物流よろず相談所

物流業の働き方改革進んでいますか?

2018年11月21日

物流よろず相談所 

 

物流業でも5年後実施される総労働時間規制に対応するために、働き方改革が必要とされています。政府は平成29年6月内閣官房副長官、国土交通副大臣のほか、警察庁交通局長、厚生労働省労働基準局長、環境省地球環境局長らで構成される「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」を設置、長時間労働を是正するための環境を整備することを目的として関連制度の見直しや行動計画の策定などを推し進めてきました。

連絡会議設置の約2か月後に当たる平成29年8月には「トラック・バス・タクシーの働き方改革『直ちに取り組む施策』(案)」という提言がとりまとめられました。自動車運送事業は長時間労働の状況にあるが、その一方で、荷待ち時間、宅配の再配達など、さまざまな効率化の余地が存在しています。この”余地”を生かしてドラスティックに働き方を変革し、長時間労働を是正するため、ひとまず、「トラックのバース予約調整システムの導入促進」や「行政処分の強化」といった63の施策が打ち出しました。

総理、関係閣僚及び有識者から構成される「働き方改革実現会議」において働き方改革実行計画が策定され、長時間労働の是正を図る観点から、時間外労働の罰則付き上限規制が導入されることになりました。トラック運送業でも、改正法施行後の5年後に、所定外労働時間年960時間(月間80時間)の上限規制が適用されます。

これを踏まえて平成30年5月30日に策定されたのが、「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画~『運び方改革』と安全・安心・安定(3A)の職業運転者の実現~(案)」と銘打たれた、より詳細な行動計画です。「直ちに取り組む施策」に25施策を追加し、「労働生産性の向上」や「多様な人材の確保・育成」、「取引環境の適性化」に向けた取り組みを強化。いわゆる3K(きつい、汚い、危険)労働から脱却し、3A(安全・安心・安定)労働の実現を目指す動きを加速させていく考えです。

トラック運送業の平均労働時間は、全職業平均と比較して1~2割長く、所定外労働時間も2~3倍の長さであり、週労働時間は60時間を超える者が約4割となっています。一方で労働賃金は全職業平均と比べ1割以上安く、結果的に有効求人倍率は約2倍、平均年齢も3歳以上高くなっています。労働者不足する一方で女性の就業は全職業平均の1割と低くなっています。

国交省が打ち出す「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」施策のなかで、特に注目したいのが、「働きやすい環境の整備」です。

「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方の検討」「女性トラックドライバー等に関する情報を発信」「人材の確保に向けた実態把握・魅力の発信」といった施策がプラスされ、女性を中心に多様な人材を確保しようというねらいがより色濃く見て取れるようになりました。運転者不足が深刻化するなかで輸送能力を確保しながら長時間労働の是正を進めるためには、必要な数の運転者をしっかりと確保することが欠かせません。それには女性の活用が有効であるとの考えに基づくものです。このため政府は、現状ではわずか2%程度にすぎない女性運転者の増加を図るとともに、若者の就業を促し、高齢になっても働き続けられる環境を整えなければならないと考えているといいます。

豊橋に本社を置く株式会社マイシンでは、女性雇用を積極化、女性が働ける環境を整備することで、ドライバーの3割にあたる30名を超える女性ドライバーが活躍注目を集めています。労働環境は賃金だけでなく働きがいのある職場、コミュニケーションが円滑な職場への改善がポイントです。これまで何度も言ってきたポイントです。もう一度働き方改革への準備を見直していただきたいと願います。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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