物流なんでも相談所

残念な人を作らない(1)

2023年2月22日

物流なんでも相談所 Vol.58


これまで何度となく人材について述べてきました。どの様な企業にも能力や経験をもちながらそれを生かしきれていない「惜しい人=残念な人」が存在しています。残念な人を生み出してしまう昨今の経営環境について検討し、その上で残念な人に陥らないためのプライオリティの考え方を説明したいと思います。

「残念な人」とは、ちゃんと学校を出て入社試験もクリアし、役に立つ資格も持っている。またやる気も十分にあり夜遅くまで懸命に働いているのに残念ながら結果が出ない、そんな人達のことを言います。「残念な人」≒「もったいない人」と言うことができるでしょう。それを解決するには、仕事におけるプライオリティを明確にすることが必要です。仕事に正しいプライオリティをつけることで能力×やる気が生かされ、成果に結びつけられることができるようになります。

例えば、トラックは「ボタンを押すとエンジンがかかる」のが当たり前です。しかし、かかるのが当たり前となって今日工夫をすることがなくなってしまいました。かつてトラックのエンジンをかけるとき、寒い日はエンジンの下を火鉢であたためたり、ヒーターの加減を調整したりしてエンジンをかけなくてはなりませんでした。当然プロドライバーはエンジンについても一通りの知識と経験が必要で工夫しながら運転を行っていました。今やエンジンはスイッチを入れれば必ずかかります。本当に良いのでしょうか?これを仕事にあてはめると、言われたことをこなすことが上手な人が良い、とされており、できない人を切りすててきました。できない人をどうやって育てるか、考えない幹部と経営者に陥っていたのです。あまりにも仕事においてもシステム化が進んだために考えることがおろそかになっていることが残念な人が増えている要因だと考えられます。今後変化の多い時代に勝ち抜くには仕事本来の目的を理解し、工夫することが必要です。幹部にとって部下に対してこれまで以上に仕事の目的、意味を伝えていくことが必要となっているのです。そうやって自分で工夫改善する人を生み出す社風が生まれれば、残念な人は、出来る人に変身し、企業の成長に貢献してくれるはずです。

これを現場で考えてみましょう。①仕事のやり方が変わったり、新たなシステムを導入すると使い方、入力など「使えないシステム」となる陰に「使えない人間」が生まれてしまいます。今後DX(デジタルトランスフォーメーション)時代にはさらにIT化が進むことから対応できない人も派生することが考えられます。

②仕事の仕組みがシステム化すると、思考停止となるスタッフが増える、便利になると、残念な人が増えることになります 。上司や周りに頼りっぱなしで考えて工夫しようと思わない人も出てくることになります。③物流現場においては、IT機器の発達や自動化、AI活用、ロボティクスなどの発達で単純な仕事は機械に任せることが考えられます。情報化システムの充実化と共に「作り出す仕事」と「こなす仕事」に二極化、「こなす仕事」をやる人の割合が増えてしまうことになります。

このようなことから管理者はきちん仕事の目的を理解させることができるマネージャーが望まれるようになります。マネージャーにとっては仕事の目的、意味を伝える力が今まで以上に重要となってくるのです。機械化や人手のいいところ取りをして、生産性を高めることが必要です。仕事内容と流れ、入力されたデータのその後の利用、チェックリストの意味等しつこく話をすることで、部下に理解させ、自発的な動きを生み出すことが求められます。今の自分から脱却し、出来る人を目指していただきたいと思います。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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