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「危険物倉庫足りない」全国で逼迫、地方新設も加速

日刊CARGO 2019年3月18日掲載

 

全国的に危険物倉庫の庫腹が逼迫している。需要そのものの拡大に加え、危険物保管に関する荷主のコンプライアンス意識の変化が、新たな倉庫需要を生み出している。一方、主要港周辺では新たな倉庫を建設するための用地確保が難しく、逼迫感は増すばかり。一部倉庫で増設や刷新の動きはあるものの、関係者は「それでもタイトであることに変わりはなく、当面はこの状況が続きそうだ」と話す。近年の首都圏港湾の混雑やドライバー不足問題も需給逼迫に拍車をかける。新たな受け皿を目指し、地方港の背後圏で本格的な危険物倉庫を建設する動きも加速している。

危険物倉庫の庫腹はもともとタイトに推移にしていたが、過去数年でその傾向が一層顕著になっている。その背景にあるのは、荷主企業や倉庫事業者のコンプライアンス意識の変化だ。本来であれば危険物倉庫に預けるべき貨物でも、これまで意識されないまま一般倉庫で保管されているというケースは、実態として少なくない。また、数年前に埼玉県の物流倉庫で発生した火災事故も転機の一つとなった。この事故では危険物の違法保管が明らかになり、荷主や倉庫事業者双方に対してコンプライアンスの再徹底を改めて促す出来事になったという。「本来なら危険物倉庫に保管すべき貨物でも、その意識がそもそも無いために一般倉庫に保管されている貨物は相当あるだろう」と複数の業界関係者は指摘する。これ以外にも、メーカーが工場構内に保有していた保管施設を廃止し、外部倉庫へと集約する動きもあり、危険物倉庫へ貨物をシフトする動きはさらに活発化。また、従来は第4類の引火性液体危険物が危険物倉庫の大宗貨物だったが、最近は第4類以外でもさまざまな種類で貨物需要が増えているのも特徴だ。複数の要因が合わさって、庫腹のタイト感を一層強める結果となっている。

また、危険物倉庫の立地に広がりが出てきているのも特徴だ。従来は主要港湾周辺に多くの危険物倉庫が集中しており、地方港周辺では充実した施設の確保が難しかった。京浜地区では、川崎や千葉などの一部倉庫で増築や自動立体倉庫の建設が行われているが、もともと新設する余裕のある土地は限られ、供給能力の拡大には限りがある。

さらに昨今は、首都圏港湾の混雑やドレージ不足がクローズアップされてきたことで、荷主企業も陸送距離の短い地元港湾の活用により目を向けるようになってきている。このため、地方港でも保税機能を持った危険物倉庫に対する需要が高まり、各港に基盤を持つ物流・港運事業者が危険物倉庫を手掛けるケースが増えてきている。地方港で危険物倉庫を新設した事例としては、新門司で危険品マルチステーションを建設し、4月に開業予定の東海運や、このほど新潟港で「東港ケミカルセンター1号」を稼働させたリンコー・コーポレーション、昨年9月に仙台港で危険物倉庫を稼働させた大郷運輸/東邦運輸倉庫などが挙げられる。特に仙台や新潟では、それぞれ地域で初の本格的な危険物倉庫の稼働で、これまで首都圏に流出していた貨物を地元港湾へと引き戻すという点でも、大きな期待がかかっている。

危険物倉庫事業者にとっては当面、需給タイトな状況が続きそうだ。一般倉庫に保管されたままとなっている危険品の量はまだ相当程度あると考えられており、危険物倉庫へのシフトで新たな需要が生まる流れはしばらく続きそうだ。eコマース(EC)の拡大も追い風になり得る。「化粧品や家庭用の自動車用品など、さまざまな分野で危険物扱いとなる品物は多い。通販でも多く取り扱われており、危険物倉庫での保管が必要になる」と関係者は語る。

一方で、必ずしもうれしい悲鳴ばかりではない。需要は堅調だが、「コンプライアンス徹底を求められる結果、保管効率が落ちたり作業性が下がったりするなど課題もある。保管需要は旺盛だが、倉庫として収益に結びつくかはまた別」との声も出ている。


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