マースクCEO インバランス拡大、船隊増強も視野 港湾混雑の長期化懸念
Daily Cargo 2026年8月17日掲載
マースクのヴィンセント・クラークCEOは13日に開催した決算説明会で、コンテナ船マーケットや今後の事業方針について語った。近年はアジアからの輸出が大きく増加する一方、輸入は減少し、往復航のインバランスが拡大していると指摘。「港湾や陸上インフラが逼迫し、混雑が発生している。これらのボトルネックは短期運賃の上昇につながり、今後のマーケットにも影響を及ぼす」と述べた。また、「現在の船隊稼働率は高い水準を維持しており、対応できる限界に近づきつつある。ボトルネックが続き、当社が現在のマーケットポジションを守りたいと考えるのであれば、ある程度の船隊規模の拡大も視野に入れる必要がある」と話した。
往復航のインバランスが拡大することで、空コンテナのポジショニングにも影響が出る。復航で多くの空コンテナを輸出地に返却する必要があるため、ポジショニングコストが増加するほか、ターミナルの取扱量もコンテナ荷動き量の伸びよりも速いペースで増加することになる。この結果、港湾を中心とした陸上インフラのボトルネックが顕在化している。
クラークCEOは、「過去3年間の極東からの荷動き増加率は約25%となったが、同期間中の世界のターミナル容量の増加は10%に留まっている。主要港湾の一部で混雑が深刻化し、グローバルネットワーク全体に影響が及ぶことで、運賃が急激に上昇する。ターミナル整備には時間がかかることを踏まえると、今年5月以降に上昇したような運賃変動は今後数年間で頻繁に起こる可能性がある」と述べた。
マースクはコンテナ物流のインテグレーターを目指す戦略を推進するにあたり、コンテナ船の運航船腹量は大きく増やさない方針を示していた。他方で近年は、往復航インバランスの拡大に伴い荷動きの伸び以上の輸送能力を確保する必要性や、港湾混雑による実効船腹量の減少、中東情勢の悪化に伴う喜望峰経由への迂回定着などにより、サービスの安定性を高めるための追加船の確保が求められている。
マースクは、ハパックロイドとのジェミニ・コーポレーションを通じて、効率的なサービスネットワークの構築と船隊効率の向上、コストの低減を図っている。クラークCEOは、「(今期も)船隊規模の伸びを輸送量の伸びが上回った。船隊の稼働率も約96%と高水準を維持している」と説明する。一方で、さらなる稼働率の向上が難しくなる中、マースクも運航規模を徐々に拡大している。同社の決算資料によると、今年4?6月期の平均運航船腹量は467万3000TEUとなり、2023年通年の平均運航船腹量の416万2000TEUと比べると、50万TEU以上増加した。クラークCEOは、「船隊のリプレースを継続するとともに、現在のマーケットポジションを守るためには、ある程度の拡大を視野に入れた投資も考える必要がある」と述べた。
現在は喜望峰経由への迂回により、実効船腹量が減少している状況だが、マースクは紅海・スエズ運河ルートへの回帰も徐々に進めていく。「引き続き安全保障状況を注視し、乗組員や貨物、船舶の安全を最優先とした上で、段階的にバブ・エル・マンデブ海峡の通航を再開する」と述べた。
ロジスティクス&サービス事業は、1?6月期のEBIT(利払い・税引き前利益)が23%増の3億9000万ドル、4?6月期のEBITが24%増の2億1700万ドルとなり、堅調に推移した。クラークCEOは、「L&S事業の4?6月期における高成長は長年にわたって構築してきた成長基盤の証しだ。現状に満足することなく、持続的に成長させるために引き続き努力していく」と述べた。
ターミナル事業も堅調に推移している。クロアチアのリエカ港を含む新たなターミナルの稼働により、中東の混乱による同地域の取扱量の減少を補った。今年からはベトナム中部のダナン港で、パートナーのHATECOとともに新規ターミナルの開発を開始した。クラークCEOは、「ROIC(投下資本利益率)は14.8%と高い水準を達成しており、同時に成長のための投資を行う。今後の新規投資により、ターミナルの整備段階ではROICに若干の下押し圧力がかかることが予想されるが、既存ターミナルの収益は引き続き高い水準を維持できる見込み」とした。
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