物流よろず相談所

提案営業の必要性(その②)

2025年6月4日

『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志


提案営業の必要性(その①)はこちら

提案内容により提案書の作成方法も異なってきます。本当の課題はどこにあるのか、課題発見は的確でなくてはなりません。

例えば配送・センター・システム提案など、提案範囲や理由背景を明確にしないといけません。提案営業とは、提案先の問題点・課題はぼんやりしている中で、提案することにより問題点・課題を浮き彫りにし、生じる不利益と解決策を提示することです。問題点・課題が明確化、解決策を検討、提案による解決策で利益を明確化することで、顧客は利益(導入費用対効果)が明確になります。その事実を顧客が認識できればその提案を導入することになるはずです。業種・業態・規模等でも企業ニーズは異なり、提案内容も違ってくるし、問題が違えば解決のためのニーズもくるだけでなく、業種ごとにことなるニーズにも異なってくるでしょう。考えられる顧客ニーズに基づき提案の機会を慎重に狙う必要があります。この際 あくまでも顧客目線を忘れずに勝手な解釈はしないことが肝心です。またその提案先企業が成長過程においてどの段階にあるかも、重要なポイントです。企業がまだ整っていない幼少期であれば、物流要件をまとめてあげることで、物流コストを明らかにする事が必要となります。加速的な成長次期であれば人手不足のための省力化の提案、安定期であればきめ細かいマネジメントの対応など、成熟期であれば企業活動を根本的に見直し、経営に直結する物流戦略を再構築する提案すべきでしょう。万が一衰退期であればその物流体制を維持できるか、企業活動が今後も継続できるように顧客選別と物流サービスの見直しなどが適切な提案となるでしょう。多くの日本企業は成熟期から衰退期にあると言っても過言ではないのが事実。物流戦略の見直しは必須の状態であると考えられます。

まず顧客を取り巻く様々な変化と要因を知ることが必要です。企業を取り巻く市場環境は常に変化しており、顧客の求めるニーズも変わり続けることを理解しておかねばなりません。市場環境変化の要因として考慮するべき点は、経済と消費、地球環境や法規制、規制緩和、国際化、IT化、特に核家族化による少子高齢化、ECなど消費構造の変化など顧客企業が今後抱えるこれらの変化にいかに耐えて、競争力を維持できるか見据えておかねばなりません。顧客に依存する物流企業から脱皮するには、市場変化を見越して、対応する物流商品の提供が必要となってきます。マーケティングが提案のためには欠かすことができない要素です。多くの物流企業はこのマーケティングがなされていない事が多いのです。提案するには、まず顧客ニーズの把握が必要です。

提案営業の流れを、ステップから構成までスケジュール化してみたいと思います。提案書を無計画に始めると、ただでさえ多額のシステム投資や複雑な導入行程を要する業務に余計な時間と労力が加わり最終提案までたどり着けない事もあり得えます。まず提案先の企業が抱えている課題を見つけねばなりません。顧客の市場環境、業界共通の課題を整理、絞込みを行い顧客個々の課題を発見しましょう。顧客は、日々の業務に追われ自社の課題を漠然としかとらえていないということが多いものです。そのためには顧客がその課題を放っておくと発生するであろう不利益を明示にした上で、解決の為の方法と利益を提案すること望ましいと言えるでしょう。顧客の課題を的確に把握しなければ解決策も利益も提示出来ません。そのためにも調査による分析が重要となります。企業課題調査から始める必要があり、顧客の市場環境、顧客業界特有の課題、顧客固有の課題などを明確にすることが必要です。調査によって発見できた課題等を整理することで見出した解決策を提示し、この解決策を実施することで得られる利益を示すことが、提案の流れとなってきます。顧客へ提案する内容が複雑・高度であればあるほど、問題点や課題の調査・分析が重要になります。調査が充分でないと、説得力に欠け、提案書の作成が困難になってしまいます。しかしながら、現場調査は決して容易ではありません。

筆者のこれまでの経験でも言えることですが、現場は現行の作業内容ややり方を変更することには必ず抵抗感を示すことが多いもの。当人達にとってメリットのない改善は受け入れがたいものであるから調査へ協力をしようとはしません。ライバル企業が現在請け負っておる仕事である場合はことさらその詳細を知ることは簡単ではありません。例えば現場スタッフだと、業務の簡素化、迅速化などオペレーション等に変更があると反発が考えられます。管理スタッフだとシステムの安定、拡張性費用対効果が見込めますか、新システム移行によるシステムの不安定性、導入効果に不信を持つでしょう。現場責任者であれば、業務の簡素化、迅速化、適格化が結果的には、既得権の喪失につながらないか、自分の地位保全など懸念を持つ場合も少なくないでしょう。経営陣であれば経営の効率化、費用対効果が見込めるのか、導入後即効果が出せるのかなど疑念を持つことも考えられます。物流改善や改革の成功には、経営者のトップダウンよりも、各部門の調整が優先される場合が数多くあります。導入前に各部署のネゴシエーションが絶対必要です。提案書にはこのことを踏まえて実現可能な案を提示しなければならないのです。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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