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改正港湾法が成立 洋上風力基地港湾、最速で来年2月指定も

Daily Cargo  2019年12月3日掲載

 

洋上風力発電設備の積み出しなどを担う基地港湾の整備や、国際コンテナ戦略港湾政策の推進に向けた港湾運営会社への国職員の派遣などを盛り込んだ改正港湾法が11月29日に成立した。今後、国による洋上風力発電の基地港湾指定を狙う港湾では、港湾計画上に基地港湾としての機能強化を盛り込む動きが進むと見られる。国の交通政策審議会港湾分科会で港湾計画の変更が了承された後、早ければ来年2月にも基地港湾の指定が行われる見通しだ。また、法改正に合わせて国土交通省は国の港湾行政の指針である「港湾の基本方針」も変更する考えで、来年2月中旬に開催予定の港湾分科会で答申する予定。

改正港湾法は10月18日に閣議決定。11月14日に衆院を通過し、同月29日の参院本会議で可決、成立した。

今回の改正の目玉は洋上風力発電の推進に向けた港湾の利活用と機能強化だ。政府は近年、洋上風力発電の拡大に力を入れており、2016年の港湾法改正では占用公募制度に基づき、港湾区域内での洋上風力発電を可能とした。今年4月には再エネ海域利用法の施行により、導入エリアを一般海域に広げた。政府は早ければ年内にも一般海域における洋上風力発電の整備促進区域を設定する方針で、今年7月には既に一定の準備段階に進んでいる11区域を公表している。このうち、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖と秋田県由利本荘(北側・南側)、千葉県銚子沖、長崎県五島市沖の4区域は、地元合意など環境整備が進捗している有望な区域として、協議会の組織や国による風況・地質調査の準備を進めている。

こうした中、施設整備に向けては風車などの設備を積み出す港湾の利用調整や機能強化を図る必要があった。今回の改正法では、政府が新たに海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)を数港指定し、発電事業者に対して基地港湾のふ頭を長期間貸し付ける制度を創設した。同制度により国がふ頭における複数事業者の利用を調整する。発電事業者にとっては設備設置や定期的な大規模修繕、メンテナンス、撤去などで長期にわたって安定的に港湾を利用できる体制が整う。

基地港湾は、①複数事業者の利用が見込まれる②地耐力を強化した岸壁(国有港湾施設)である③長尺資機材の保管・組み立てが可能な規模の荷捌き地であることなどを指定要件とする。早ければ第1回目の指定を来年2月にも行う方針だが、来年度以降も条件が整えば、追加指定を行う考えだ。また港湾区域における公募占用計画の認定の有効期間も20年から30年に延長した。

国際コンテナ戦略港湾政策関連では、改正法で港湾運営会社の運営計画に、「国際基幹航路に就航する外貿コンテナ貨物定期船の寄港回数の維持・増加を図るための取り組みに関する事項」を新たに追加した。加えて、国土交通大臣は港湾運営会社に対して、海外ポートセールスに有益な情報の提供や指導・助言を行うことを盛り込んだ。

また、職員の派遣に関しては、国際戦略港湾の港湾運営会社の職員になるために退職した国派遣職員を特別職国家公務員等とみなすこととする。現在も東西の港湾運営会社に対しては民間企業との人事交流により、国が職員を出向させているが、業務内容や在籍年数などに制約がある。国から経験豊富な人材を派遣することで、効果的なポートセールスや港湾管理の高度化につなげ、基幹航路の維持・拡大などを目指していきたい考えだ。


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