食品物流における共同化(その1)
2026年11月4日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
食品物流における共同化とは、複数の食品メーカー、卸売業者、小売業者などが、物流機能を共同で利用・運営することを指します。物流の効率化やコスト削減、人手不足への対応を目的として進められています。
主な共同化の形態
1.共同配送
・複数企業の商品を同じトラックで配送する。
・積載率向上、配送回数削減が可能。
2.共同保管
・共通の物流センターや冷蔵・冷凍倉庫を利用する。
・倉庫運営コストを分担できる。
3.共同輸送
・長距離幹線輸送を共同で実施する。
・トラックやドライバーの有効活用につながる。
4.物流情報の共同利用
・在庫情報や配送計画を共有する。
・配送の最適化や欠品防止に役立つ。
メリット
・物流コストの削減
・ドライバー不足への対応
・CO₂排出量の削減
・積載効率の向上
・配送品質の安定化
課題
・参加企業間の情報共有・調整
・配送条件や納品時間の違いへの対応
・コスト配分ルールの設定
・商品特性(常温・冷蔵・冷凍)の違いへの対応
食品業界で共同化が注目される背景
食品業界では少量多頻度配送が多く、さらに2024年問題によるトラックドライバーの労働時間規制強化により輸送力不足が懸念されています。そのため、企業単独での物流効率化だけでなく、業界横断的な共同物流の重要性が高まっています。
簡単に言えば、**「競争領域である商品や販売は各社で行い、非競争領域である物流は協力して効率化する取り組み」**といえます。
<食品物流共同化事例>
食品物流の共同化には、多くの先進事例があります。代表的な事例を紹介します。
①F-LINEプロジェクト(加工食品メーカー)
味の素、カゴメ、Mizkan、日清オイリオ、日清製粉ウェルナ(旧日清フーズ)、ハウス食品などが「競争は商品で、物流は共同で」を理念に連携し、共同配送や共同保管を推進しています。2019年には共同出資による物流会社「F-LINE株式会社」を設立しました。
(成果)
- 幹線輸送の共同化
- 納品条件や伝票の標準化
- 積載率向上と物流コスト削減
- ドライバー不足への対応
②ハム・ソーセージ4社の共同配送
日本ハム、伊藤ハム、プリマハム、丸大食品などの食肉加工メーカーが共同配送を実施しました。四国エリアでは重複配送を見直し、配送ルートを共同化しています。
(成果)
- 配送コースを7コースから4コースへ集約
- 年間配送トラック台数を1,820台から884台へ削減
③チルド物流研究会
伊藤ハム米久HD、日本ハム、プリマハム、丸大食品、明治、森永乳業、雪印メグミルクなど冷蔵食品メーカーが参加し、チルド商品の共同物流を推進しています。
(取り組み)
- 同温度帯商品の共同配送
- 納品期限の緩和
- 店舗別仕分け作業削減
- 物流標準化・システム導入
④パンメーカー4社の共同配送
フジパン、リョーユーパン、フランソア、タカキベーカリーが、佐川急便主導で共同配送センターを活用した配送網を構築しました。
(成果)
- 同一店舗への重複配送を削減
- トラック積載率向上
- CO₂排出量を年間18.7%削減
⑤新潟菓子メーカー物流研究会
亀田製菓、ブルボン、岩塚製菓、三幸製菓などが共同で物流改善を実施しています。
(取り組み)
- パレット単位での共同配送
- 包装・段ボール規格の標準化
- ダブル連結トラックの共同利用
~共同物流成功のポイント~
食品物流の共同化で成功している企業に共通するのは、
1.同じ温度帯の商品を扱うこと
2.配送先が重複していること
3.納品条件を標準化すること
4.物流を「競争領域」ではなく「協調領域」と考えること です。
これらの事例は、食品業界における2024年問題やドライバー不足への有効な対策として注目されています。
<共同化の課題と対策は?>
食品物流の共同化は大きな効果が期待できる一方で、実際には多くの課題があります。成功しているF-LINEやチルド物流研究会なども、標準化や調整を進めながら課題を克服しています。
1.企業間の利害調整
(課題)
- 納品時間や配送頻度が企業ごとに異なる
- コスト負担の公平性が難しい
- 競合企業同士で情報共有に抵抗がある
(対策)
- 中立的な物流会社や共同運営組織を設置
- コスト配分ルールを事前に明確化
- 「物流は協調領域」という共通認識を形成
2.納品条件の違い
(課題)
- 店舗ごとに納品曜日・時間指定が異なる
- 緊急配送や小口配送が多い
- 積載効率が上がりにくい
(対策)
- 納品時間の緩和
- 発注締切の前倒し
- リードタイムの見直し
- 配送日集約による効率化
3.温度帯の違い
(課題)
- 常温、冷蔵、冷凍食品では輸送条件が異なる
- 品質管理ルールが異なる
(対策)
- 同一温度帯ごとに共同配送を実施
- チルド物流研究会のような温度帯別連携を推進
4.情報システムの違い
(課題)
- 各社で物流システムやコード体系が異なる
- データ連携が難しい
(対策)
- 受発注データや伝票様式の標準化
- 共通プラットフォームの構築
- 配送情報のリアルタイム共有
5.荷待ち・附帯作業
(課題)
- 荷待ち時間が長い
- 検品や仕分けなどドライバー負担が大きい
(対策)
- バース予約システム導入
- パレット化・検品レス化
- 店舗別仕分け作業の削減
- トラック位置情報の共有による待機時間短縮
6.標準化不足
(課題)
- パレットサイズや外装規格がメーカーごとに違う
- 積載効率が低下する
(対策)
- パレット・段ボール規格の統一
- ケースサイズ標準化
- 共同輸送に適した包装設計への変更
~今後の成功の鍵~
食品物流共同化の成功要因は次の4点に集約できます。
1.納品条件の標準化
2.物流データの共有・可視化
3.温度帯・商流が近い企業同士の連携
4.経営層主導による業界横断の協力体制
特に2024年問題以降は、単なるコスト削減ではなく、**「輸送力を確保し、物流を持続可能にするための共同化」**が最も重要なテーマとなっています。
⇒ 続きは11月25日掲載