物流なんでも相談所

現場力の強化によるサービスレベル向上

2021年3月10日

物流なんでも相談所 Vol.24

 

物流業であり続けるため2021年にクリアしていただきたいのが、次の項目です。

3PL事業の躍進に活路→“輸配送からセンター・ITまで”、活用は常識化しつつあります。現場力に基づく物流品質の向上→実物流業者が管理することで、輸配送レベルと在庫管理効率化が可能(営業強化にもつながります)。③カギとなる人の育成(指導体制は今すぐ見直し、PDCA(研修)の継続を確立することが必要です。)④社員全員の間で、目標管理制度を確立すること。実物流業者のネットワーク活用で、広域化と効率化ができる体制を整えること(コスト削減と品質向上が同時に可能なことは、実際のデータで証明済み)。

いずれにせよ、これらを実践することは理想に近づく第一歩にしか過ぎません。最終的には今以上の利益を生むことが目的であるが、いきなり“売ること”や“技術”に目を向けても決して成功しないことを、物流業界に限らず多くの経営者達はすでに知っているはずです。それではどうすれば良いかというジレンマの果てに登場したのが、メーカにおけるSCMかもしれません。今や多くの企業が壁を越え重要視・導入していますが、20年前と比べると随分変化しているようです。かつて物流の効率化とサービスレベルの向上が主目的であったSCMも今では各企業によってかなり自由にその形態を変えています。生産や営業、また他の協力会社なども巻き込みその先のS&OP(Sales and Operation Planning、販売計画と製造・物流の統合)へと発展しつつあります。

メーカ企業のこのような傾向は我々物流会社にとっても、営業の幅を広げる意味で前向きに受けとめなくてはいけません。販売・生産そして物流は言ってみればタテ・ヨコの壁が取り払われ最適化に向かってスピードとコストがさらに削減されてゆくでしょう。物流企業に求められるオファーはもはや待つだけでは手遅れです。情報は即キャッチし、取捨選択の上経営に取り入れなければいけません。とにかくスピードが絶対必要なのです。これには経営者の的確な判断力に加え、会社全体の理解と行動力が不可欠です。社長・幹部が自ら営業を行ない、荷を運ぶわけではありません。事故が起きた時、実際に働いてくれる現場のスタッフにまで、常日頃の情報やトップの考え、そして進む方向を明らかにしておかねばなりません。そして何より大切なのは一人一人の社員にはっきりとした責任感を持たせることです。ドライバーや現場で働くひとりひとりが会社を支え、動かしている存在であり、その一つが欠けただけで、支障が出てくることを、わかっていただくことが大事です。

ここで、物流業者が新しい時代を勝ち抜くにはどうすれば良いかを検証してみたい。これまでのトレンドとして、物流子会社や大手事業者が利用運送を中心として利益を上げるのが物流業の常でした。しかしバブル経済もはじけ、リーマンショックや欧州経済危機、さらに国内における東日本大震災、台風による自然災害そしてコロナウィルス拡大などによる景気低迷などを経て、これからは着荷主に信頼される高い物流サービスレベルを持つ事業者が望まれる時代となっていくでしょう。利用運送の時代から、物を持つ3PLとなり、信頼のおける物流企業だけが勝ち残る荷主の物流アウトソーシングの時代となることは間違いないと考えられます。当然、顧客である荷主も物流品質とサービスの優れた物流業者を選択することになります。大手でも中小事業者でも関係なく、現場力のある物流業者にはビジネスチャンスが来た、とも言えるでしょう。

しかし物流業の経営環境は悪化の一途でもあります。行政側の施策として、規制緩和による自由競争を推進する一方で法令を遵守できない事業者へは容赦ない罰則が強化され、許可の取り消しが行なわれています。これまで適当であった物流業者の倫理観も、考え方を変えなくてはならない時にきています。コンプライアンスを守れない事業者には未来はないと判断するべきでしょう。物流業者として、法令順守や業務管理能力のない者には次の時代を乗り越える資格がないとする国の方針が示されているのです。罰則の強化だけでなく、燃料費・車両購入費・タイヤ費など経費の高騰、若年労働者の雇用が困難になるなど今後の物流業の行く末は厳しいものがあるのだ。平成2年の規制緩和時点で4万社あまりから6万3千社(55%増)、トラック台数も100万台から147万台(38%増)にまで増え、過当競争現象が起きています。全日本トラック協会が発表する毎年の営業利益を見ても、平均で1%にも満たないのが事実です。

しかし、この様な競争の中でも成長を続ける物流専業者もいます。今や大手事業者と肩を並べる程大きな企業となったハマキョウレックスがその代表でしょう。ハマキョウレックスは、創業者である大須賀正孝会長が一代で起こした会社、その会社の成長を支えたものとして、日々収支と日替わり班長制度が知られています。しかし、そのハマキョウレックスの強さは、現場レベルを引き上げた品質にあるというのは衆知の事実でもあります。その強さは、人材だけでなく、センター設計から運用にいたるまで、プロフェッショナルが少ないコストでセンターを効率的に運営できるようにしているというノウハウにあるからです。これは何もハマキョウレックスだけに限られたことではない。多くの物流企業で収益をあげている企業には共通点があります。

荷主の物流アウトソーシング受け皿となっている物流センターで、このようなノウハウを活用するケースが目立っています。センターで収益を上げている物流企業には、その利益構造を生み出すためのノウハウを有していることはもちろんですが、その他にいくつかの共通点もあります。それは、効率的なシステムと設備をうまく活用していることです。設備を投入する時は、費用対効果が図れることが、導入のポイントであることは間違いありません。これまで、多くの物流施設で導入されてきたシステム機器はそれまで構築してきた事例やノウハウによってその精度が高まっています。優れたノウハウとサービス品質も持つ、機器を活用することは物流企業にとって重要なことです。そのようなメーカ機器をうまく活用しているのが、優良な物流企業の共通点とも言えるでしょう。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

無料診断、お問い合わせフォームへ