物流なんでも相談所

コロナ不況に立ち向かう

2020年9月16日

物流なんでも相談所 Vol.12

 

WITHコロナの厳しい時代、物流業者は何が重要となってくるのでしょうか。昨年の物流量、食料品を除く生産材関連は前年比10%以上もダウン。また建設資材特にセメント、外壁材に至っては4割の落ち込みを記録。この様な厳しいデータを見ても大して驚かなくなった、こう感じる方も多いのではないでしょうか。

多くの物流企業がコロナの影響で消費減退が続き、前年実績を大きく下回っています。下期を迎えても国内景気は相変わらず寒々しいままでです、回復の兆しすら見出すことが難しいような気もします。物流業者の荷主となる企業が概ね赤字の上期決算を示す中で、物流業者が経済低迷の影響で貨物量の減少などそのあおりを真っ向から受けるのは当然のことでしょう。企業側も依然としてコストダウンに余念がなく、最近では“経営統合に乗り出す”とか、“工場を閉鎖し、生産拠点を海外にシフトする”など企業側もコスト削減にあらゆる手段を講じています。そして、コストダウンの標的にされるのが残念なことに“物流費”なのです。我々物流業者にしてみれば、“何故物流費を?”“製品は運ばなければ商品にならないのに?”と言う疑問がどうしても湧いてくるのですが、これも仕方ないことだと、考えるほかないでしょう。

ただ忘れないでいただきたい。荷主である企業は企業再編の波に飲まれても“運ぶ荷物”が消えることはありえないのです。荷主側の物流業者見直しもある意味チャンスだと考えることが可能ではないでしょうか。ふるいにかけられた時に、生き残れる業者であればよい。ポイントは、相手に“おや?”と思わせる付加価値です。仕事は荷主からいただくものだから、荷主は大切にしなければならない、―当然のことである。そのためなら、“Gマーク”も“グリーン経営認証”も獲得しよう、車載機器もドライブレコーダー搭載しよう、物流業者は必死で対応してきたという歴史があります。ただ荷主に意識が行きすぎるあまり、つい二の次になってしまうのが、“着荷主”の存在ではないでしょうか。実はこの“着荷主の評価”というのが物流業者にとって第2の生命線とも言えるほど重要なのです。つまり先程の“ふるいにかかる、付加価値”の一つなのです。着荷主の評価というものは、良いことも悪いこともいずれ必ず荷主側へ伝わる事を、皆様よくご存知でしょう。

ということは、この評価の良し悪しが、荷主にいかなる印象を与えているかもおわかりのはず。ただ、意外と見過ごしてしまいがちなのが、荷主の要求に応えるために必要な経費と着荷主の要求に応えるための経費の差です。後者に必要なお金は限りなく0(ゼロ)に近い、ということではないでしょうか。もちろん、今の時代背景から考えても、荷主の要求の有無に関わらず、“Gマーク”も“デジタコ”も大切です。しかし、助成はされても、そう簡単に行くものではありません。

着荷主の評価というのは、これに比べるとドライバーや作業員の皆様に少し頑張っていただくだけで、黄金の武器となり得ます。「着荷主が待つ荷物を安全に、大切に、笑顔と共に確実に手渡す」このセオリーに基づいて仕事をしていけば、良い評判が必ず大きな付加価値につながることになります。これを決定するのは、当たり前すぎてついつい後回しになってしまいがちなあいさつやことば遣いなどマナー教育です。トラックや機械ではなく、相手が“人”であるだけに、これもまたある意味苦労を伴う作業ですが、仕事量が少ない今だからこそ、できることかもしれません。筆者の回るにもコスト削減の一環で教育をやめてしまう企業と、今こそ教育が大事だと力を入れる企業があります。危機感を持つ社員が多いいまこそ教育のチャンスでもあります。社員のモチベーションアップにもつながるような工夫も織り交ぜながらのマナー教育、―お薦めいたします。まずは、自身が見本となる挨拶の徹底をはかりたいものですね。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

無料診断、お問い合わせフォームへ