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エミレーツ・スカイカーゴ 「供給拡大元年」、DWC軸のハブ形成を加速

Daily Cargo  2026年3月19日掲載

 

エミレーツ航空の貨物部門、エミレーツ・スカイカーゴ(以下スカイカーゴ)のバドル・アッバース事業部門上級副社長がこのほど本紙の取材に応じ、2026年を「供給拡大元年」と位置付けた。単なる機材増にとどまらず、貨物機フリートの拡大、日本・東南アジアでの供給強化、デジタルトランスフォーメーション(DX)、越境小口配送需要の取り込み、さらにドバイ・ワールド・セントラル(DWC、アル・マクトゥーム国際空港)を軸にした将来ハブ構想までを一体で前進させる考えだ。市況の不透明感が続く中でも、変化への対応力を武器に成長を取り込みにいく構えで、日本や東南アジアを含む主要市場で追加需要の取り込みに意欲を示した。

本稿は中東情勢の緊張が高まる前に取材・執筆したもの。3月下旬現在、アラブ首長国連邦の空域の一部に制限がかかり、一時的に航空オペレーションに厳格な飛行制限が敷かれている。このため、エミレーツ航空およびスカイカーゴは、旅客便・貨物便ともに運航規模を縮小して対応している。

■年末までにB777F最大10機受領へ

フリート戦略として、26年末までにB777F型機を最大10機受領する見通しを示している。現在の貨物機数はB777F型機が11機、ウェットリースのB747F型機が5機。旅客機の貨物機改造プログラムも開始しており、26年に初号機を運航開始する見通しだ。新造機、貨物改造型を含め、26年末までに少なくとも21機体制とすることを目標に掲げる。「フリート拡大で、より多くの市場に、より多くの供給を提供できるようになる」と期待感を示す(以下、アッバース事業部門上級副社長の発言)。

現在、貨物便では40地点超に乗り入れており、今後10年間で貨物便就航地をさらに20地点増やす方針だ。成長市場に貨物専用機を振り向けることで、需要変化への即応力を高める考え。「東南アジアは重要市場であり、日本も優先市場だ」とし、アジア発着需要の取り込みを強める方針を鮮明にした。

日本市場へのコミットメントも改めて打ち出した。「常に特別な市場だ。成田への貨物便就航は、日本の貿易・製造業への信頼の表れだ。現在、日本向け(の定期ネットワーク)は関西向け週2便および成田向け週1便の貨物便に加え、大阪、羽田、成田の旅客ベリースペースがある。成田貨物便就航で、日本発着の供給基盤は一段と厚みを増した。今後の増機に伴い、需要を見ながら日本向け貨物便の追加投入も検討する」と述べた。

東南アジアでも供給増は続く。旅客便では杭州、深?、ダナン、シェムリアップなどに新規就航した。貨物便では、成田に加え、ハノイやタイ向けの供給を拡大した。「関税やサプライチェーン再編の動きの中で東南アジアの存在感が高まっている。ベトナム、台湾、タイ、インドネシア、日本などで伸びが見られる一方、中国もなお成長している。中国から東南アジアへの単純なシフトというより、複数市場が同時に伸びている」との見方を示した。

スカイカーゴの強みは、貨物機とベリーの輸送力を組み合わせた柔軟な供給調整力にある。「需要増に応じて、異なるトレードレーンに素早く輸送力を移すことができる。この柔軟性こそが当社の優位性になっている」とし、ドバイを経由して世界のほぼ全域を結ぶネットワークを持ち、需要が立ち上がる市場に素早く機材を配置できる強みを強調した。

他社とのインターラインやトラック網も活用し、輸送ネットワークを面的に広げる。「世界各地の航空会社と提携し、必要に応じて他社のベリースペースやメインデッキスペースを利用する一方、自社オンライン拠点やその先の地域ハブ、二次拠点に接続するフィーダー需要を取り込む。欧州、インド、アジアなどではトラック接続も組み合わせ、二次拠点への到達性を高めている。ドバイではDWCとドバイ国際空港(DXB)を陸送による保税転送で結ぶマルチエアポート・ハブを形成しており、これがDWCを拠点とする貨物機ネットワークとDXBを中心とする旅客便ネットワークをまたぐ接続を支えている」と説明した。

中長期では、DWCへの機能集約が大きな成長基盤になる。「DWCは『未来の空港』と位置付けており、30年代前半をめどにオペレーション集約が進む見通しだ」とする。DWCの将来的な貨物取扱能力は1200万トン規模を想定し、航空・海上・陸上を結ぶ複合物流ハブとしてドバイの機能を高める構想だ。機材増とネットワーク拡大を支える受け皿としても注目される。

■デジタル投資も積極化

デジタル投資も同時に進める。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ブロックチェーン、自動化、ロボティクスを活用し、医薬品や生鮮品の状態監視、運航や整備の最適化、サプライチェーンの可視化を強化する。オンライン即時見積もりサービスも導入し、電話やメール中心の対応からの脱却を図る。「貨物の顧客体験は旅客ほどシームレスになっていない。そこを変えたい」とし、スピード、利便性、可視性を高める方向での投資を進める考えを示した。一方で、「物流は人のビジネス」とも語り、技術導入と並行して人材のアップスキリングを進める必要性を訴えた。

商品戦略では、越境ドア・ツー・ドア配送サービス「Emirates Courier Express」を成長分野に据える。eコマース(EC)事業者や中小荷主向けの小口・高頻度輸送を想定し、翌日または2日以内の配送を打ち出す。ベリースペースと貨物機の双方の輸送力を活用する。既に複数市場で展開しており、日本や東南アジアも優先対象と位置付ける。従来の大口航空貨物に加え、越境小口配送の取り込みも進める構えだ。

25年を振り返っては、「非常に好調。26年は追加機材の受領で販売余力が一段と拡大する。とくに日本、東南アジアを含む主要トレードレーンで、増勢を取り込む局面になる」との見立てを示した。

足元では、関税問題や地政学、政治・経済環境の変化が世界の貿易構造を揺さぶる。「供給網再編やEC需要の拡大、地政学的変化は『リスク』ではなく、『レジリエンスを強める機会』ととらえている」と語る。

EC需要については、「関税政策や米国のデミニミス廃止を背景に、需要の重心が太平洋横断路線からアジア―欧州線、アジア―中東線へ移りつつある。追加供給でその需要を取り込んでいきたい」とした。


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