労務管理ヴィッセンシャフト

ワーク・エンゲージメント向上が会社を強くする

2024年2月21日

労務管理ヴィッセンシャフト vol.20


◆ワーク・エンゲージメントとは何か

新年を迎え、早くも一ヶ月経ちましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?今月のメルマガは会社のワーク・エンゲージメントについてふれたいと思います。最初に、会社におけるエンゲージメントは何か?についてです。 会社におけるエンゲージメントは、従業員が会社に対する愛着や思い入れを表す言葉です。さらに一歩踏み込んだ意味として、個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係を指します。

エンゲージメントが高いと言われている会社では、一般的には従業員一人ひとりが企業や組織を信頼し、そのことで全体の成長に向けて意欲的に取り込む傾向にあります。そのことで組織が強まり、業績の向上が期待できます。いわゆるエンゲージメントはロイヤリティや従業員満足度とも近い意味ではありますが、単にそれらと同じではなく、双方の関連で結びつきを強めていくという点が大きく影響します。

昨今エンゲージメントが人事労務において、非常に注目されております。 人材の流動化、人手不足、働き方の多様化、男女平等グローバルシップ等、エンゲージメントを重要な経営戦略として位置付ける企業も増えております。

エンゲージメントが高い組織は生産性が高いという統計もあり、人材不足や人材流出が課題となっている物流事業者においても、重要なテーマとなっております。

昨今の物流業界では、2024年問題がクローズアップされ、ベースアップや賞与の額など所得面に焦点が当てられておりますが、従業員の働きがいや満足度などに着目してみるのも 一つの手ではないでしょうか?

エンゲージメントが会社組織に良好な影響をもたらすエビデンスとして、リクルートマネジメントソリューションズの実態調査が挙げられます。同社は従業員規模300名以上の企業に対し、20~40代の会社員624名を対象に「ワーク・エンゲージメントに関する実態調査」を実施し、「高いワーク・エンゲージメントは、個人と組織の両方に良い影響を与える」こと等の実態について公表しました。詳細は下記をご参照いただきたいのですが、経営者や人事労務担当者にとって、非常に興味深いデータが公開されておりますので、ぜひご一読下さい。

https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000842/?theme=workplace

筆者が特に注目したことの一つは、「働き方改革とワーク・エンゲージメントが高い相関関係にある」という点についてです。 例えば、仕事に使う時間が減った、あるいは生産性が上がり、業務負荷の軽減により生産性の高い業務に使う時間が増えた場合、ワーク・エンゲージメントが大きく向上していることです。

また、その他の取り組みとして人材育成、キャリア支援、職場の学び合い、経営者とのコミュニケーションが、仕事のやりがいや意欲を高める要因になっていることも分かります。

◆ワーク・エンゲージメント向上のための、会社の施策について

ワーク・エンゲージメント向上のための会社ができる具体的な施策についてですが、その一つに挙げられるのは、多様な働き方を選べるルールづくりです。具体的にはテレワークやサテライトオフィス、ワークシェアリングに関するルールづくりです。コロナ禍においてテレワークの普及は広がったといえますが、きちんと規程を設けて継続的に実施している企業はいまだ少ないといえます。またサテライトオフィスやワーケーション等の取り組みについて、実施しているところは大手企業以外に少ないと感じます。ワーケーションとは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、観光地やリゾート地など、普段のオフィスとは離れた場所で休暇を楽しみながら働くスタイルのことです。もっともワーケーションについては賛否両論もあり、「休暇中まで労働者を働かせるのは、搾取である」と批判する声もあります。確かに運用いかんによっては、休みまで労働時間にするための制度といえなくもありません。しかし会社が労務対価としての賃金を払い、労使同意のもとで民主主義的に行われるのであれば、多様な働き方の選択肢にもなり得る制度です。中にはお仕事が忙しくて十分な年次有給休暇が取得できないという従業員様もいらっしゃるかもしれませんし、折衷案の選択肢として設けとくのは悪くないと思います。(本来の休暇取得時に強要する形となれば問題ですが)

ジョブ型雇用に近いトラック乗務員雇用について、人材不足に苦慮されている経営者や人事担当者の方も多いと存じますが、そんな会社にお勧めなのは、ジョブ・リターン(出戻り)制度や社員の紹介制度です。ジョブ・リターンは、中途退職者の社員を優先的に受け入れる制度です。一度は自己都合退職したものの、他の就職で満足の得らえる職場が見つからず、元の職場に戻りたいという元社員様もいらっしゃると思います。この制度は、社員のお知り合いの方から自社への就職を希望する方を紹介してもらうという制度です。ことにドライバーは同業者の横のつながりも多く、口コミで採用を希望するケースも多いと思います。このことは経験者の即戦力採用を円滑に増やすためにも、有効であるといえます。採用プロセスにあたっては、あらかじめ手続きの書面を作成し、全従業員への周知がなされている必要があります。また紹介した社員については、何らかのインセンティブがあった方がよいでしょう。ただしご注意いただきたいのは、金銭的報酬によるインセンティブは違法となる可能性もあります。また、採用に係る裁量を現場にゆだねることで、派閥づくりや特定の価値観に偏る可能性もありますので、本社の管理部門が適切にジャッジする仕組みを取り入れておくことも重要です。

以上、ワーク・エンゲージメントの向上に向けた具体的施策ですが、その他さまざまな手法があります。最後に(社労士のポジショントークになってしまいますが)、そういったことをご検討の場合、コンサルに力を入れている身近の社労士に相談されると良いです。

著者プロフィール

野崎律博

主任研究員

公的資格など
特定社会保険労務士
運行管理者試験(貨物)


物流事業に強い社会保険労務士です。労務管理、就業規則、賃金規定等各種規定の制定、助成金活用、職場のハラスメント対策、その他労務コンサルタントが専門です。労務のお悩み相談窓口としてご活用下さい。健保組合20年経験を生かした社会保険の活用アドバイスや健保組合加入手続きも行っております。社会保険料等にお悩みの場合もご相談下さい。

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