徒然日記

やがて「サクラの季節」

2021年3月3日

『徒然日記』 

 

前の号で「JR上野駅公園口」の話をした際に「上野公園の櫻」について触れましたが、終戦直後の話しです。地元の上野公園に出掛けて、桜のつぼみの枝を切ってきて、我が家の花瓶に挿し、蕾みが膨らんで花になってゆく様を楽しんでいました。すさんだ時代での数少ない心和むひとときでした。同じような思いの人が大勢居たと思います。あの時代、手が届くところの桜の枝は全て切り取られていました。今では、手の届くところにまで垂れ下がった枝に桜が咲き誇っていて、鼻を近づけて花の香をかいだりしています。「昔はごめんね」とそっとつぶやきながら。

桜にまつわる話は沢山ありますので、話を進めます。

「梅は咲いたか サクラは まだかいな♪」という、明治の初めに流行った俗曲「しょんがえ節」から採り入れられた「江戸端唄」という「お座敷唄」があります。まもなく各地の「桜開花予想」が発表されると思いますが、我々でも桜の開花日を知ることが出来ると聞きました。

すでに1月あまりが経過してしまいましたが、「2月1日から数えて、以降の最高気温を足し算していって累計温度が<600度>になると、サクラが開花する。」という「600度の法則」があるそうです。温暖化の影響もあるので、最近は「620度」あたりとなっているようです。

最高気温はネットで調べても分かりますので、「今年の桜開花日が累計何度の日であった」と計算してみたりすれば、少しは「気象予報士気分」に浸れるのではないでしょうか。

因みに2月28日までの「累計気温」は「東京」389.1度、「横浜」382.7度でした。

ところでこの<600度~620度>になるあたりで、気象庁の担当官が、真剣な顔をして、靖国神社の桜の木を眺めている光景を、ニュースで良く見かけますが、気象庁は北海道から沖縄ま

で、全国各地での桜の開花宣言を行っています。その測定のための「標本木」が、都道府県ごとにあるそうですが、沖縄や北海道などのように広いところや、離島があるところは「標本木」が数カ所あり、合計すると58本になると言うことです。
東京の「靖国神社」は有名ですが、私の住んでいる神奈川県は「横浜市元町公園」、埼玉県は「熊谷市荒川桜堤」、大阪府は「大阪城西の丸公園」。変ったところで熊本県の「熊本市西区の古町小学校」などがありますが、多くは「各地の気象台」となっています。

因みに「開花発表は5~6輪」だそうですが、因って来たる所以は分かりません。

その標準木ですが、「ソメイヨシノ」がほとんどですが、北海道は北部では「エゾヤマザクラ」、沖縄は「カンヒザクラ」となっています。

その「ソメイヨシノ(染井吉野)」は、【江戸時代末期から明治初期に、染井村(現在の東京都豊島区駒込・巣鴨付近)に集落を作っていた造園師や植木職人達によって育成された。初め、サクラの名所として古来名高く、西行法師の和歌にも度々詠まれた大和の吉野山(奈良県山岳部)にちなんで、「吉野」「吉野桜」として売られ広まったが、「藤野寄命による 上野公園のサクラの調査」によって、 ヤマザクラとは異なる種のサクラであることが分かり(1900年)、この名称では吉野山に多いヤマザクラと混同される恐れがあった。このため、『日本園芸雑誌』において染井村の名を取り「染井吉野」と命名したという】(Wikipedia)とありました。

「百人一首」(歌番号33番)にある【ひさかたの/光のどけき/春の日に/しづ心なく/花の散るらむ(紀友則)古今集】は、私の好きな一首です。

百人一首には、いわゆる「決まり字」「む・す・め・ふ・さ・ほ・せ」の1枚札が7枚がありますが、「ひさかた」は3枚札で<ひ>は3枚ありますので、「ひさ」まで読まないと、取りに行けません。この一首が好きな方が沢山いらっしゃり、しばしば「取り合い」になります。

話が変ります。以前この欄で「中学時代に、予科練育ちの先生から『軍歌』を教えられた」と書きましたが、覚えた中の1曲に「歩兵の本領」(1911年発表)という歌がありました。「万朶(ばんだ)の桜か襟の色/花は吉野に嵐吹く/(以下略)」です。「万朶」は「満開で、枝もたわわに垂れ下がった桜」をイメージしていると思いますが、「軍歌の善し悪し」は置いておき、その歌詞と曲が好きで、今でもしっかりと覚えています。同じメロディーで「メーデー歌」として、「聞け万国の労働者/とどろき渡るメーデーの/(以下略)」と歌われていますので、「あァ、あの曲ね!」と思い浮かべる方も多いと思います。こちらは1922年の第3回メーデーで発表されたそうです。

さらに次の話に移ります。「世の中は三日見ぬ間の桜かな」があります。「桜の花はあっという間に散ってしまうことを、世の中の移り変わりに掛けて言った言葉」と、私は理解していましたが、「見ないうちに桜が散ってしまう」のではなくて、江戸中期の俳人、大島蓼太の句「世の中は三日見ぬ間に桜かな」が本来の句で、この句の意味するところとしては「三日外に出ないでいたら、桜の花が咲き揃っている(まさに「万朶の桜」状態)」という意味なのだそうです。

国語の時間になりますが、「見ぬ間 “の”と見ぬ間“に”の『の』と『に』では、正反対の意味になる」と言うことになります。「なるほど!」ですが、皆さんは「どちらが良い」とお思いでしょうか?

そのようなことで、桜のあれこれを思い浮かべつつ、「620度の開花日」を予測して見ましょう。

著者プロフィール

小泉武衡

職歴
 元 寺田倉庫株式会社 取締役


1964年より「物流業」に携わり、変化する“各時代の物流”を体得するとともに、新たな取り組みとして「トランクルーム」や「トータル・リファー・システム(品質優先ワイン取扱い)」事業に力を入れてきました。さらに、営業・企画・渉外・広報棟ほか、倉庫スペースを利用した「イベント事業責任者」などを歴任し、旧施設の新たな活用、地域開発、水辺周辺の活性化に尽力してまいりました。

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