非正規労働者からキャリアアップ促進のための正規雇用転換への取組み
2026年3月11日
労務管理ヴィッセンシャフト vol.44
野崎 律博
~はじめに~
長かった冬も終わり、早くも3月になりました。梅の花も咲き、もうじき桜も花開く日も近いこの季節、皆様いかがお過ごしでしょうか?4月といえば新卒社員入社の季節です。学校を卒業したばかりの新鮮な新入社員さん達と触れ合うことの中で、入社したばかりのころを振り返る方もいらっしゃるのではないでしょうか?
さて人材不足に悩む物流企業においては、中途採用を主体とした雇用が多いのも事実です。ドライバー不足は顕在化しており、一人でも多くの求職者と接し、よければ採用したい会社も多いと思います。もう少しで新年度もスタートしますが、この時期は厚生労働省の雇用行政に関連する助成金も刷新される時期です。今年は1月という年度末間近の衆議院選挙もあったので、年度内予算が成立するか否か?注目されるところではあります。ともあれ通年行われている助成金について、述べたいと思います。
◆キャリアアップ助成金について
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣社員といった、いわゆる非正規労働者などを正社員化、または処遇改善の取組を実施した会社に対して行われる助成金として、キャリアアップ助成金があります。そもそも論からの話ですが、会社はなぜ正社員でなく期間雇用の契約社員を採用するケースがあるのでしょう?とりわけ戦後の高度経済成長期において、日本の労働法制は終身雇用を前提にした雇用を基本としておりました。雇用の在り方もメンバーシップ型雇用が主体となっていることは、過去のメルマガでも述べた通りです。よって雇用した従業員は、スキルアップ含め会社が人材教育を行い、標準化されたキャリア形成を行うこと、また年齢や勤続年数をベースとした賃金体系が基本となっております。また人事考課による職能等級制度があるとはいえ、管理職手当など職責による手当で賃金の差別化を行うのが日本の雇用慣行となっております。(事業により一部例外もございます)
このような中で労基法を始めとした労働法においては、労使間における力関係の均衡を図るため、労働者保護を主体とした労働法体系の傾向が強いといえます。回りくどい言い方をしてしまいましたが、日本では能力不足だからといって、容易に普通解雇を行うことは認められにくくなっております。契約社員より正社員の方が企業に対するロイアリティが高い傾向にあり、経営者としてもできれば正社員雇用を主体にしたいのはやまやまだと思います。しかし雇用リスクを鑑みたとき躊躇してしまう・・・仮に問題行動や能力不足が顕著な人材を作用してしまったとき、正社員より契約社員のほうが雇用調整のハードルが(若干)低いため、正社員雇用を躊躇してしまうこともあるのではないでしょうか。
しかし企業においてマネジメントや経営を任す人材も重要であり、将来的に見たときゼネラリストとなる人材を育成することは、会社の成長にとって欠かせない課題です。仮に契約社員として雇った人材のなかに、将来的には正社員に転換してもよい人材がいるのなら、積極的に処遇改善に取り組むべきではないでしょうか?このような非正規雇用を正社員に転換するための、正規雇用転換やそれらに伴う処遇改善を行うためのルールを、会社の制度に採り入れ、実際に正規雇用転換が行われた際に受給する要件を満たすという制度が求められます。また国としてそれらを推進する目的として行われているのが、キャリアアップ助成金です。
◆キャリアアップ助成金の受給要件
対象となる事業主によりキャリアアップ計画を策定し、正規雇用転換制度について就業規則に策定した事業所が、6カ月以上雇用される非正規労働者を正規雇用転換した際、助成金受給を受けることができます。
なお、助成金受給にあたっては、一定の要件を満たす必要があります。
一つ目には、同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される労働者への転換であること。これは当たり前といえばその通りなのですが、転換後の正規雇用の定義について明確化した要件です。
二つ目には、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が転換次点で適用される者に限ります。これは正社員の制度として賞与または退職金どちらかの制度があり、それら要件を満たした上でなおかつ、転換時に所定給与の昇給があることが条件となります。賞与と退職金はいずれかを満たしていればかまわないのですが、「正社員なら原則適用される制度」であることが必要です。ご注意いただきたいのは、賞与を「支給することがある」または昇給が「行われることがある」といった表記の制度は、対象外になります。なぜかと申しますと、「行われるか否か」明確でないからです。逆に「賞与は年2回支給する(経営状況により支給されないことがある)」といった表現であれば、要件を満たすことができます(このあたりは行政により判断が異なり、また個別具体的事情により変わることもございますので、受給申請にあたってはあらかじめ行政にご確認されることをお勧めします)
その他細かい要件もございますので、取組にあたっては厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」を拝見いただければと存じます。
⇒ https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001512871.pdf