UPU・目時政彦国際事務局長 デミニミス廃止「DDPソリューション」活用を
Daily Cargo 2026年2月20日掲載
昨年9月、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開催された第28回万国郵便大会議で万国郵便連合(UPU)国際事務局長選挙が行われ、目時政彦氏が国際事務局長に再選した。日本人初のUPUトップとして2022年1月から同職に就く目時氏は、今年1月から2期目を務めている。国内郵便の取扱量が世界的に減少する一方、eコマース(EC)の全盛で国内小包は大幅に増えており、世界情勢は絶えず変化している。昨年、米国は関税措置の断行とともに、少額輸入貨物の関税などを免除するデミニミス制度を廃止。米国向け国際郵便物の取扱量は一時、8割減まで激減した。UPUは対策として、発地側で関税を徴収する「UPU DDP(関税込持込渡し)ソリューション」の活用を呼びかけている。不確実性の強まる時代、これから4年間のUPUのかじ取りを目時国際事務局長に聞いた。(文中敬称略)
■郵便事業体生き残りをかけて
――1期目を振り返って。
目時 任期はコロナ禍だった2022年からの4年間だった。一言でいえば、大変な時代だった。UPUは各国の郵便事業体と連携して独自の情報収集を行っているが、この20年間で、世界の国内通常郵便物の取扱量は2005年の4200億通から昨年の2200億通へと減少し、およそ半分にまで落ち込んだ。ショックな数字だ。残念ながら、今後も減少は止まらないだろう。一方で、EC市場の拡大を背景に、世界の国内小包は50億個から290億個まで大幅に増えた。郵便事業体の役割が情報伝達からECの担い手になっていることは明らかで、郵便物の姿が変化している。この間、世界の郵便事業体の総従業員数は約530万人から約460万人に減った。小包の伸びを考えると人手が足らず、効率化を図るために仕分けの機械化といった新技術の導入が求められている。先進国だけでなく、新興国も技術導入は熱心だ。日本郵便は全国約2万3000カ所の郵便局ネットワークを持っているが、固定の(郵便事業の)インフラとしては世界有数の規模だ。世界全体で見ると(郵便局ネットワークは)計66万カ所になる。ECは有望であり、市場はさらに広がるだろう。あらゆる民間企業との競合が激しくなる中で、郵便事業体は旧来の郵便サービスだけでなく、物流、また、金融や地域の拠点となる公的サービスの機能を提供するために、強固なネットワークを維持し、生かしていかなければならない。
――この4年間ではコロナ禍、ウクライナ情勢、米国の関税措置などグローバル社会に大きな影響を与える多くの出来事があり、現在まで続いている。
目時 コロナ禍に始まり、ウクライナ紛争、パレスチナとイスラエルの関係、EUの「ICS2(輸入管理システム2)」、米国のデミニミス制度撤廃とあった。試練が続いた。ICS2については、欧州各国の郵便事業体から要請を受けてUPUとしてEUへの申し入れも行った。23年には世界税関機構(WCO)の御厨(邦雄)前事務総局長の提案を受けて初の共同カンファレンスを都内で開催した。会議の場でもEUのICS2の問題は話題に上がった。同年、サウジアラビア・リヤドで開催した第4回万国郵便臨時大会議では、長年横ばいだったUPUの24年度予算を前年比1.7%増と積み増すことが決まった。増額は約20年ぶりになる。サイバーセキュリティや災害対策を目的に認められた。
――今年2期目に入った。抱負を。
目時 昨年9月にドバイで開催された第28回万国郵便大会議で国際事務局長に再選した。UPUが次期戦略をつくるうえで、3つの前提があった。ユニバーサルサービスの確保、時代に合わせた柔軟性、地域性を考慮した郵便事業の発展促進だ。郵便事業体の生き残りをかけて、ECなどの需要拡大に伴うニーズに応じて商品ラインアップを見直し、サービスと品質の向上に努めなければならない。
■関税支払い、画期的に変わる
――昨年は米国のデミニミス制度廃止で大きな影響を受けた。
目時 米国は昨年8月29日にデミニミス制度を廃止した。UPUはメンバー国での当該制度廃止に伴う対応の把握に努めているが、(デミニミス制度廃止の施行日まで)準備期間が短く、情報不足で詳細がつかめなかった。米国との対話も継続したが十分な情報が得られず、結果、米国向けの国際郵便は激減した。
――米国側でこれまで免税だった越境ECを中心とする少額貨物に関税などが課されるように変わった。郵便通関の場合、米国で課される関税を差出しの時点で徴収するのは難しい。UPUとして、発地国で顧客から必要な関税を徴収できるシステムを確立し、「UPU DDPソリューション」の提供を始めた。
目時 システム自体は以前から開発していたもので、米国のデミニミス制度廃止に伴い、前倒しで運用を始めた。郵便通関となる物品を含む郵便物(小形包装物、小包、EMS)の関税前払制度は、全世界的にもこれまでなかった。米国のデミニミス制度廃止により、郵便物の関税支払い方式は画期的に変わる。足元では米国向け国際郵便の取扱量は24年度と比較して半減程度まで戻ってきている。UPU DDPソリューションは、現時点で世界の15郵便事業体が利用し、さらに24郵便事業体が利用開始を準備中。今年中にはUPUメンバー国の3分の1程度となる、70郵便事業体ほどまで利用が拡大することを期待している。郵便事業に障壁が立ちはだかり、難しい時代となっている。ただ、各国の制度や規制の政策的な改変は、技術的面で(商品開発などの)新たなヒントにもつながる。各国の郵便事業体にはピンチをチャンスに変え、ビジネスを広げていってほしい。
【略歴】(めとき・まさひこ)東京大文学部卒。1983年4月郵政省(現総務省)入省、2011年4月日本郵便国際事業本部国際事業部長、12年10月UPU・POC議長(16年10月再任)、14年4月日本郵便執行役員、21年4月日本郵便常務執行役員、22年1月に現職に就き、26年1月から2期目を務める。66歳。
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