物流よろず相談所

2024年問題でトラックドライバー転職意識高まる(その①)

2025年11月26日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志


2024年問題によるトラックドライバーの転職が進んでいることがわかりました。転職を支援するサービスやサイトが活発となっていることも一つの要因と考えられます。運送業界を取り巻く状況が厳しさを増す中、人材の確保と定着は企業が経営を続けていく上で重要な課題となっています。高い費用をかけ、採用し、免許取得費用まで援助しても、定着につながらないドライバー、その要因は本当に賃金や労働内容のせいなのか、改めて考え、早期に対策を施す必要があります。ドライバーの離職問題は今や単なる人事課題ではありえません。離職を本人が辞めてしまったという現場の言い分もありますが、その要因は決して個人の問題ではなく、企業の体質や制度など様々な要因があることも明らかになっています。国内物流の停滞を何が何でも阻止し企業の収益と成長を確立していかなければならない物流事業者にとっては真剣に取り組むべき重要な経営課題です。ドライバーは何故せっかく入社した会社を去っていくのか? 未だにつかみきれていない問題の本質を、様々な側面から見直してみる必要があると思います。

全ト協の「日本のトラック運送業の現状と課題(2023年)」によると、40歳以下のドライバーは全体の23.9%、40歳~50歳は27.4%、50歳以上は48.8%、高齢化も年々着実に進んでいます(女性の就業率は20.4%、ドライバー職になると3.5%)。これらの現実から見ても、 運送業の慢性的な人手不足は離職率のせいだけではなく、若手層と女性の新規就業者の少なさや現役ドライバーの高齢化等といったいくつもの要因からきたものと考えられます。2023年「運輸・郵便業」における離職率離職率=「離職者数÷対象期間の従業員数」×100、ただし対象期間内に入社して退職した人は含まない)は10.3%、 これは他産業に比べてさほど突出して高い訳ではありません。(注目すべきは入職者から離職者を差引いた入職超過率で、2024年度国交省調査による「運輸・郵便等」新卒者の入職超過率はマイナス0.2ポイントで、業界全体における労働力不足は明らかです。

新卒者の3年後に注目してみます。50歳以上のドライバーが半数近くを占める業界において新卒のドライバーは喉から手が出るほど欲しい人材ですが、彼らの3年以内の離職率を見てみると高卒が32.8%、大卒は25%と、やはり高い水準となっています。業界全体の離職率が比較的低く見えていたのは、ベテランの高齢ドライバー層が統計上の数値を押し上げていたに過ぎなかったと言えます。しかし近い将来現場を支えていたそれらベテランも一斉に辞めて行く時がやってきます。人手不足に拍車がかかってくることになります。業界の人手不足の実態をまずしっかり理解した上で、自社における定着率が上がらない理由を深い所から掘り起こしてみる必要があります。

3年以内に3割が辞めてしまうという早期離職の背景には「こんなはずじゃなかった」という幻滅の感情が引き金となることはよく知られていることではないでしょうか?入社時に抱いていた期待はまず厳しい現実に直面することで崩れ始めます、そこに加えて給与が低い、仕事量が多くてきつい等の不満が重なり、経験の浅いドライバーは日を追うごとに疲弊して行きます。ちまたには多くの転職サイトやコマーシャルが溢れており、転職を決意するという流れも少なくはないでしょう。2024年4月以前のデータによると、トラックドライバーの年間賃金は他業種より1~2割低く、労働時間は1.2倍多いのが実情、2025年現在もさほどデータに変化はないと思われます。

2024年4月までは低い賃金を残業代でまかなうことで多くのドライバーはまだモチベーションを維持できていましたが、働き方改革による総労働時間規制によって残業が規制されると、もはやトラックドライバーでいる意味がないと感じるベテランの離職もこの時点で増加したとされています。新人を指導する人材も減少することになってしまいます。しかし本当に理由はそれだけではないと思います。「低賃金」の陰に隠れて見過ごされがちな理由が「将来性の欠如」です。仕事を頑張って続けても認めてもらえたり、昇進の     機会を与えられたりしなければ、終わりの見えない苦労ばかりが目の前にちらつくことになります。ましてベテランや上司から聞かされるのが愚痴や不満ではモチベーションは瞬く間に消えてしまいます。自社における従業員のエンゲージメントが高いかどうかが大きな要因であると思います。※その②は12月3日号

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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