米国コンテナ航路 コスト増で価格転嫁促進か 中国建造船除外や再編も
Daily Cargo 2025年4月21日掲載
米国通商代表部(USTR)が17日に発表した、中国関連船への米国寄港時における巨額の入港料措置は、米国発着の海上コンテナ輸送にも大きな影響を与える見込みだ。寄港する米国港湾ごとの課徴から1航海ごとの課徴に変更されるなど、当初案からは大きく修正されたものの、中国建造船や中国船社の運航船、中国船主の保有船に対する巨額の入港料はコストの増加につながり、コンテナ船社の収益を圧迫する。「船社だけでは負担不可能」(コンテナ船社関係者)なため、荷主への価格転嫁が進む見通しだ。中国建造船を米国発着サービスから除外するなどの航路再編や本船の入れ替えが進む可能性もある。
今回発表された措置では、決定日から180日間は入港料が免除となるが、以降は3年間にわたって入港料が段階的に引き上げられる。中国の船舶運航者と船舶所有者に対する入港料は、今年10月14日以降が純トン当たり50ドル、26年4月17日以降が80ドル、27年4月17日以降が110ドル、28年4月17日以降は140ドルとなる。入港料課徴は当該船舶当たり年間5回を上限とする。
コンテナ船に関しては、中国のコスコシッピングラインズが最も大きな影響を受けると予想される。加えて、同措置は香港とマカオの事業体も対象となるため、グループのOOCLにも悪影響が出ると見られる。両社が所属しているオーシャン・アライアンスにおいては、CMA-CGMやエバーグリーン・マリンが北米航路に本船を投入する傾向が高まる可能性がありそうだ。
また、他のコンテナ船社も中国や香港の船主から用船しているケースは同入港料措置の影響を受ける見通し。これらの船主からの用船を敬遠する動きが発生する可能性も想定される。
中国建造船に対しては、本船の純トン数当たりの料金か荷揚げコンテナ当たりの料金のいずれか高い方の入港料が課せられる。具体的な課徴額は、今年10月14日以降が純トン当たり18ドルもしくはコンテナ当たり120ドル、26年4月17日以降が純トン当たり23ドルもしくはコンテナ当たり153ドル、27年4月17日以降が純トン当たり28ドルもしくはコンテナ当たり195ドル、28年4月17日以降が純トン当たり33ドルもしくはコンテナ当たり250ドルとなる。4000TEU型以下の船や、空荷入港、2000海里未満の短距離航路で米国港湾に入港する船などに対しては適用されない。
一方、中国建造船と同等以上の純トン数の米国建造船を発注した場合は減免措置を受けられるとしている。しかし、元々4000TEU以下の船舶は適用対象外となっていることに加え、米国造船所の現在および将来的な大型コンテナ船の建造能力などを踏まえると、同減免措置が適用されるケースは限定的になると予想される。
当初案に盛り込まれていた全船隊に占める中国建造船の比率に応じた入港料課徴などは、今回の発表では含まれなかった。ただ、現時点においてもコンテナ船社によって濃淡はあるが中国建造船の運航は多くなっているため影響は大きい。また発注残においては中国建造のシェアが高くなっており、将来的に影響が拡大する見込みだ。
巨額のコスト増になることから、「船社のみで負担することは不可能」との声が強く、コンテナ船社は今秋以降にサーチャージの課徴やベースレートの引き上げなどで、荷主への価格転嫁を進めると見られる。このうちサーチャージに関しては、米連邦海事委員会(FMC)が法令・規制上の要件を順守しているか監視を強める可能性もある。足元では米国の関税引き上げ施策による影響も出ており、荷主にとってもさらなるコスト増につながる見通しだ。
コンテナ船社は入港料の影響を最小化するため、中国建造船を米国航路から外し、非中国建造船を同航路に投入していくと見られる。しかし、現行の全てのサービスを非中国建造船でカバーすることは難しいと見られ、航路再編につながることも想定される。船腹供給が絞られ、需給環境に影響が出れば、運賃市況への影響も出てくる可能性が高い。
米国港湾ごとの課徴から1航海ごとの課徴に変更されたため、当初懸念されていた大規模港湾への寄港地絞り込みは進まない可能性もある。だが、課徴金導入当初に混乱が生じ、港湾混雑が悪化する懸念は依然として残っている。
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