉄道ネットワークを構築した。今回のUPとNSの合併が成立した場合は、残るBNSFやCSXなどの競合大手の再編を促す可能性もある。


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