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精密医療品の輸送実証、国際基準構築へ ブリュッセル発ダラス向けで

Daily Cargo  2026年1月28日掲載

 

ブリュッセル空港では昨年11月から、革新的ながん治療や希少疾患治療に用いられる精密医療(プレシジョン・セラピー)関連品の米ダラス向け実証輸送を行っている。治療に使用される人の細胞や血液由来の検体などを航空輸送するもの。「プレシジョン・セラピー物流ゲートウェイ(PTLG)」プロジェクトの一環として行うもので、プレシジョン・セラピー関連品の安全な輸送体系や国際標準の確立などを目指す。ブリュッセル空港では、貨物地区内に専用物流センターを設置の必要性を検討している。ダラス向けの実証輸送は、今後数週間のうちに、さらに50件の輸送が予定されている。

19日、ブリュッセル空港が発表した。PTLGプロジェクトは、2025年初頭に始動した先進的な取り組みで、ブリュッセル空港、医薬品航空輸送の独立協会「Pharma.Aero」(ファーマ・ドット・エアロ)、ベルギーの航空貨物コミュニティ団体「Air Cargo Belgium」およびアントワープの研究機関・大学・病院・企業などが連携する地域エコシステム「at.las」が連携して推進しているもの。プロジェクトは、アントワープ州およびフラームス・ブラバント州の支援を受け、精密医療向け物流の標準化研究を進めている。

PTLGプロジェクトでは、精密医療を世界規模で安全かつ迅速に輸送する方法を検証し、既存の物流プロセスにおけるリスクや課題を洗い出すことを目的としている。ブリュッセル空港とプロジェクトパートナーは、将来的に、こうした先進的な治療に関連する品目の航空輸送について、国際的に認められる基準策定を目指す。

精密医療には、細胞治療、遺伝子治療、放射性リガンド治療などが含まれ、患者一人ひとりに合わせた個別化医療を総称するもの。極めてデリケートな性質を持つため、温度管理や輸送時間を厳格に管理した、迅速かつ確実な輸送が不可欠となる。

ブリュッセル空港では25年11月以降、ブリュッセル空港から米国ダラスのバイオテクノロジー集積地「BioLabs Pegasus Park」に向け、細胞および血液サンプルの実証輸送が10件行われ、いずれも成功裏に完了した。

一連の実証輸送は、先端治療医薬品(ATMP)に特化した、at.lasが精密医療向けの実証輸送の調整・統括を担い、アントワープ大学サイエンスパーク(ニール)と連携。細胞・血液サンプルの実証輸送プロセスの運営を行う。

研究用サンプルは、アントワープ大学の実験血液学研究室が提供し、健康なドナーから採取された細胞・血液は、アントワープ大学病院(UZA)の細胞治療・再生医療センター(CCRG)から空港へ搬送される。米ダラスでの検証後、検体は再びベルギーに戻り、UZAの細胞治療・再生医療センター(CCRG)に返送される。

ブリュッセル空港では、欧州有数の医薬品物流ハブとしての知見や、延べ4万5000平方メートルの温調庫を活用し、実証輸送環境を提供する。実証輸送に用いられる検体は、空港到着後に通関手続きを経て温調庫で保管され、搬出時には、同空港が約10年前に独自開発した冷蔵コンテナに積み替え、航空輸送中も最適な環境温度を維持する。

ダラス到着後、検体はBioLabs Pegasus Park内の研究所に搬送され、目視検査を受けた後、ベルギーに返送される。旅客便のベリー・スペースを利用した小口航空貨物輸送とすることで、患者本人が移動することなく、患者の細胞のみを移動させる物流モデルを構築し、精密医療へのアクセス向上につながると期待されている。

ブリュッセル空港のアルノー・フェイスト最高経営責任者(CEO)は「今後、ベルギーにおける精密医療の生産と活用は大きく拡大するだろう。スピード、正確性、信頼性を重視した物流体制が不可欠だ。パートナーとともに、この重要なイノベーションを支え、将来の医療に貢献していく」と力を込める。

現在、この分野には統一された国際基準は存在しておらず、将来的に国際的に認められる基準を構築することも目標に掲げる。今回、一連の実証輸送では、輸送時間、温度管理、トレーサビリティなどの重要指標を監視するため、センサーが検体に装着されている。これにより、輸送チェーン全体における潜在的なリスクやボトルネックを特定する。

試験結果は26年前半にまとめられる予定で、Air Cargo Belgiumが主導し、精密医療物流に関する国際的に標準化されたプロトコルの策定を進めていくという。


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