提案営業の必要性(その①)
2025年5月28日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
物流業が進化する中で提案営業の重要性が叫ばれるようになってきました。物流業は受託産業とも言われるだけに、これまで仕事は出す荷主が優位な位置を占め、従属的な地位とされてきました。働き方改革が取りざたされる中で、労働環境を決定するとも言える荷主の理解は不可欠です。それを実現するにはこれまでの荷主と物流業者間の存在していた主従関係を改善することが必要な要素です。それには物流業の専門家として、荷主の物流課題に着目し改善を行なうための提案営業を行なうことで、顧客の本位を知り、地位改善を図ろうというお話をさせていただきたいと思います。
提案寧行によって物流の一括受託を請け負うことを3PLと呼びます。その3PLを旗印に活動している一般社団法日本3PL協会は御存知の方も多いかもしれません。同協会のメーンプログラムのひとつに3PL管理士講座があり、これまでに国内物流関連企業に270名の卒業生を送り出してきました。その3PL管理士講座は小職が主任講師を長年にわたり努めさせていただいております。そこでは提案書作成まで様々な課題分析、コスト計算を行なった上で提案営業を進めていくための実践的方法を習得してもらっており、大変好評を博しております。今年9月開講予定の同講座は定員を増やして対応した上で満席の申込をいただいております。いかに提案営業が必要であるか認識していただくためこのような実情を説明させていただきました。ご理解いただきたいことは、提案営業はこれからの物流業地位向上には必須のアイテムであり、提案書は営業の第一歩であると言えるではないか、ということです。提案書はなぜ必要なのでしょうか?提案書もなくただ見積もりだけでは価格引き下げを強要されることが多いことをこれまでの長い歴史が証明しています。提案することで、顧客の物流課題の解決方法を提示し、顧客に利益を連想させることができる。顧客は何らかの物流課題を抱えているはずなので、提案はビジネスチャンス作りとも言えるのです。
ここで提案活動の必要性と、効率的な展開に結びつく顧客課題の発見方法や調査方法を学びたいと思います。市場が成熟し、多様化、高度化が進んでくると規制緩和等も起こり、物流企業は厳しい競争にさらされてきました。これは当然荷主であるメーカ、流通業も同じです。市場が成長中は機能を強調するだけで良かったのですが、今は供給 企業側も競争激化、選択の目も厳しくなっています。物流業者も当然、他にない付加価値を持ち、それを顧客ニーズに近づけ、スピーディに提案へ運ぶことが必要とされています。今の時代、情報が氾濫し過ぎで、顧客は本来の物流改善ニーズに気付いていない、とも言われています。本当の顧客ニーズの再発見をうながす機会をつくるためにも的確な提案書を作成し、顧客に利益を確信させることが必要となりますが。市場は、長・短期的にいろいろな要因による変化を繰り返してきています。市場を変化させる要因は、次々に登場する新商品や人口の動態変化、社会構造変化、IT技術革新など、が考えられます。この様な中で現在日本のように市場が成熟してくると、新しいニーズや企業間シェア競争などにより、市場は細分化されてきます。細分化・多様化されてくれば顧客へのきめ細かな対応が必要となり、物流サービス内容も高度化が要求されてきます。顧客業界への個別対応が当然とされ、市場の変化を読み取り、新商品(物流サービス商品)の投入や改良改善に努めることで迅速対応する必要あるのです。顧客側も経営効率向上のため、溢れる商品の中から最適な物を迅速選択していかねばなりません。
この様な状況にある顧客に対し、適格かつ魅力的な商品アピールとなる提案書は大きな武器となるはずです。ニーズが多様化すると、市場も細分化し選択肢が増えニーズを把握できないことも実際には多いので、本当に顧客ニーズを理解する必要があります。どうすれば良いか、それは顧客への訪問頻度を高め詳細なデータを得ることと、周りから必要な情報を得ることが最も効果的であると思われます。物流業として企業成果を出すには、ニーズを的確に把握し、提案活動により確実に需要へと変えいく必要があります。提案活動により“欲しい”を得て、ニーズに気付いていなかったり、体質強化のノウハウが足らない顧客企業へは、提案によって気付いてもらうことが必要となるのです。すなわち、市場の細分化・情報過多で、ニーズに気付いていないかも知れない顧客に対し、内面にあるニーズを需要に変える提示を行ない、提案内容を決定、期待通りの効果・利益を生み出すことです。しかしながら業種・業態・規模等でも企業ニーズは異なってきます。当然提案内容も違っていなければならないはず。顧客の抱える課題を探る、先方の課題などを明確にすると解決方法が導きやすくなります。顧客は日々業務に追われ、自社の問題を把握はしていても解決にまでは至ってないことが多いものです。問題解決より目先の利益優先と考える顧客が多いからです。問題を解決することで利益も出せると確信させる提案が必要なのです。