物流なんでも相談所

輸送時の事故をなくそう

2022年10月26日

物流なんでも相談所 Vol.51

 

物流業界は、これから1年で最も忙しい冬の繁忙期に突入します。1件の事故によるダメージが普段にも増して大きく響くこの時期、事前の準備で予防できる事故は全て防ぎたいものです。しかし多忙であるがゆえのうっかりミスなど、不注意で起こしてしまう事故も少なくありません。これから年末に向かって繁忙期を迎える物流業に事故はあってはならないこと。今回は、輸送中の事故削減をテーマにレポートさせていただきます。

輸送時、労働災害に大きくかかわっているヒューマンエラー。人間の注意力には限界があり、作業に集中すればするほど安全には注意が向かなくなります。最も危険度合が高いとも言われる重量物や危険物輸送時は注意もより必要です。人力で締め固め作業をしている人にはローラーの警報音は耳に入らない、など移送作業中には注意を喚起することが重要です。

ヒューマンエラーはさまざまな原因で生まれ、危険軽視や近道・省略行動本能は、その1つです。他に12の原因(①無知、②未経験、③不慣れ④不注意⑤連絡不足⑥集団欠陥⑦場面行動本能⑧パニック⑨錯覚⑩高齢者の心身機能低下⑪疲労等⑫単調作業による意識低下)があり、ヒューマンエラー対策は事故防止の要とも言えます。不注意については、当たり前ではないかと思われるでしょうが、どれだけ戒めても不注意による事故はなくならないのが現実です。冒頭にも述べましたがその理由は、人間は1つのことに集中すると他のことには不注意になるからです。言い換えると、他のことに不注意にならないと1つのことに集中できないのです。作業に集中すればするほど、安全には注意が向かなくなってしまいます。このように人間の注意力には限界があることを何度も肝に銘じておく必要があります。

輸送中に起きる破損事故の原因として、最も多いのは「落下」による事故です。他にも「振動」「フォーク付きあて」「転倒」「荷崩れ」「水濡れ(汚れ、カビ、錆び)」「衝突」などがありますが、いずれも荷物が衝撃を受ける事で破損してしまう事が多いようです。輸送中の破損事故を防ぐためには、まず荷物が衝撃を受けない様に対策を講じていく事が必要だと言えます。

次に商品移送中の事故が発生する場所や状況なども確認しておく必要がありますが、以前も取り上げさせていただいたように、やはり積み込みと積み下ろし作業時に起きる事が多くなっています。他にも、積み下ろし時、輸送中、荷役中など人の手が介在したタイミングで起きてしまうものなので、作業者に注意や警告をしっかりしておくことは絶対必要です。荷物の破損で最も多いのは箱の潰れやへこみ、擦れといった外装破損。内部の製品や商品にまで影響が及ぶ前に、箱に注意喚起などの目立つ印を付けるなど、対策は必要だと言えるでしょう。輸送に関する事故は責任の所在が物流企業になります。従って現在物流企業側でも破損トラブルを未然に防ぐため、「衝撃検知シール」や「衝撃レコーダー」を導入する等して対策を講じています。(梱包強度を強化する、取扱注意を促す、作業員に対する教育や安全研修なども実施)。

事故の発生要因や責任を明確化する上で活用したいのが「衝撃探知シール」。荷物が手元を離れた後に何かが原因で破損したけれど、それが輸送中なのか受取先の取扱いによるものなのかわからない場合、証明するものがなければ責任の所在を物流業者が追及される事になります。このような場合に衝撃検知シールを取り入れる事により、作業者に対する警告・注意喚起が直接できる様にもなるだけでなく、衝撃が発生した時点で赤変するので輸送中の事故でない場合は証拠を残す事ができます。衝撃検知シールが貼ってある荷物とそうでない荷物に対する荷扱いはかなり違ってくるのは当然のこと。事故や取扱不備などで発生するコストは相当なものですから、ここはしっかり対策をしておくべきです。乱暴に荷物を扱われて破損する事を防ぎ、良い意味で作業員にプレッシャーをかける事で安全に輸送ができる様になるでしょう。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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