物流なんでも相談所

事故防止は社員の自覚で達成する

2022年12月21日

物流なんでも相談所 Vol.54


物流現場は課題解決の連続で、そのためには目標と標準が明確であることが重要と認識しなければならないことを説明。課題発見と解決には社員のモチベーションを維持することが重要です。経営者・幹部の皆様に理解していただきたいのが、いかにして社員にやる気を持たせるかということです。人間が本来持つ自律性を確保させ、目的意識と目標を明確にすることで、自覚を持たせることがそのポイントです。

ロシアのウクライナ侵攻、コロナウィルスの世界的蔓延、止まらない円安、その影響を物価高など時代の移り変わりが激しくなっています。このような大きな変化の時には、必ず原点に帰ることが重要であると言われています。物流業の原点に戻るならば、物流業はまず安全・確実に荷主の荷物を届けるということがこの原点でしょう。しかし、事故の件数を見ても、昨年度度死亡事故における割合を見ても、営業トラックによる事故は減少していません。これは何故でしょうか?その答えは、なすべきことがいつの間にかおろそかになっているということに他なりません。法令でも定められている通り、まず点呼の徹底が十分でないことに事故の要因が隠されていると言っても過言ではないでしょう。事故の起こる業者には、この点呼が適当に済まされていることが少なくはないと考えられます。事故が起こり、運輸局から罰則が行われる際には、運転者に対する指導監督違反・点呼の不徹底が必ずと言っていいほど、その要因として記載されています。まず基本として点呼の完全実施ができているか、その点呼の内容がどうなっているか、見直してみましょう。次に車両の点検です。今の車両はコンピュータ制御で確かに簡単に修理できるという白物ではありませんが、それでもタイヤの空気圧や傷、オイルの量、各ランプ、ブレーキ、ファンベルトなど運転前の車両チェックを怠ると、大きな事故につながることも考えられます。この運転前車両点検が実施されておらず、運行後に不具合や故障で動けなくなっているトラックを見かけます。この運転前車両点検もう一度実施されているかどうかを確かめて見てください。この基本が徹底された上で、安全会議の定期的な実施、ヒヤリハットマップを作成し、注意を促すことも重要です。会社から言われて、この安全会議を実施するのではなく、ヒヤリハットマップを全員で作成し、事故を予防することはプロドライバーとして当たり前のことではないでしょうか。ドライバーが主体となって、自分達安全を守り続けてこそ、事故防止の効果が出てきます。

事故を防ぐには、日頃からの防止活動が重要です。最近は、これに加えて商品事故も増えており、その弁済金額は損害金額の半分を占めるほど。荷主から見ると、交通事故も商品事故も同じ事故。ただこの商品事故こそドライバーの心がけひとつで、被害は最小限に抑えられるはずです。いずれにしてもカギはやはり“ドライバーの自覚”にあります。では、どうすればよいのか?トラックが引き起こす事故の恐ろしさや損害など、「安全大会」や毎日の「朝礼」、そして定期的に行う事故事例の「映像と討議」-など、ありとあらゆる方法を同時並行して行い続けることこそ、効果を生み出すと考えられます。そしてもうひとつ大切なことは、これら安全に関する啓発活動を、ドライバーが主体のなって行なってもらうことです。ドライバー自身の活動でなければ本物の“自覚”にはなりません。事故防止策などを組織の中で最も現場を知っているはずのドライバーに作ってもらうのが、一番正しいやり方のはずです。これを逆に経営者や幹部が吸い上げて会社全体の対策としてまとめ上げるのが理想でしょう。ドライバーのやる気も、ますます出てくるのではないでしょうか。

全体の話もさることながら、事故防止のための確実な一歩として、まず始業点検は必ず行なわなければなりません。オイル交換や、タイヤの空気圧、ボルトの緩みなど自分でも出来る点検は絶対に怠ってはならないものです。冬であればチェーンの装着もドライバー自身でできるようにならなければなりません。またドライバーの健康管理もとても大切です。コロナウィルスも猛威を奮う中で、うがいやマスクの着用はもちろん適切な睡眠と食事休憩など、会社全体で推奨して行くことも忘れてはいけません。先ほど述べましたが運転前の点呼も重要です。規則だから実施する以外に実は大きな意味を持つのがこの点呼。人と人が向きあって行うこの点呼で心の健康状態もわかるもの。事故を未然に防ぐことのできる大切なステップです。絶対手を抜いたり、省いてはなりません。これに加えて安全5原則の徹底、①速度超過をしない、②確実な車間距離を保つ、③カーブでの減速、④一時停止・徐行の履行、⑤交差点での注視、そして何よりも飲酒運転の根絶-、以上を守り抜くことで目指すは事故ゼロとなってくるはずです。事故が起きて、得るものなど何もありません。莫大な出費、信頼の喪失、そして人の悲しみや死など全てが痛みを伴うものばかり。年末に向かっての事故防止対策、見直していただきたいものですね。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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