物流なんでも相談所

年末に向かい事故をなくす①

2022年11月2日

物流なんでも相談所 Vol.52

 

慌ただしく過ぎた夏、秋の気配もあまりないまま物流企業にとって繁忙期となる年末に近づいています。国内を見ると円安の影響もあって輸出を中心とする企業での業績が良くなる一方で、国内多くの企業が原材料高騰を受け、利益を減少するという事態に。その影響をもろに受ける物流企業では、燃料費の高騰も相まって業績が悪化しています。

そのような中で迎える年末に向かい今一度、会社の中で整理しておくべきことはないでしょうか?物流業は当たり前のことを当たり前にできること、すなわち安全が第一で、安全は全てに優先する、今一度この時期に事故防止を徹底する必要があると思います。単なる安全大会を開催するのでなく、自社の事故事例やヒヤリハットなどをもとに社員全員で事故防止をどのように進めればよいかを話し合い、行動目標を設定することが大事です。与えられたものではなく、人たちで決めた行動目標であるからこそ、その実行も結果も大きな成果を生むことにつながります。安全をベースとする物流業、今一度お御社でも取り組んでいただきたいと思います。

物流業界は、これから1年で最も忙しい冬の繁忙期に突入します。1件の事故によるダメージが普段にも増して大きく響くこの時期、事前の準備で予防できる事故は全て防ぎたいものです。しかし多忙であるがゆえのうっかりミスなど、不注意で起こしてしまう事故も少なくありません。これから年末に向かって繁忙期を迎える物流業に事故はあってはならないこと。今回は、輸送中の事故削減をテーマにお話しさせていただきます。

輸送時、労働災害に大きく関わっているヒューマンエラー。人間の注意力には限界があり、作業に集中すればするほど安全には注意が向かなくなります最も危険度合が高いと言われている危険物輸送や重量物などの輸送時はより注意も必要です。例えば、ローラーを荷台から降ろす際、人力で締め固め作業をしている人にはローラーの警報音は耳に入らないことも考えられます、鉄鋼などクレーンを使って積降ろしを行なう場合にも、作業に夢中になって注意を呼びかける音など確認されにくい、など移送作業中は特に注意喚起することが重要です。ヒューマンエラーは様々な原因で生まれ、危険軽視や近道・省略行動本能は、その一つだと言えるでしょう。他に12の原因(①無知、②未経験、③不慣れ、④不注意、⑤連絡不足、⑥集団欠陥、⑦場面行動本能、⑧パニック、⑨錯覚、⑩高齢者の心身機能低下、⑪疲労等、⑫単調作業による意識低下)があり、ヒューマンネラー対策は事故防止の要とも言えます。

不注意については、当たり前ではないかと思われるでしょうが、どれだけ戒めても不注意による事故はなくならないのが現実です。それは、人間は機械ではありません、ミスや失敗を犯すものだからとも言えるかもしれません。人間は一つのことに集中すると他のことには不注意になりがちです。言い換えると、他のことに不注意にならないと一つのことに集中できないのです。作業に集中すればするほど、安全には注意が向かなくなってしまいます。このように人間の注意力には限界があることを常に肝に銘じておくことが必要です。

輸送中に起きる破損事故の原因として、最も多いのは「落下」による事故です。他にも「振動」「フォーク付きあて」「転倒」「荷崩れ」「水濡れ(汚れ、カビ、錆び)」「衝突」などがありますが、いずれも荷物が衝撃を受ける事で破損してしまう事が多いようです。輸送中の破損事故を防ぐためには、まず荷物が衝撃を受けない様に対策を講じていく事が必要だと言えます。次号でもこの続きをのべさせていただきたいと思います。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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