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シンガポール・ケロシン高騰で 日本発FSC大幅引き上げ相次ぐ

Daily Cargo  2026年4月15日掲載

 

中東情勢の緊迫を受けてジェット燃料価格が高騰し、航空各社が日本発の燃油サーチャージ(FSC)の適用額を大幅に引き上げる動きが相次いでいる。足元では、日本発貨物に適用するFSCの主な指標とされるシンガポール・ケロシン価格(シンケロ、1バレル当たり)が200ドルの大台を超え、各社がFSC価格の設定に用いる適用基準(テーブル)の上限を上回る水準で推移している。このため、300ドルや400ドルへと急きょテーブル上限を引き上げる動きも広がっている。指標価格の激しい変動に対応するため、FSCの改訂時期を従来の月1回から月2回に変更する動きも複数社で出てきた。

■シンケロ価格、3月に200ドル超え
米S&Pグローバル(プラッツ)によると、シンケロ価格は2月平均の89.03ドルから3月には195.40ドルへ急騰した。3月4日には231.42ドルの過去最高値を記録し、それまでの最高値だった2022年6月21日の173.74ドルを上回った。確認できる最新データでは、4月2日も231.65ドルと高値圏で推移している。

プラッツの公開情報で確認できる範囲では、シンケロ価格が200ドルを超えたのは今回が初めてだ。ロシア・ウクライナ戦争に伴うロシア産原油の調達制限や、新型コロナウイルス禍明けの国際旅客需要の反動増があった22年時点でも、200ドルには達していなかった。

航空会社のテーブルでは、おおむね200ドルが上限とされてきた。今回は短期間でその上限を超える水準まで価格が上昇したため、テーブル上限を200ドルから300ドル、400ドルなどへ引き上げる措置が相次いでいる。

留意すべきは、シンケロ価格が航空会社の実際の燃料調達価格と必ずしも一致しない点だ。調達ルートは各社で異なるほか、燃油ヘッジの実施状況にも差があるためだ。シンケロはあくまでFSC価格を設定するための指標であり、これに基づいて設定されるFSCが、必ずしも航空会社のコスト増をそのまま吸収するわけではない。

ただ、シンケロに限らず、ジェット燃料価格は歴史的な高騰局面にある。国際航空運送協会(IATA)とプラッツの資料によると、4月3日までの週の世界平均ジェット燃料価格の最新週次値は1バレル209.00ドルで、IATAの過去公表水準を上回る過去最高水準となった。

■想定超えで各社制度見直し
従来想定されていた燃料価格変動の上限を、足元の実勢価格が上回っている。このため各社は、200ドル超に対応する新たな仕組み(タリフ、テーブル)の整備を急いだ格好だ。

世界的なジェット燃料価格の急騰が3月に生じ、シンケロ市場も同時期に高騰したことで、FSC価格の大幅引き上げは4~5月に集中している。特に4月16日以降の価格では、TC1・TC2向けで250円、TC3向けで150円を超える水準を設定する航空会社も複数出ている。

今春に見られたFSCスキーム変更トレンドの特徴は大きく二つある。テーブルの上限を拡大したことと、改訂頻度を月1回から月2回へ増やした航空会社が複数あったことだ。

日本では、①2週間連続してシンケロ価格が変動した場合、②シンケロの1週間平均価格が2週連続で変動した場合―のいずれかに該当した際に、FSC価格を改定するスキームを採用する航空会社が多いとみられる。月1回改訂では2カ月前の平均価格を基にするケースが一般的だ。月2回改訂ではより直近の価格動向を反映しやすくなる。

FSCの改訂頻度が上がれば、燃料価格が高騰した局面だけでなく、下落局面でも、より実勢に近いFSC価格での取引がしやすくなる。

4月中に価格改訂やスキーム変更(月2回改訂への移行)にこぎ着けた航空会社からは、5月適用に間に合ったことに安堵する様子もうかがえる。航空各社にとって燃油費は総コストの2~3割を占める大きな支出で、燃油価格高騰の長期化をにらみ慎重な見方を崩していない。

航空会社からは「足元1週間の動きを見ると、FSC価格はすぐには下がらないだろう」との見方も聞かれる。別の航空会社は「燃油価格だけでなくマーケット動向も運賃変動の要素となるが、航空燃油が高止まりした場合、航空会社としてはFSCだけではコスト上昇分を賄えず、運賃引き上げを迫られる状況も起こりうる」とみる。

供給面にも影響が出始めている。すでにFSCの増加分を転嫁できない路線の縮小を打ち出している旅客航空会社もある。今夏季スケジュールで、路線の選択肢が期初計画通り確保されるかも注目される。


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