物流よろず相談所

商品事故をなくすには

2026年10月21日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志

 

トラック運送業で商品事故をゼロに近づけるためには、「人」「設備」「ルール」の3つを同時に改善することが重要です。商品事故の要因を考えてみましょう。物流現場の商品事故の多くは荷役作業、輸送中、納品時に集中します。荷役作業では、フォークリフト接触、荷崩れ、積み付け不良、パレット破損、誤操作など。輸送中では、急ブレーキ、急ハンドル、急加速、固縛不足、振動・衝撃など。納品時では、商品取り違え、誤納品、荷降ろし時の落下、雨濡れ、などの商品事故がそれぞれ起きています。

防止策として最も効果あると考えられる対策を考えてみましょう。まず、標準作業の見える化です。作業手順を定め、事故を起こす人と、起こさない人の差をなくすことが重要です。

具体的には積付け手順書、ラッシングベルト固定基準、荷崩れ防止基準、商品別取扱基準などを標準手順書で明確化することがポイントです。写真入りマニュアルや動画による手順書も効果的です。次に出発前の荷姿確認等です。商品数、 荷姿異常、 固縛状態、 温度設定、 荷台異物、 扉施錠などチェックリスト化しておくと良いでしょう。毎日同じ確認を行うことで事故を未然に防げるようになります。デジタコやドライブレコーダを活用した安全管理も効果的です。商品事故と運転品質は密接に関係しており、管理指標として、急ブレーキ回数、急加速回数、急旋回回数、速度超過回数などを確認しておくと、事前に異常を見出し、商品事故を防ぐことにもつながります。特に荷崩れ事故は急ブレーキとの関連が大きいため重点管理が必要です。

加えて、普段からのヒヤリハット活動が大事です。事故が起きる前の兆候を集めます。例えば、荷崩れしそうだった、フォークが接触しそうだった、積付けが不安だった、誤納品寸前だったなど多様な場面でのヒヤリハットを集めることができるでしょう。それを皆で安全活動を通じて月1回共有するだけでも事故削減効果があります。

新人教育の徹底も効果があります。商品事故の多くは入社1年以内の社員に多く発生しています。教育内容として、商品特性教育、荷役訓練、添乗指導、危険予知訓練(KY)などを強化することが有効です。加えて、教育後の独り立ち基準を明確化することも重要です。

商品事故が少ない物流会社は共通して、「事故が起きた人を責める」のではなく、「事故が起きた仕組みを改善する」という考え方を持っています。そのためには、1.事故発生、2.原因分析、3.再発防止策決定、4.全社共有、5.効果確認を必ず実施することが重要です。

物流業で特に効果が高いのは、「商品事故マップ(事故種類別・拠点別・荷主別の見える化)」を作成し、月次で管理することです。これにより重点改善ポイントが明確になります。商品事故防止チェックリストは、荷崩れ事故、フォークリフト接触事故、落下事故、誤納品事故、破損事故(衝撃・振動)、雨濡れ事故、温度異常事故(冷凍・冷蔵)に区分して作成しておきましょう。


荷崩れ事故については積み込み時と出発前に実施すると効果的です。
積込時確認として
□重い荷物を下段に配置した
□パレットの破損がない、
□荷物がパレットからはみ出していない
□ ラップ巻きが十分である
□空きスペースを埋めた、
□荷物高さが基準内である、などを確認しておきましょう。

出発前確認として
□ラッシングベルト固定済み
□固縛本数が基準以上
□前後左右の移動余地がない
□荷室内で異音がしない、などを確認しておきましょう。


フォークリフト接触事故では作業前の確認と作業中の確認が大事です。
作業前確認では
□ フォーク点検実施
□ 爪の間隔調整済み
□ 荷重確認済み
□ 作業範囲の障害物確認済みなど。

作業中確認では
□ パレット中央へ確実に差込み
□ 爪を完全に挿入
□ 徐行運転実施
□ 人との接触リスクを確認
□ 高所移動を行わないなど。


落下事故防止では、積卸し作業と納品時に確認しましょう。
積降ろし作業では
□ ゲート開閉異常なし
□ パレット状態良好
□ 荷物固定解除順序確認
□ 荷物の重心確認
□ 複数人作業時の声掛け実施など。

納品時では
□ 段差確認
□ 雨天時滑り止め対策実施
□ 荷台端部で作業しないなど。


誤納品事故では出発前確認と納品時確認に分けて考えておきましょう。
出発前確認では
□ 納品先名確認
□ 納品日確認
□ 商品コード確認
□ 数量確認
□ 伝票確認など。

納品時確認では
□ 納品先担当者確認
□ 商品ラベル確認
□ 数量再確認
□ 受領サイン取得など。


破損事故(衝撃・振動)は、積付時と運行時に分けて確認しましょう。
積付時では
□ 壊れやすい商品に緩衝材使用
□ 精密機器の取扱注意表示あり
□ 混載禁止商品を分離
□ 荷重オーバーなし、などを確認しておきましょう。

運行時では
□ 急ブレーキなし
□ 急加速なし
□ 急ハンドルなし
□ 悪路走行時の速度調整実施など。


雨濡れ事故は積込み時と納品時に分けて確認しましょう。
積込時では
□ シート破れなし
□ 扉パッキン異常なし
□ 防水カバー装着済みなど。

納品時では
□ 雨天対策実施
□ 荷降ろし場所確認
□ 商品露出時間を最小化など。


温度異常事故(冷凍・冷蔵)は出発前と運行中に確認しましょう。
出発前では
□ 温度設定確認
□ 温度記録開始
□ 冷凍機異常なし
□ 庫内温度安定確認など。

運行中は
□ 温度定時確認
□ 扉開放時間管理
□ 異常時報告実施など。

商品事故をなくすには管理者が、 出発前点検実施率100%、 商品事故発生時の原因分析実施、 ヒヤリハット報告提出、 デジタコ急ブレーキ分析実施、 新人教育実施、 再発防止策の水平展開実施、 荷主別事故件数管理、 商品事故マップ更新などを徹底することが必要です。物流業では特に「荷崩れ」「誤納品」「フォーク接触」の3項目が商品事故の大半を占めるため、この3つを重点監査項目に設定すると効果的です。商品事故を減らすためには、「原因」「対策」「責任者」を明確化することが重要です。特に物流業では、「誰が管理するのか」が曖昧なために同じ事故が繰り返されるケースが多く見られます。

著者プロフィール

岩﨑仁志

代表主席研究員

職歴
元  外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

得意分野

  • 3PL
  • マーケティング
  • ドライバー育成
  • 人材教育
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