物流よろず相談所

食品物流共同化進む

2026年9月24日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志


物流業をはじめあらゆる産業分野で人材不足の深刻化が叫ばれています。人手不足がピークに達し、熾烈な輸送能力の奪い合いが起こるとされる、2030年を前に、物流事業者は焦点を絞った対策で課題に立ち向かう必要があります。2027年問題の解決も含め経営の壁となっている現在の課題を整理しておきましょう。 今後輸送能力が約25%不足し、約34%の荷物が運べなくなる、とされる「2030年問題」は物流業界だけの課題ではありません。労働人口の減少はピークとなり、人材不足による 人件費の上昇や燃料費などのコスト増、物価高騰等を適正に価格に転嫁出来なければ、ゆとりある企業経営は望めなくなります。2026年4月の法改正以降あらたな改正法施行も予測され(物流事業者の更新制度、適正原価制など)、物流業務の見直しやコンプライアンス対応が経営戦略に組み込まれることにもなります。

これからは持続可能な物流体制の構築が望まれています。そのためには物流業務の標準化と効率化を避けて通ることはできません。もちろん現場におけるDX推進やAI活用など取り組むべきことは多いはずです。標準化と効率化を推進する上で課題となるのは①出荷量に曜日や月間で波があると、荷待ち時間の発生や積載効率の低下が懸念されます。このために貨物量を平準化することで時間短縮や輸送効率向上を目指すよう荷主・事業者共に検討しましょう。次に荷主の産体制を見直すなどして、繫忙期や閑散期をなるべく作らないように工夫していく必要もあります。配送の効率化においては、中継輸送のメリットを認識することが必要です。中継輸送はドライバー個人の意見は様々だが彼らの身体的な負担や拘束時間は確実に軽減できます。

現実的には荷主主体の共同配送増加傾向にあります。トラックの積載効率を上げ、コストの削減を図るために荷主同士が連携して、共同配送を検討する動きも本格化しつつあります。荷主が共同倉庫に荷物を持ち寄り、そこから納品先へ一括で配送するので、トラックの数を削減、積載率の向上が見込めます。荷主同志の共同輸送においては比較的短距離で取り組みやすさを前提に始める方が良いと思われます。共同化によって輸送網の集約と効率化を進めていくことも必要です。集荷や配送の際の効率化として、輸送網を集約すること、集荷・配送先が分散していると、それぞれに荷待ちや荷役時間が発生してしまい、非効率的となってしまいます。荷主側としても集約を行うことで、リードタイム削減や在庫効率化などの効果が期待できます(手積みによる荷役作業をパレット利用にする、など輸送機器を見直すだけでも荷役時間は削減できる)。

共同化が進んでいる業界のひとつに食品業界があります。食品業界では少量多頻度配送が多く、さらに2024年問題によるトラックドライバーの労働時間規制強化により輸送力不足が懸念されていることは説明しました。企業単独での物流効率化だけでなく、業界横断的な共同物流の重要性が高まっているのが実情です。簡単に言えば、「競争領域である商品や販売は各社で行い、非競争領域である物流は協力して効率化する取り組み」といえます。主な共同化を掲げて見ましょう。共同配送;複数企業の商品を同じトラックで配送する、積載率向上、配送回数削減が可能。共同保管;共通の物流センターや冷蔵・冷凍倉庫を利用、倉庫運営コストを分担できる。共同輸送;長距離幹線輸送を共同で実施する、トラックやドライバーの有効活用につながる。物流情報の共同利用;在庫情報や配送計画を共有する、配送の最適化や欠品防止に役立つ、等です。

共同化のメリットはどうでしょうか?まず物流コストの削減が期待できます。次にドライバー不足への対応、CO₂排出量の削減、積載効率の向上、配送品質の安定化などがメリットとして考えられます。それでは食品物流における共同化の課題は何でしょうか?難しいのが参加企業間の情報共有・調整です。加えて配送条件や納品時間の違いへの対応も必要になってきます。明らかなコスト配分ルールの設定も考えておかねばなりません。商品特性(常温・冷蔵・冷凍)の違いへの対応など推進する上での課題を明らかにした上で、推進しいくことが望ましいと言えるでしょう。

共同化成功の条件をまとめてみましょう。食品物流の共同化(共同配送・共同保管)が成功するかどうかは、実は「物流会社選び」よりも「共同化の設計」に左右されます。まず配送先が重複している企業同士を組み合わせることが必須です。配送先が食品スーパー・量販店中心であることが望ましいと言えるでしょう。常温・チルド商品が多く、配送エリアが全国または広域に広がっていることも必要です。納品頻度が高く、他メーカーとの配送先重複が多いなどが最も重要な成功要因となります。

成功のポイントは、①十分な貨物密度と配送ルートの重複、②荷主間の公平性を担保する調整メカニズム、③小売・卸売の受け入れの標準化(重複確認)、④初期投資や調整コストを吸収できる資本の余力、⑤同じ温度帯の商品を扱うことが望ましい、⑥納品条件を標準化すること、⑦物流を「競争領域」ではなく「協調領域」と考える、などです。今後も進んで行くと考えられる共同化、遅れることなく推進して参りたいものです。

著者プロフィール

岩﨑仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

得意分野

  • 3PL
  • マーケティング
  • ドライバー育成
  • 人材教育
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